軽油や重油など燃料を扱う際に、流動点という言葉を聞いたことはありませんか?
今回は凝固点、流動点の定義や使い分けについて説明します。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
凝固点とは
凝固点とは、字の通り液体が固体化するときの温度を指します。
基本的には、固体が液体になる時の温度である融点と一致しています。水であれば約0℃ですね。凝固点は、液体の物質固有の特性に影響される化学的な数値ですが、食用油などの混合物に対しても凝固点が示されています。
例えば、オリーブオイルは0 ~ 6℃、ごま油は-3 ~ -6℃、パーム油は33 ~ 39℃、牛脂は38 ~ 44℃とされています。
流動点とは
凝固点に対して、流動点とは液体が凝固する直前の温度を指し、液体の低温時の流動性を表す指標として使われています。
JIS規格(K2269)で定められている計測方法では、液体を46℃まで加熱し、2.5℃ずつ温度を下げていきます。
下げるたびに試験管等に液体を取り出して、横に向けても液体が動かないことが確認されたら、その温度のプラス2.5℃を流動点と呼ぶことにしています。
ちなみにJIS2269は、「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」を示した規格で、原油や重油の性質計測方法が細かく記載されています。
つまり、流動点とはJISで定められた工業的な数値ということです。
凝固点や流動点を用いる理由
なぜこのような数値を用いるのでしょうか。
燃料に使用される石油製品には、組成や分子量の異なる炭化水素成分が100種類以上含まれるとされ、それ以外にも窒素化合物や硫黄化合物が含まれています。単体の物質とは違い、液体の性質を一概に捉えることが難しいです。そのため、一定の条件で計測した時の数値を物性値として使用します。
重油の場合、A重油は5℃以下、B重油は10℃以下と規定されています。また軽油の場合は、夏は5℃以下、冬は-20℃以下など使い分けがなされています(地域によって異なるようです)。
流動点は、季節と使用する燃料の種類を考慮する際に気にするほか、潤滑油の選定時にも注意が必要なポイントです。エンジンオイルなどは流動点が低い方がよく、寒冷地での使用が可能になります。
冬期や、寒冷地に移動する際は、使用する燃料や潤滑油の流動点を気温が下回らないよう、よく確認してください。
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まとめ
- 凝固点は液体が凍る温度。
- 流動点とは液体が凍る直前の温度。
- 燃料などの工業製品の性質を表すのに用いられる。
流動点は、食用油には用いないようですので、やはり工業規格のオイルのみに用いる言葉として覚えておいてください。
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