ボイラー

【ボイラー】脱気器とは何か?原理や設置上の注意点について

高圧の蒸気を発生させるボイラーを使用する場合、必ずと言っていいほど脱気器がついています。

今回は、脱気器とは何か?について解説したいと思います。

脱気器とは

脱気器はデアレーター(Dearator)とも呼ばれ、給水中に存在する酸素や二酸化炭素などの気体を除去するための装置です。

薬品を添加して脱気を行う機器も脱気器と呼びますが、大型の場合は蒸気で加熱することで脱気を行う場合が多いです。脱気を行わずにボイラーに給水を行うと、水中の溶存酸素によりボイラー本体や配管の腐食が進み、機器の寿命を著しく縮めてしまいます。

加熱用の蒸気には、発電所の場合は蒸気タービンの抽気、一般の工場ではプロセス用の低圧蒸気が使用されることが多いです。

低温の給水量が多くなるとそれを加熱するために多量の蒸気が使用されるため、いかに高温の状態で補給水を送るかがプラントの省エネを考える上で重要なテーマになります。

脱気器を設置する目的

  • 給水中の溶存酸素の除去
  • 水の貯留によるポンプの保護
【タービン】抽気タービンの出力計算方法は?

続きを見る

脱気器の原理

脱気器は次のような原理で脱気を行います。

  1. 脱気器に給水をする。
  2. 加熱用蒸気で設定圧力まで加圧する。
  3. 沸点まで加熱することで飽和水になり、気体の溶解度が0になる。

加熱を行って飽和水にすることで溶解している気体を追い出すというのがポイントです。

また、一般的に採用されているものはスプレートレー式というものが多く、発生した気体とともに排出される水蒸気を少しでも減らすように脱気器上部から給水をスプレーするような構造になっています。

大型の脱気器の場合は湯気として排出されるエネルギーが多くなるため、ベントコンデンサというシェル&チューブ型の湯気を消すための熱交換器が上部に設置されている場合もあります。

参照:省エネルギ型冷凍空調方式(5)

供給する補給水によって水位を一定にするレベル制御を行い、蒸気により内部の圧力を一定にする圧力制御を行うのが一般的です。脱気された処理水はボイラー給水ポンプによってボイラーに供給されます。

【自動制御】レベル制御とは何か、特徴や方式について解説します

続きを見る

【自動制御】圧力制御とは何か、特徴や方式について解説します

続きを見る

脱気器のポイント

脱気器を設置するうえで注意する項目があります。既に設置されている場合は、現状の運転条件がなぜそのようになっているのか考えてみましょう。

  1. 設定圧力
  2. 設置位置
  3. 容量
  4. 選定条件

設定圧力

脱気器の設定圧力を決める場合は、脱気器の二次側に設置するボイラーエコノマイザでの酸露点に注意する必要があります。

また、補給水の温度が設定圧力の飽和温度よりも高い場合は加熱用の蒸気が供給されません。加熱用の蒸気には飽和温度まで加熱することとは別に、バブリングによって攪拌を起こすという目的もあるため、ある程度補給水温度と脱気器内の温度に差(10℃~20℃程度)を設けなければ上手く脱気できません。

どの程度の温度差であれば脱気に問題がないか、脱気器メーカーと計画の段階で相談しておく必要があります。脱気器内の圧力は大体、0.1~0.3MPaG程度の圧力に設定されることが一般的で、脱気器に供給する蒸気の圧力はそれよりも高くする必要があります。脱気器に供給する蒸気は工場内の低圧蒸気やタービンからの抽気蒸気を供給するのが一般的です。

【熱機関】ランキンサイクルとは?pv、hs線図や効率を解説

続きを見る

脱気器圧力が低ければ低いほどエコノマイザでの交換熱量が増えるのでボイラー効率は上がりますが、節炭器で排ガスが酸露点温度を下回ることで腐食リスクも上がるので、燃料の組成によって下げられる圧力が決まります。

また、脱気器の圧力を低くすることで脱気器に給水するためのポンプの必要揚程を下げることが出来るので省エネにもつながります。

【ボイラー】ボイラー効率って何?100%を超えるのはなぜ?

続きを見る

設置位置

脱気器内は常に飽和水で満たされることになるため、脱気器からボイラーへ給水を行うポンプでのキャビテーションに注意する必要があります。

ボイラー給水ポンプは揚程も大きく高価なため、NPSH(Net positive suction head)に十分な余裕を見て7~10m以上の高所に設置されている場合が多いです。脱気器内は少しでも圧力が低下すれば気化してしまう飽和水になっているということを意識しましょう。

また、運転条件により脱気器のレベルが変動するとキャビテーションの発生につながるため、センサー等で常に監視し、厳重に監視することが必要です。

【ポンプ】流入水頭の計算方法。ポンプのキャビテーションを防ぐには?

続きを見る

容量

脱気器の容量はボイラーの蒸発量との兼ね合いを見て、どの程度のバッファーを持たせるかという観点で決めます。

一定負荷のボイラーであればそこまで問題になりませんが、負荷変動の大きい設備が多い場合は余裕をどれだけ見るかが重要なポイントになります。

万が一、脱気器内が空になると、給水ポンプのNPSHが足りなくなることでキャビテーションが発生したり、脱気器内の水位が大きく変動することで制御が暴れる要因になります。

コスト面も考えて大きすぎず小さすぎない適切な容量にしてやる必要があります。

選定条件

脱気器の負荷はボイラーの蒸発量によって決まるため、ボイラー側の負荷変動が大きい場合は、脱気器も複数パターンの条件ですべてを満たすものを選定する必要があります。

補給水の温度や量に変動がある場合は、加熱用蒸気量の最大と最小を考慮し、複数パターンで条件を提示します。

ワンポイントで設計を行い、負荷変動があったときに対応できないということがないように注意しましょう。

まとめ

  • 脱気器は給水内の気体を除去するための装置。
  • 内部を飽和水にすることで気体の溶解度をゼロにする。
  • 設定圧力、設置位置、容量などに注意が必要。

大規模な工場や発電所などで良く見る脱気器ですが、エネルギー消費も多く、周囲の機器も非常に高価な場合が多いことから設置の際には気を使わなければいけない機器の一つです。

是非、現状の運転がなぜそのようになっているのか考えてみてはいかがでしょうか?

ボイラー

2023/12/31

【ボイラー】主灰と飛灰の違いとは?

ボイラーや焼却炉などで投入物が燃えた後に出てくる灰は、大きく分けて主灰(しゅばい)と飛灰(ひばい)があります。 この記事では主灰と飛灰の違いについて解説します。 主灰と飛灰の違い 主灰:焼却炉の炉底に落下した灰でボトムアッシュ(bottom ash)とも呼ばれる。 飛灰:風に飛ばされて集塵機などで採取される灰でフライアッシュ(fly ash)とも呼ばれる。 主灰と飛灰の違いを図で表すと次のようになります。 ごみ焼却施設のボイラーを例にとると、主灰はゴミが燃え切った後に最後に底から出てくる灰で、ごみ中に含ま ...

ReadMore

ボイラー

2023/12/24

【ボイラー】空気予熱器とは。目的や方式について解説

ボイラー効率を向上させる機器の一つに空気予熱器があります。 今回は空気予熱器とは何かについて解説したいと思います。こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらも合わせてご覧ください。 空気予熱器とは 空気予熱器はボイラーに送る燃焼用の空気を加熱する熱交換器のことを言います。 似たような役割をする機器にエコノマイザがありますが、エコノマイザはボイラー給水と排ガスを熱交換させるのに対して、空気予熱器は燃焼用の空気との熱交換を行います。 熱源はエコノマイザと同様に排ガスの事もあれば、プ ...

ReadMore

ボイラー

2022/9/2

【ボイラー】連続ブローはなぜ必要?缶底ブローとは何が違う?

ボイラーの運転動作の一つに連続ブローというものがあります。普段、ボイラーを扱う方にとっては当たり前のことですが、初めて見た方は何のために連続ブローを行っているのか分からないこともあるかと思います。 今回は、ボイラーの連続ブローとは何か、また缶底ブローとの違いについて解説したいと思います。 連続ブローとは 連続ブローとは、ボイラー缶水で不純物が濃縮するのを防止するために缶水の一部を連続的に外部に排出することを言います。一般的には電磁弁や電動弁などの自動弁を一定周期ごとに開閉させることでブロー量を制御していま ...

ReadMore

ボイラー

2022/9/3

【ボイラー】脱気器とは何か?原理や設置上の注意点について

高圧の蒸気を発生させるボイラーを使用する場合、必ずと言っていいほど脱気器がついています。 今回は、脱気器とは何か?について解説したいと思います。 脱気器とは 脱気器はデアレーター(Dearator)とも呼ばれ、給水中に存在する酸素や二酸化炭素などの気体を除去するための装置です。 薬品を添加して脱気を行う機器も脱気器と呼びますが、大型の場合は蒸気で加熱することで脱気を行う場合が多いです。脱気を行わずにボイラーに給水を行うと、水中の溶存酸素によりボイラー本体や配管の腐食が進み、機器の寿命を著しく縮めてしまいま ...

ReadMore

ボイラー

2022/9/3

【ボイラー】スートブロワって何?その役割は?

ボイラーの運転ではしばしば、スートブロワによって灰を除去する煤吹き作業を行います。スートブロワが上手く作動しないとボイラーの水管や過熱管の寿命に大きな悪影響を与えます。 今回はスートブロワとは何なのか、スートブロワの目的や注意点について解説したいと思います。 スートブロワとは? スートブロワは煤吹きというボイラーに定期的に行うメンテナンスを行う装置です。 ボイラーの蒸発管や過熱器、エコノマイザー(節炭器)などの燃料や排ガスを使う熱交換器では伝熱面に煤や塵が付着します。通常はこれらを定期的に蒸気や圧縮空気を ...

ReadMore







  • この記事を書いた人

エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-ボイラー

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5