ポンプ

【ポンプ】軸動力を計算する方法は?

ポンプを選定するときに、どのぐらいの大きさのモーターが必要になるのか計算で求めたいことってありますよね。今回はポンプの流量や差圧から軸動力を求める方法について解説したいと思います。

ポンプの軸動力を計算する方法

ポンプの軸動力は次の手順で求めることが出来ます。

  1. ポンプの流量を求める
  2. ポンプの必要差圧を求める
  3. 流量と差圧をかける
  4. ポンプ効率で割る

実際に例を交えて解説します。

ポンプの流量を求める

まず、ポンプの必要流量を求めます。

特に計算式があるわけではなく、使用先でどれだけの流量が必要かをリストにして足し合せます。季節変動や瞬時流量の変動などを考慮して十分に余裕を持った流量にします。

また、軸動力を求める場合は1秒当たりの流量「m3/s(リューベーパーセック)」が必要になるので、時間の単位に注意しましょう。

ポンプの必要差圧を求める

次に、ポンプの必要差圧を求めます。

必要差圧を求めるには吸込、吐出の揚程、配管や機器の圧損を計算しながら決めていきます。例えば、次のような条件の場合の差圧を求めてみます。

この場合、吸込側の圧力は水頭5m(=48.9kPa)から圧力損失5kPaを引いた値43.9kPa、吐出側の圧力は吐出側の水頭10m(=97.9kPa)圧力損失5kPaを足した102.9kPaになります。

これにより、ポンプで必要な最低差圧は59kPaと分かります。実際にはこれ以上の差圧が必要になるので、この値に安全率をかけた値を採用します。

ちなみに水頭から圧力に変換は次の式で行います。

$$圧力[Pa]=高さ[m]×密度[kg/m3]×重力加速度9.806[m/s2]$$

流量と差圧をかける

次の流量と差圧をかけることで仕事量の[W](ワット)が出てきます。これによって出てくる値を水動力と言います。

$$水動力[W]=流量[m3/s]×差圧[Pa]$$

先程の条件で100m3/hの水を流そうと思うと次の式により1652[W]という数字が出てきます。

$$0.028[m3/s]×59000[Pa]=1652[W]$$

 

流量と差圧をかけて仕事量に変わるというイメージが付きにくいという方は、単位を見ながら実際に掛けていけば変換できる理由が分かるかと思います。

$$[Pa]=\frac{N}{m^2}=\frac{kg・m}{s^2}・\frac{1}{m^2}$$

$$[W]=\frac{J}{s}=\frac{N・m}{s}=\frac{kg・m}{m^2}・\frac{m}{s}$$

ポイントは圧力1Pa(パスカル)は1m2あたりに1Nの力がかかったときの値を表しているということですね。

また、ポンプではなく通風機の場合も同じように求めることが出来ます。

ポンプ効率で割る

最後にポンプ効率で割ると、ポンプに必要な軸動力を計算することが出来ます。

ポンプ効率は性能曲線にポンプごとの固有の値で、流量によって変動するため固定値ではありません。似た大きさのポンプカタログなどから概算の値を取ります。

先程の条件でポンプ効率を70%(=0.7)と仮定するとポンプの軸動力は2360[W]=2.36[kW]ということが分かります。

$$1652÷0.7=2360$$

【ポンプ】性能曲線、HQ曲線って何?どうやって見るの?

続きを見る

まとめ

ポンプの軸動力を求める方法は

  1. ポンプの流量を求める
  2. ポンプの必要差圧を求める
  3. 流量と差圧をかける
  4. ポンプ効率で割る

ポンプに限らず通風機でも使える方法なので、是非活用してみてください。

ポンプ

2022/4/10

【ポンプ】NPSHとは何か。考え方、計算方法について解説します

ポンプを選定する際に重要な指標としてNPSHがあります。 NPSHの考え方を間違えて、ワンポイントでポンプを選定すると非定常な運転時に異常が発生しポンプが故障するなどの事故につながります。この記事ではポンプのNPSHについて、考え方や計算方法を解説します。 NPSHとは NPSHはNet Positive Suction Headの略でポンプを選定する際に、どの程度の流入水頭を確保できるかを示す指標で単位はm(メートル)で表されます。 NPSHにはNPSH available(有効吸込ヘッド)とNPSH ...

ReadMore

ポンプ

2022/4/10

【ポンプ】ポンプの台数制御とは、仕組み、メリット、デメリットについて解説

液体の輸送に必要な機器であるポンプは工場の稼働状況や時間帯によっても、必要な液量が変わる現場が多いです。 そんな場合はポンプの台数制御を行うという考え方があります。 この記事ではポンプの台数制御とは何か、そのメリットやデメリットについて解説します。 ポンプの台数制御とは ポンプは24時間稼働させることが多く、流体を吐出するには大きなエネルギーが必要です。一方、使用先の必要量(ここでは負荷と呼びます)はいつも最大とは限りません。 そこで無駄なエネルギーを削減するための方法の一つとして「複数台のポンプを設置し ...

ReadMore

ポンプ

2021/11/14

【ポンプ】軸動力を計算する方法は?

ポンプを選定するときに、どのぐらいの大きさのモーターが必要になるのか計算で求めたいことってありますよね。今回はポンプの流量や差圧から軸動力を求める方法について解説したいと思います。 ポンプの軸動力を計算する方法 ポンプの軸動力は次の手順で求めることが出来ます。 ポンプの流量を求める ポンプの必要差圧を求める 流量と差圧をかける ポンプ効率で割る 実際に例を交えて解説します。 ポンプの流量を求める まず、ポンプの必要流量を求めます。 特に計算式があるわけではなく、使用先でどれだけの流量が必要かをリストにして ...

ReadMore

ポンプ

2022/3/3

【ポンプ】真空ポンプの原理とは?タイプ別に紹介!

以前の記事で、真空ポンプの種類について解説しましたが、「どうやったら真空が生み出されるのか」という原理的な面での解説が足りていなかったように思います。 今回は、真空ポンプの種類別に、真空状態を作り出す原理を詳しく解説していきたいと思います。 真空のはじまり 真空ポンプ、ではありませんが、真空の作り方として最も初期の活用例をご紹介します。 産業分野で最も初期の蒸気機関として知られる、ニューコメン機関をご存知でしょうか? トーマス・ニューコメンは産業革命の中心的存在であった、ジェームス・ワットよりも前に蒸気機 ...

ReadMore

ポンプ

2021/8/30

【ポンプ】粘度とポンプの関係、使い分けは?

数多くあるポンプの型式ですが、液体の粘度によって向き不向きがあることはご存知ですか? 今回は、高粘度の液体を輸送するためのポンプについて解説します。 粘度とは 粘度とは、流体のねばりの度合いを数値化したもので、µ(ミュー)が記号として用いられます。 単位はPa・s(パスカル秒)が一般的に用いられます。µは、液体の中で板が動くときに、板の移動方向とは逆方向に働く力である剪断応力(物体の断面に発生する力)を測定したときの比例定数です。 粘度に対し、流体の動きにくさを表したものを動粘度と呼びます。配管の圧力損失 ...

ReadMore







  • この記事を書いた人

エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-ポンプ

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5