業務

【業務】購買仕様書とは何か?目的や書く時の注意点について

プラントを設計する際に重要な書類の1つに購買仕様書があります。

非常に重要で、当たり前のように日々企業間でやり取りがされている書類ですが、初めて見るという人にとっては何を表す書類なのか分からないということもあるのではないでしょうか?

今回は購買仕様書を受け取った側、書く側それぞれの方に向けて購買仕様書とは何かについて解説したいと思います。

購買仕様書とは

購買仕様書は購入する機器の仕様が細かく記載されている書類の事です(購入仕様書という場合もあります)。

機器によって記載される内容は変わりますが、温度、圧力、流量などの基本的な条件から規格、材質、所掌範囲、使用環境、塗装、保温の方法、予備品の数、製作時に注意すべき特記事項などが細かく記載されています。

業界によって多少変わるかもしれませんが、主に設計部門が作成し、調達部門がメーカーに送付します。購買仕様書を受け取ったメーカーは購買仕様書に記載された仕様を満足させる機器を設計し、見積を提出するという流れになります。

各機器に共通事項を記載したものと機器個別のものが発行されるので、全部合わせると1冊の本ほど分厚くなる場合もあります。

購買仕様書に記載してある内容で対応が出来ないという場合は、メーカーが該当箇所を列挙してリスト化し、デビエーションリストとして提出します。

【業務】デビエーションリストって何?作成する目的は?

続きを見る

購買仕様書の目的

購買仕様書の主な目的は次のようになります。

相見積を取る

一般的な機器の場合、調達部門は見積の依頼を1社ではなく複数社に行い相見積りを取ります。

この時、購買仕様書があれば原則どのメーカーも同じ条件で見積ることが出来るので価格を比べることが出来ます。

実際に決定する際には価格だけではなく、過去の実績やトラブル発生時のアフターフォロー体制なども加味されますが、まず第一弾の価格を知るという意味で購買仕様書は重要な役割があります。

仕様を統一する

プラントを設計する場合は、多くの機器を組み合わせて一つの設備を作るのでメーカーごとに仕様が変わるとプラントとして設計思想がバラバラになります。

機器ごとに塗装方法が違ったり、潤滑油が違うと互換性がなく、引き渡し後のメンテナンス性が悪化します。購買仕様書で全ての機器に同じ仕様を反映させることでプラントの設計思想を統一させることが出来ます。

過去のトラブルを盛り込む

購買仕様書に過去のトラブルの対策を盛り込むことで、トラブルの再発を防止することが出来ます。設計初期の段階から考慮しておくことで防止できるトラブルは非常に多いです。

機器の詳細設計はメーカーに依頼しますが、実運用におけるノウハウは設計会社にあるので、設計側が購買仕様書に反映させます。

初期段階であれば特に追加コストが発生することも少ないので、トラブル防止の費用を最小限に抑えることが出来ます。

所掌を明確にする

購買仕様書には所掌範囲が明記されているので、共通認識として購買仕様書があれば、この機器はどちらの手配かという所掌問題を回避することが出来ます。

担当者の打合せのみで所掌を決めると、トラブルの際に正しい情報が分からなくなります。購買仕様書があれば、所掌を明確にできるので後々のトラブルを防止することが出来ます。

認識違いを防ぐ

メーカーと発注側で、標準仕様などの認識違いを防ぐためにも購買仕様書は役立ちます。

例えば、一方が付属品だと思っていても相手側がオプションだと認識していれば、手配漏れにつながります。このような認識違いを防止するのも購買仕様書の目的です。

必要な部品を購買仕様書に記載し、メーカーより提出される見積仕様書や納入仕様書で漏れがないか確認を行うことで、お互いの認識違いを防止します。

【業務】納入仕様書、納入品図とは何か?目的や注意点について

続きを見る

購買仕様書を受け取った時の注意点【受注側】

受注側が購買仕様書を受け取った場合は、記載されている内容に準拠して見積仕様書を作成し、提出する必要があります。その際に注意すべき点は次の3つです。

自社の製品に該当するのはどこか

まず、購買仕様書には自社の製品に関係のない項目も多く記載されているのでどの項目が自社の製品に該当するのかを検討する必要があります。

担当者だけではどれが該当項目なのか分からないこともあるので他部署とも調整しながら進めていくことになります。特に検査内容などは工場の生産部署しかわからないので検査手順等も含め確認が必要です。

記載内容は対応可能か

自社製品の該当項目が分かれば、それが対応可能かどうかを検討します。

また、対応可能な場合は費用が掛かるかどうかを確認し、通常より費用が上がっても実施すべきかどうかを問い合わせる必要があります。

購買仕様書に記載してある内容の多くがメーカー側にとって対応不可であることも発注側は認識しているので、費用を上げてまで全てを記載通りにする必要はありません。

対応不可の理由をリスト化し、発注側と擦り合わせる

対応不可の場合は、なぜ対応不可なのか、代替案は何かを示したリストを作成しデビエーションリストとして提出します。

発注側はデビエーションリストに対し、その内容で問題ないのか、費用を追加してでも対応が必要かを検討します。デビエーションリストは機器の規模が大きければ数十項目になるので、リストを作るだけでも中々大変です。

ただ後々「購買仕様書に記載されていたのに対応していなかった」と発注側に言われないように、漏れがないよう注意する必要があります。

【業務】デビエーションリストって何?作成する目的は?

続きを見る

購買仕様書を書く時の注意点【発注側】

発注側が購買仕様書を書く際には次のような点を注意する必要があります。

数値、取合など間違いはないか

まず、当たり前ですが記載する数値に間違いがあると全ての設計の前提が変わるので後で大ごとになります。

細かい数値条件は変更できますが、機器の台数など根底が覆るような記載ミスは絶対にないように注意して記載しましょう。特に全ての機器に共通して付ける仕様書に記載ミスがあると修正が大変なので内容を何度も確認しましょう。

過去のトラブルを踏襲できているか

購買仕様書は会社でフォーマットが用意されている場合が多いですが、トラブル情報は日々更新されているので、最新のトラブルも反映できているか注意しましょう。

フォーマット通りに書いたから問題ないというわけではなく、他部署への確認等が必要です。これを怠ると後々大幅な改訂が必要になるので、最初に時間をかけてじっくりと作る必要があります。

客先の要望を盛込めているか

購買仕様書はメーカーが設計する際の教科書になるので、客先の要望で受けると決めた項目は全て盛り込む必要があります。

客先要望が盛り込めておらず、後で追加費用になることのないように注意が必要です。客先要望を一覧にしたリストを作成し、購買仕様書に反映できているかチェックするようにしましょう。

まとめ

  • 購買仕様書は機器の仕様が記載された書類。
  • 相見積り、仕様の統一、所掌の明確化など様々な目的がある。
  • 書く際、受け取った際には後々トラブルにならないように注意しながら対応する。

プラントの仕事は業界用語が多く、最初は困惑することも多いかと思いますが、まず慣れることが重要なので1つ1つしっかりと抑えていきましょう。

【業界研究】プラント業界とは?詳しく徹底解説します

続きを見る

業務

2023/12/31

【業務】計画図と製作図の違い、使い分けは?

プラント設計の際に作成する図面には大きく分けて計画図と製作図があります。どちらも設計者にとっては重要な図面ですが、それぞれに目的が違います。 この記事では、プラント設計における計画図と製作図の違いについて解説します。 計画図とは 計画図とは、設計の初期段階で作成する図面で全体の構想や概要を伝えるために作成する図面です。 例えば、配置計画図の場合、図面には次のような情報が記載されます。 主要な機器の中心の配置基準点からの距離 機器の脚位置 各機器のメンテナンススペース(機器の抜きし代等) 主要配管の取り回し ...

ReadMore

業務

2023/12/31

【業務】製缶品とは何か、プラントの中での役割は?

プラントを構成する重要な構造体の1つに製缶品があります。 この記事では製缶品とは何か、役割や手配の手順について解説します。 製缶品とは 製缶品とは、鉄やステンレスなどの金属を加工することで作られた容器や架台などの事を言います。 プラントは主に建築業者が作る建屋や空調設備、メーカーが作る機械、それらを繋ぐ配管や電線によって構成されますが、これらでカバーできない架台や簡易なタンクなどは特注仕様の製缶品によって補われます。 例えば、コンベヤなどの機器を据え付ける場合、コンベヤと最低限のメンテナンス歩廊はメーカー ...

ReadMore

業務

2023/12/31

【業務】配管系統図とは何か、その役割は?

プラントの設計が作成する図面の1つに配管系統図があります。 配管系統図と一言で言ってもプラントオーナーとプラントエンジでは役割が違いますが、今回はプラントエンジからみた配管系統図の役割について解説します。 配管系統図とは 配管系統図は機器やバルブの接続方法や位置関係が分かる図面でP&ID(Piping & Instrument Diagram)とも呼ばれます。 配管系統図には主に次のような情報が盛り込まれています。 配管材質、サイズ、厚み 保温の種類、厚み バルブや継ぎ手の種類 取合の形状 設置場所(屋内 ...

ReadMore

業務

2023/12/31

【業務】納入仕様書、納入品図とは何か?目的や注意点について

購買仕様書を作成して機器を発注した後、メーカーより提出される重要書類の1つとして納入仕様書があります。 この記事では、納入仕様書とは何かについて解説します。 納入仕様書とは 納入仕様書とは発注契約後に受注側から提出される、実際に納入される機器の仕様や図面をまとめた資料です。 購買仕様書の発行から機器製作開始までの全体の流れを図に表すと次のようになります。 プラントの設計者は、計算により必要な性能を満たすための機器仕様を記載した購買仕様書を発行、それに対しメーカーは自社の設計基準により選定した見積仕様書を提 ...

ReadMore

業務

2024/4/15

【業務】見積仕様書とは何か?目的や注意点について

メーカーに機器の選定を依頼した後、提出される書類の1つとして見積仕様書があります。 この記事では、見積仕様書とは何かについて解説します。 見積仕様書とは 見積仕様書とはプラントメーカーの発行する購買仕様書に対して、メーカー側が選定した機器の仕様を表す資料です。主に金額の書かれた見積書と合わせて提出されるのが一般的です。 購買仕様書の発行から機器製作開始までの全体の流れを図に表すと次のようになります。 プラントメーカーの設計がプラントの要求性能を満たすために必要な機器の仕様を購買仕様書に記載して、メーカーは ...

ReadMore







  • この記事を書いた人

エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-業務

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5