製造業に身を置いている方は「DCS」という言葉に聞き馴染みがあるのではないでしょうか。
なんとなく「パソコンみたいなものでしょう」「大きな画面で見るやつね」と思っている方のために、今回はDCSとは何のために使われているのか解説したいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
DCSとは
検索エンジンでDCSと調べると、「Distributed Control System/分散制御システム」という答えが出てきます。
コントローラーと制御対象が1対1であったり、1つのコンピューターで複数の制御系統をコントロールしたりするのではなく、複数の制御用コンピュータをネットワークでつないでいるシステムをDCSと呼びます。
ですので制御室で見かけるコンピュータや大きな画面は中央装置ではありますが、制御の主体は各々の現場にあるコンピュータというわけです。
なぜこんな形を取るのかと疑問を持たれると思いますが、パソコン上でプログラムを走らせるのと違い、ものづくりの現場では常にハードとソフトの制御が入り混じることになります。
そんな状況において、
- 製品が連続的に作られ、複数の装置が同時に動く現場で最適な制御をしたい。
- トラブルがあった時にも全システム停止ではなく柔軟に対応をしたい。
といった目的を達成するためには、全体を一度に監視しながらも、機器故障リスクが分散するDCSが用いられるというわけです。
開発の歴史の中で、DCSはマイクロソフト社のOS、Windowsを用いてソフトの書き換えが容易で、かつビジュアル的にもわかりやすいものになっていきました。
DCSのメーカーも製造現場に特化した制御ツール、管理ツールを作っています。
DCSを扱う国内の大手としては、横河電機株式会社やアズビル株式会社が挙げられます。また会社によって独自の通信プロトコル(コンピューター間の連携の方式)を取ることが多いようです。
DCSのメリット
DCSのメリットとしては以下の点が挙げられます。
視覚的にわかりやすい
DCSに限ったメリットではない(後述)のですが、装置や製品プロセスをイラストにして表示することができるため、現場が今どんな状態なのか一目でわかります。
複数の装置情報を同時に表示することも可能です。
表示したい情報も自由に決められるため、オペレータが欲しい情報を操作室から把握することができます。またトラブル時に迅速な対応をするのにも、現状把握が早い分有利と言えます。
切り替え、修正など操作が用意
操作室での操作が容易という点です。PCディスプレイとキーボード・マウスで操作できるので、新入社員でもすぐに使い方を覚えられます。
また制御プログラムの修正が必要な場合にも、工事の必要なく修正することができます。メーカーの製作したソフト上でビジュアル的にプログラムを書き換えることができます。
大規模なシステムを構築できる
より多くの装置・プロセスを使用する石油精製や製薬業界の現場においてよく用いられる所以です。
リレー制御やPLCでは対応できない(やろうとすると煩雑化する)大規模なシステムを、制御装置をネットワークでつなげることで組み上げることができます。
ちなみにリレー制御とPLCについては以前の記事にまとめています。
【制御盤】リレーシーケンスとPLCの違い、使い分けは?
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DCSのデメリット
一般的には以下のことがデメリットとして考えられます。
初期費用、メンテナンス費が高い
1点目はコストに関する点です。DCSの制御システムは一点ものの特注品であるため、新規導入する費用は、もちろんケースによりますがハードも含めて数千万円という金額になります。
また10年20年と長期間使用することになるので、機器メンテナンスが必要になりますが、汎用品でないため自社で行うことは難しく外注する必要があります。
プログラム修正が難しい場合がある
2点目はプログラム修正についてです。
ビジュアルでわかりやすいとは言え、高度で複雑なプログラムを組むことになるため、現場のプロセスを熟知し、かつDCS・プログラム修正について見識のある人材を育成する必要があります。
以上2点、デメリットと書きましたが、悪い点という意味ではなく汎用システムであるリレー制御やPLCの利便性を考慮しどちらを選ぶかということだと思います。
PLCは昔より性能が上がっており、複数制御が可能なため化学業界・食品業界などでは多く使われています。
こうした制御システムには汎用品が使われるため、突発的な故障時の対応も安心です。またビジュアルという面では、タッチパネル式のディスプレイが普及していますので、DCSでなくとも視覚的にわかりやすいものも作ることができます。
まとめ
- DCSとは複数のコンピュータを連携させる制御システムを指す
- DCSは大規模かつ高精度な制御が求められる現場で用いられる
- 中小規模の現場ではDCS導入は検討されない
様々な制御機器のタイプを知ることで、制御性やメンテナンス性の向上につながります。ぜひ参考にしてみてください。