計測機器

【温度計測】放射温度計の原理、メリットデメリットは?

 「製品の温度を測りたい」というときに温度センサーを検討しますが、「非接触なら放射温度計」となんとなく思っていませんか?

 今回はどんな時に放射温度計を選ぶと良いのか、メリットデメリットをわかりやすく解説してみたいと思います。

放射温度計とは

温度を測る計測器にはいくつか種類があり、それぞれ原理が異なることは先の記事でもご紹介しました。

【温度センサー】温度計の種類、測定原理、誤差を比較してみた

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その中でも放射温度計は物体から出る赤外線を検知します。赤外線という言葉は日常でもよく耳にしますが、目に見えない波長の電磁波の一種です。

太陽光など、何もない空間である宇宙にあっても熱を伝えることができることで知られています。(これを放射電熱と言います)

放射温度計の中でも熱型と呼ばれるものは、測定する赤外線は微弱ですが、集光レンズを通して検出素子1点に集中させることで温度を上昇させます。

温度測定部には温接点と冷接点という2種類の部品があり、温度差から生まれる電流を温度に変換します。(金属の温度差が生じると電圧が生じるというゼーベック効果を利用したものです、熱電対と同じ原理をしています。)

日常的には、耳に当てて使う体温計は放射温度計にあたります。

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放射温度計のメリット

大きな利点として、

  • すぐに測定ができる
  • 非接触で測定できる

ということが挙げられます。測定に時間がかからないので瞬時の温度をリアルタイムに取ることもできます。

また非接触で済むので、食品や衛生器具、移動・回転する機器や製品などにも利用することができます。そのため多くの業界の生産現場で品質管理のために利用されるほか、設備保全にも用いられています。

そのほかのメリットとしては、

  • 距離が遠くても測定できる
  • 高温も測定できる

という点があります。理論的にはレーザーが届けば温度が測定できます(※)。

また抵抗温度計が最高測定温度900℃、熱電対が1700℃程度なのに対し、放射温度計は3000℃まで対応できる機種があります。

(※ただし、遠いと正確さに欠く可能性があります。放射温度計には視野があり、距離が離れると視野が広がります。測定対象物よりも視野が大きくなると対象以外の周囲の温度も拾ってしまい平均温度が表示されるので注意が必要です。視野は温度計の型式によって異なるので確認してください。)

放射温度計のデメリット

上記のような特徴がある放射温度計ですが欠点としては、

  • 内部温度は測れない
  • 測定が苦手な物質がある

ということが挙げられます。

まず1点目ですが、工場などの現場には容器やタンク内に入った製品も多いかと思います。放射温度計は物体の表面温度しか測れないので、外側が何かに覆われているとその中の温度は測定することができません。

そして2点目は放射率に関わる話です。物体によってこの数値が異なるので全てに同じようには使えないという条件付きなのです。

不透明なものには色に限らすおおよそ使えますが、水・ガラスなど光を透過するもの、金属のような光沢があり反射するものは苦手です。

物理を勉強された方は完全黒体という言葉を聞いたことがあるかも知れません。全ての光を吸収し反射しない物質のことを呼ぶのですが、現実にはどんなものも少しは反射します。

完全黒体を1とした時にどれだけのエネルギーを放射するかを表したものが放射率です。

放射温度計で測定する際には測定物の放射率をあらかじめ設定する必要があります。塗料(黒)が塗ってあるところなら0.95、アスファルトなら0.90などです。この設定が正しくできないと間違った値をとることになります。

前述の水やガラスも測定できなくはないですが、放射率は形や測り方によって変わるので注意が必要です。

測定が苦手なものもありますが表面だけの問題なので、表面に黒いテープや黒いスプレーを塗布することで測定することができます。

また測定対象との間に異物(ガラスや煙、湯気など)があると、正しく測れませんので注意してください。

まとめ

  • 放射温度計のメリットは非接触で離れた場所から測定できること
  • デメリットは測定対象の表面状態に左右されること

放射温度計は学べば学ぶほど面白い機器です。より正確な温度測定が必要な方は、構造や種類などぜひ詳しく勉強してみてください。

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エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



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