製造業の世界では、「インバータ制御で省エネ」なんて言葉をよく聞くのではないでしょうか。ところが電気分野が専門の方以外は、省エネどころか「インバータって何?」と思われる方も多いと思います。
今回は実際の導入検討も考慮してインバーターとは何か?について解説したいと思います。
動画でも解説しているので、動画のほうがいいという方はこちらもどうぞ。
インバータとは
インバータとは、元の交流と異なる周波数の交流電気を発生させる装置のことを指します。語源のinvertは、逆さにする・反転させるといった意味の英語です。
昔は直流モーターが主流でしたが、摩耗部が多いという点から、交流モーターでも速度制御が行える技術が開発されました。
1950年代後半にインバータによる回転機速度制御の開発が始まったとされています。インバータ装置の中身はコンバータ、コンデンサ、インバータの3つに分けられます。
コンバータは整流器とも呼ばれ、交流を直流にする機能を持ちます。
コンデンサは蓄電の役割を持つ部品ですが、このケースでは周波数を整える(ノイズ対策)として用いられます。交流電流がコンデンサを流れる場合、放電と充電を交互に繰り返し、なだらかな波形にする効果があります。
最後にインバータによって電圧や周波数を変更させた交流を発生させます。
つまり、インバータを用いることで、使いたい交流の周波数・電圧を自在に調整できるということです。
ところで、回転機の速度を変化させるには原理的に3つの方法が考えられます。
周波数f、磁極数p、滑りsのどれかを変化させることで、回転速度を変化させることができます。
$$N=\frac{120f}{p}(1-s)$$
N:回転速度min^(-1)、p:磁極数、f:周波数Hz、s:滑り
インバータ制御はこの中でも周波数fを変化させることで回転速度を変えます。
インバータ制御には主に、トルクを一定にさせるために電圧Vと周波数fの関係を一定に維持するV/f型と、電圧と電流値からモーター特性を考慮した周波数を演算するベクトル制御があります。
2種類あるというのを頭の中に入れておいてください。
インバータ制御のメリット・デメリット
上記のように製造現場の回転機に多く導入されていますが、それだけではありません。
例えば、家電においては冷蔵庫やエアコンに省エネ目的で入れられていますし、IH調理器などでは過熱用に高周波数の電気を作り出すために用いられています。
パソコンにおけるインバータといえば、画面のバックライト用に電圧を上げたり、バックアップ用の電源装置として用いられたりしています。
インバータのメリット
生産現場においてインバータ導入を検討するのは、ほとんどが省エネが理由ではないでしょうか。
インバータは回転機が必要以上に速度を出さなくていいように、周波数を変更してトルクを抑えます。水量や流量を、バルブやダンパで絞るのと比べると、回転機側の消費電力を抑えることができるので、省エネになるというわけです。
工場において消費電力の大半が回転機とされていますので、インバータ導入を検討することは大きな少エネにつながります。
導入時には、電気機器のシステム設計から工事までできる電気事業者に依頼するのが良いかと思います。
お近くに総合的に取り組まれる業者がいない場合には、正確な省エネメリットの算出ができる技術コンサルタントに依頼(もしくは自前で)し、工事は電気事業者に発注することになります。
以下のリンクにWeb計算ソフトがあります、まずはソフトを活用しておおよその金額をつかんでみましょう。
参照:インバータによる省エネ効果の簡易計算(東芝シュネデール・インバータ株式会社)
インバータのデメリット
省エネのメリットが大きなインバータですが、以下のようなデメリットが挙げられます。
- 費用が高額になる。本体代が数万円、複雑な回路の電気工事費もかかるため、メリットに見合うか検討が必要。
- コンデンサがあっても多少のノイズが発生する。コンデンサには寿命があり交換が必要である。
これらのデメリットを考慮した上で、導入を検討してみてください。
まとめ
- インバータは交流の周波数を変える装置である。
- 周波数を変えることで必要以上の電力消費を抑え、省エネにつなげられる。
インバータの原理とメリット・デメリットについて、理解の助けになると嬉しいです。
導入検討時には何年で投資回収できるか、維持費も考慮して検討してください。