国家資格の1つであるエネルギー管理士は、省エネ意欲の高まりから今後も需要が伸びていくと考えられます。
この記事では、エネルギー管理士とは何か?取得方法や難易度などについて詳しく解説したいと思います。
※ こちらの記事は動画でも解説しています。
エネルギー管理士とは?
エネルギー管理士は経済産業省が管轄している「エネルギー使用の合理化等に関する法律(=省エネ法)」で規定されている国家資格です。
1997年から開始されており、一般財団法人の省エネルギーセンターにより運用されています。
省エネ法では1年で一定量以上のエネルギーを使用する事業所に対し、エネルギー管理士資格の保有者を配置することが義務付けられています。資格取得者は主に、工場やビルのエネルギー使用の合理化に関する業務を行います。
以前は、熱と電気が別々の資格になっていましたが、現在は両方合わせて「エネルギー管理士」として統合されています。試験を受ける際は、熱か電気のどちらで受けるか選択する事が出来ます。
エネルギー管理士の取得方法
「エネルギー管理士」の資格を取得するには主に2通りの方法があります。
- エネルギー管理士試験を受けて合格する。
- エネルギー管理研修を受けて試験に合格する。
当サイトでは主にエネルギー管理士試験を受ける方向けに記事を作成しています。
実際にはエネルギー管理士試験を受ける方が大半ではないでしょうか。
エネルギー管理士試験を受ける
毎年、8月1週目の日曜日に全国各地で実施されるエネルギー管理士試験を受けて合格すれば資格を取得できます。
試験はマークシート方式で4課目に分かれており各科目で60%以上の正答率があれば合格となります。また、合格した科目は2年間試験免除となる課目合格制度が導入されています。
2年以上たつと合格が取り消されるため、試験に合格するためには3年以内に全ての課目を取得する必要があります。試験料は科目数に関わらず17,000円(非課税)です。
但し、旧制度の熱管理士または電気管理士を取得していて、科目Ⅰだけを受験する場合は10,000円(非課税)になります。(2018年8月現在)
平成30年の試験は、北海道、宮城、東京、愛知、富山、大阪、広島、香川、福岡、沖縄で実施されています。会場は申し込み人数によって毎年変わり、アクセス方法などの詳細は受験票に記載してあります。
- 受験願書またはインターネットで申し込む(願書:5/8~6/12インターネット:5/8~6/11)
- 受験料を振り込む(6/12まで)
- 受験票が届く(試験日の約1ヵ月前)
- 試験を受ける(8月の第1日曜日)
- 合否通知書の到着(9月中旬)
エネルギー管理研修を受ける
エネルギー管理研修は3年以上のエネルギー管理に関する実務経験を持つ人を対象にした国家資格の認定制度です。講義と修了試験によって取得する方法です。
試験と同様に熱か電気かを選択し、講義後の修了試験に合格すればエネルギー管理士の資格を取得できます。毎年12月の中旬に7日間実施されます。
ちなみに平成29年度の会場は、宮城、東京、愛知、大阪、広島、福岡となっています。
こちらも科目別合格制度が導入されており、新規講習料は70000円(非課税)、課目指定の講習料は50000円(非課税)です。但し、エネルギー管理士試験とは違い試験免除が適用されるのは翌年限りです。
- 研修の仮申込書と必要書類の送付(9/20~10/17)
- 研修受講資格審査(10月中旬)
- 受講票、テキストなどの受領(11月上旬)
- エネルギー管理研修の実施(12月中旬)
- 研修修了者に合格通知を送付(2月中旬)
3. エネルギー管理士の課目
エネルギー管理士の課目は次のようになっています。
必須基礎科目
- I. エネルギー総合管理及び法規
熱分野選択科目
- II. 熱と流体の流れの基礎(熱力学の基礎、流体工学の基礎、伝熱工学の基礎)
- III. 燃料と燃焼(燃料及び燃焼管理、燃焼計算)
- IV. 熱利用設備及びその管理(計測及び制御、熱利用設備)
電気分野選択科目
- II. 電気の基礎(電気及び電子理論、自動制御及び情報処理、電気計測)
- III. 電気設備及び機器(工場配電、電気機器)
- IV. 電力応用(電動力応用、電気加熱、電気化学、照明、空気調和)
試験は朝の9時から始まり、すべて受けると終了は17時40分となかなかの長丁場になります。時間割は次の通りです。(2018年から時間割が変わっています。)
一度合格した科目は翌年から受験できなくなるため、試験と試験の間がかなり空くことになります。
エネルギー管理士試験の難易度
試験の難易度として資格が一本化されてからの間近4年の合格率を見てみます。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2013(平成25年) | 11,102 | 3,094 | 27.9% |
2014(平成26年) | 10,613 | 2,280 | 21.5% |
2015(平成27年) | 10,537 | 2,454 | 23.3% |
2016(平成28年) | 10,468 | 2,108 | 20.1% |
2017(平成29年) | 10,558 | 3,002 | 28.4% |
合格率としては20~30%強程度なので、試験難易度としては中程度ではないでしょうか。
よく比較される電験3種の合格率は25%程度なので電気に関してはそれと同程度、熱に関してはボイラー技士試験と同程度ではないかと言われます。
事前に持っている基礎知識にもよりますが、調べてみると、大体3~6ヵ月前から勉強を始める方が多いみたいです。
熱と電気はどっちが有利?
これからどちらの勉強を始めようか迷っている方のために、熱分野と電気分野はどちらが難しいかを比較してみます。
熱と電気が一本化される前の16年間(1997年~2012年)のそれぞれの合格率を比較してみます。
年によってばらつきはありますが、全体としては電気が23.4%、熱が31.2%となりました。このような結果から一般的に熱のほうが合格しやすいと言われることが多いです。ただ、普段の仕事内容や事前知識によって一概にどちらが有利とも言えません。
熱分野でも電気分野でもkWやkJなどの熱量に関する考え方は共通しているので、どちらでもエネルギーに関する基本的な素養は備えている必要があります。
ある程度の規模の工場やプラントでは、電気担当と熱担当が分かれている場合が多く、転職を考える場合はどちらの経験があるかで配属される部署が変わるというイメージです。
エネルギー管理士試験の勉強方法
エネルギー管理士試験の勉強を始める際には次のステップで勉強することをお勧めします。
- 簡易な参考書を一通り読む
- 過去問を解き、傾向をつかむ
- 詳しい参考書で補填する
まずは簡易な参考書を一通り読みます。受験者のほとんどが簡易な参考書としてオーム社の「エネルギー管理士試験徹底研究」を利用しています。私も簡易な参考書としてはこちらを利用しました。
一通り読んだ後は「エネルギー管理士模範解答集」を利用して過去問を解きます。最初は合格レベルの60%にはなかなか届きませんが、何年分かを解けば試験全体の傾向がつかめるようになります。
そして、簡易な参考書と過去問で60%程度にまで正答率を上げることが出来たら詳細な参考書「エネルギー管理士試験講座シリーズ」で仕上げにかかります。この参考書は試験を運用している省エネルギーセンターが監修しており、すべての範囲が細かく網羅されています。
過去問だけではカバーしきれない新たな設問もこちらの参考書を熟読していれば正解にたどり着くことができます。すき間時間を利用して勉強するには「エネルギー管理士熱分野出るとこだけ!」などのハンドブックもおすすめです。
熱分野、電気分野それぞれのおすすめ参考書をまとめておきます。
全て購入すると熱分野で25,056円、電気分野で25,272円になります。専門書はやはり高いですね・・・。
参考書を安くそろえたい場合はフリマアプリなどを利用するのがおすすめです。特に試験が終わってすぐは合格者が大量に出品するので安くなる傾向があります。
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エネルギー管理士の通信教育
参考書だけでは不安な方は通信教育を受けることもできます。とはいえ、エネルギー管理士の通信教育は非常に少なく次の3つしかありません。
- SAT「エネルギー管理士熱分野講座」34,800円(税抜き)
- e-DEN「エネルギー管理士(電気・熱)講座」129,600円(税込み)
- JTEX「エネルギー管理士受験講座(熱・電気分野)」35,640円(税込み)
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SAT
SATは現場・技術系資格を専門に扱う通信講座の会社です。設立は2013年なので比較的新しい会社です。
数ある国家資格の中で、技術系の国家資格は通信講座があまりいいものがないということに目をつけて事業を始めたようです。
エネルギー管理士以外にも電験など様々な現場・技術系資格の講座を展開しています。
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e-DEN「エネルギー管理士講座」
「エネルギー管理士試験徹底研究」をテキストとして解説DVD16枚がセットになっています。参考書の著者「不動弘幸」氏が講師をしています。
エネルギー管理士以外にも電験3種、電験2種、電気工事士などの通信講座も販売されています。参考書だけではわかりにくいので、講義形式で学んでいきたいという方にはお勧めです。
Youtubeにお試し動画が公開されていたので載せておきます。
JTEX「エネルギー管理士受験講座」
技術系の通信講座を専門にしているJTEXから販売されている通信講座です。エネルギー管理士以外にも約200の専門講座があり、その他の通信講座に比べ規模はトップクラスです。
6冊のテキストと6回のレポート提出で構成されており、講師への質問等も可能です。価格は35,640円で、DVDが付いていない分お手頃価格で購入することができます。
エネルギー管理士の年収
エネルギー管理士を目指す方の中には資格を取得して、別の会社に転職することを考えている人もいるかと思います。
気になるエネルギー管理士の年収ですが、転職サイトで調べてみると、年収は500~700万円程度が多いようです。職種としてはエネルギーを大量に使用する工場やビルなどの管理が多いです。
但し、省エネ法の対象業種が、製造業だけでなくホテルやコンビニなどの業務部門にも広がっており、今後も拡大していくと考えるとエネルギー管理士の需要は増えていくと思われます。
また、資格を取得することで、エネルギーに関する基本的な知識を有しているという事で転職に有利になる可能性があります。
エネルギー管理士の転職事情
エネルギー管理士の資格を持っていると転職活動の際に特定の業種で非常に有利に働きます。転職サイトや自身の経験から、主に次のような業種で有利に働きます。
- 製造業(工場、プラント)
- 建設・設備業(プラント・ゼネコン・サブコン)
- インフラ会社(電力・ガス・石油精製)
- ビル管理
- 大規模なホテル、商業施設
熱か電気かによって配属される部署は変わるかもしれませんが、エネルギー全般の知識を備えているということになり面接では有利に働きます。
また、省エネ法は今後もますます強化されていくのでエネルギー管理士の需要は増加していく可能性が高いです。
まとめ
エネルギー管理士は、エネルギー資源の少ない日本では今後も需要が増加していく国家資格だと言えます。
是非、取得を目指してみてはいかがでしょうか?