ボイラーなどを見ると、燃料の供給ラインに対して、排ガスのダクトがかなり大きく設計されているのを見たことはありませんか?
今回はなぜそのような設計になるのか、燃料を燃やしたときに発生する排ガス量の計算方法について解説したいと思います。
排ガスとは
排ガスとは燃料が燃焼したときに発生する気体のことです。
主な成分は二酸化炭素CO2、水蒸気H2O、窒素N2、そして過剰に供給した酸素O2などです。計算の際に水蒸気を含めたガスを湿りガス、除いたガスを乾きガスといいます。
排ガスの量はエコノマイザでの流速や伝熱量などを計算するうえで非常に重要です。また、法律などで排出量が規定されている場合もあります。
排ガス量の計算方法
排ガス量の計算は次の手順で行います。
- 燃料の燃焼式を立てる。
- 理論空気量を計算する。
- 過剰空気量を足す。
- 温度を考慮して実際の体積を計算する。
ではひとつずつ計算していきます。
燃焼式を立てる
今回は、プロパンC3H8を燃焼させたときの排ガス量を計算します。
まずは、プロパンの燃焼式を立てます。
$$C_3H_8+5O_2=3CO_2+4H_2O$$
これにより、プロパン1molを燃焼させるのに酸素は5mol必要で、3molの二酸化炭素と4molの水が発生するということが分かります。
また、標準状態で1molの気体の体積は22.4Lなので、完全燃焼をさせるには酸素が5mol=112L必要だと分かります。
※ 標準状態は温度0℃、大気圧1013hPa、相対湿度0%という基準状態で測定した値
理論空気量を計算する
大気中の酸素濃度は21%なので、必要な空気の量は次の式で計算できます。
$$\frac{112}{0.21}=533.3[L]$$
供給した空気から反応した酸素量を引けば、排ガスとして出てくる窒素の量が計算できます。
$$533.3-112=421.3[L]$$
空気比が1で完全燃焼をしたとすると、出てくる排ガスの量は窒素、二酸化炭素、水蒸気をすべて足したものになるので、次の式で計算できます。
$$421.3+22.4×3+22.4×4=578.1[L]$$
よって、空気比1でプロパン1molを燃焼させた場合に発生する排ガスは578.1Lということになります。
ただ、実際にこのような理想的な反応が起こるわけではないので、空気比を加味して計算する必要があります。
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過剰空気量を足す
空気比が1.4の場合を考えてみます。
この場合、理論空気量に対し40%過剰に空気を供給し、過剰分は反応せずに排ガスとして排出されます。
$$578.1+533.3×0.4≒791.4[L]$$
この内、89.6Lは水蒸気なので、乾きガスと湿りガスに分けて考えると
- 乾きガス:701.8L
- 湿りガス:791.4L
ということになります。標準状態で比べても、元の燃料に対して35倍もの排ガスが発生することが分かります。
流速を考えると、燃料供給用の配管に比べて、排ガスダクトが大きくなるというのが計算結果からも良く分かりますね。
温度を考慮して体積を計算
ここで、これまで計算してきたものは標準状態での体積です。
実際には排ガスが0℃ということはないので、温度を考慮して実際の体積を計算します。
$$PV=nRT$$
P:圧力 V:体積 n:物質量mol R:ガス定数 T:絶対温度
理想気体の状態方程式から、体積と温度は比例するので、仮に排ガスが300℃だとすると、体積は次の式で計算できます。
$$791.4×\frac{273+300}{273}≒1661L$$
よって、1molのプロパンを空気比1.4で燃焼させ、排ガス温度が300℃の場合、1661Lの排ガスが発生するということになります。
まとめ
- 排ガスは窒素、酸素、二酸化炭素、窒素、水蒸気などで構成される。
- 排ガス量は燃焼式と空気比から計算できる。
- 燃料に対して排ガスの体積は何十倍も大きい。
イメージとしては当然ですが、実際に計算すると排ガス量の多さに驚きます。
実際の計算では過剰空気量のあたりで混乱しがちなので、間違えないように注意しましょう。
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