近年、人手不足や国際競争力維持のためにクラウドやAI技術などのIT技術を製造業などのレガシー産業に導入しようという流れが加速しています。
その流れを受け、製造業やプラント業界などでも様々なスタートアップ企業がクラウドやAI技術を利用した業界特化型のサービス開発を進めており、日々、まだあまり知られていない魅力的なサービスが誕生しています。
今回は、当ブログのスポンサーにもなって頂いている株式会社東京ファクトリーが運営する「Proceedクラウド」について機能や特徴、実際にデモを見た感想などを解説したいと思います。
Proceedクラウドはこんな方におすすめ
- 生産現場を視える化したい
- 技能伝承を効率的に行いたい
- 外注先の納期遅れを事前に防ぎたい
- リモートでの工程管理を行いたい
- 複数の工場での品質管理体制を構築したい
Proceedクラウドとは
Proceedクラウドは「製造現場を見える化する」をテーマに作成されたソフトウェアです。製造工程で撮影される写真をクラウド上にアップロードし、縦軸を部材、横軸を工程に分けて整理することで製造情報のデータベース構築が行えます。
主に重工業、造船業など納期の長い大型製品をセル生産方式で生産している工場での活用を前提として開発されている業界特化型のサービスです。製造情報のデータベース構築を行うことで他社工場や海外に製作外注を行う際の進捗確認や品質の担保に利用でき、同時に生産ノウハウの蓄積も行えます。
2020年からリリースされており、徐々に導入企業を増やしている今後の成長が期待できるサービスです。ProceedクラウドについてはYoutubeでも紹介動画があるので載せておきます。
製品概要を紹介するパワーポイントもインターネット上に公開されています。
Proceedクラウドの運営会社
Proceedクラウドを展開しているのは2020年に設立された「東京ファクトリー」というスタートアップ企業です。社名の由来は、東京という都市にいながら世界中の工場を管理できるというコンセプトからのようです。
会社概要を載せておきます。
会社概要
- 会社名:株式会社東京ファクトリー
- 設立年月:2020年4月
- 事業内容:製造業向け SaaS の開発・販売・運用、業務改善コンサルティング
- 代表者:池 実
- 所在地:〒113-0033 東京都文京区本郷3-40-3 SKビル202
- 資本金:111,000,000円
大手の子会社等ではなく個人で創業された会社ですが、VC(ベンチャーキャピタル)から1億円の資金調達を行うなど事業の将来性に期待されている企業です。
創業1年なので現在は正社員数名で運営をされていますが、業務委託の方含め、日々メンバーが増強されています。私も一部、参画させて頂いていますが、スタートアップ企業のスピード感は大企業で働くのとは感覚が全く違い驚いています。
Twitterの公式アカウント(@TokyoFactoryInc)やFacebookページにて展示会での出展情報なども発信されているので興味のある方は是非フォローしてみてください。
関連サイト
- 【note】2020年起業月報(1月~12月)(外部リンク)
- 【PR TIMES】製造業のDXを支援する東京ファクトリーが2月より「Proceedクラウド」の一般提供を開始、1億円をシード調達(外部リンク)
Proceedクラウドの開発経緯
東京ファクトリーを創業されたのは池実さん(@ike_minoru)です。インターネット上に公開されている池さんの経歴をまとめると次のようになります。
池さんの経歴
- 2013年:大阪大学大学院卒業
- 2013年~2017年:川崎重工業
- 2017年~2020年:BCG(ボストンコンサルティンググループ)
- 2020年4月:株式会社東京ファクトリー創業
まず、新卒で大手重工メーカーの川崎重工業に入社され、産業用ボイラーの生産技術に従事。中国の合弁会社でのボイラー製造プロジェクトなどを経て外資系コンサルティングファームのBCG(ボストンコンサルティンググループ)に転職。そこで製造業向けのDX案件に従事されて2020年に起業という経歴のようです。
Proceedクラウドを開発した経緯は川崎重工業時代に感じた日本の重工業が抱える課題からのようで、公開されているnoteの内容を簡単にまとめると次のようになります。
- 中国の合弁会社とのプロジェクトを通して日本の生産現場のレベルの高さを実感。
- コスト競争の観点から製造が海外に移管することで技術が流出してしまうことに懸念を感じた。
- 現場をベースとしたものづくり力を強みに国際競争力を維持するためには生産拠点に関わらずノウハウの蓄積が必要。
- BCG時代に様々な製造業の現状を知ったが重工業は非常にIT化が遅れている領域だと分かった。
- クラウドを利用したノウハウ蓄積ツールを重工業に持ち込むことにより海外企業への「製造委託」から「製造ノウハウの提供」へシフトできる。
- ITエンジニアの知り合いの協力のもと0から開発をスタート、起業に至る。
少しざっくりしていて分かりにくいという方は、詳しい内容がnoteにまとめられているのでそちらを読んでみてください。
確かに製造業で働いていると「もっとこうすれば効率的なのに」と思うことは多々ありますが、それを実際に行動に移し、リスクを取って資金調達や開発までを行ってしまうところが凄いと感じます。
製造業ではなくても「起業」に興味のある方にとっては読み物としてとても面白いので一度読んでみることをお勧めします。
Proceedクラウドの特徴
ここからは、実際のProceedクラウドの特徴やデモを見た感想について書いていきます。Proceedクラウドの特徴を大きく分けると次のようになります。
写真をベースにした工程管理をクラウド上で見える化
最も大きな特徴は製造工程の写真をベースにクラウド上で工程管理を行うというところです。
最初聞いたときは非常にシンプルで既にありそうだと感じたのですが、調べてみると重工業に特化したものはなく「ありそうでなかったサービス」と言えます。
これは、これまでクラウド技術が世の中に広まってなかったことや、昨今GoogleやAmazonなどのクラウドサービスが発達してきたことで、誰でもクラウド技術を利用できるようになったことも要因の一つと言えます。今後もクラウドを利用した業界特化型のサービスは増えていきそうです。
クラウドを利用することで、アカウントさえあれば社内、社外関わらず特殊なソフトのインストール等なくても誰でも利用できるようになります。
Proceedクラウドという共通のプラットフォームを利用することで次のようなメリットが得られます。
- 正確な工程の読み
- 外注工場の納期マージンを短縮
- 生産拠点による品質のバラつきを防止
技能伝承のツールに利用できる
次の特徴としては技能伝承のツールとして利用できるというところです。
重工業の製造工程では熟練の職人の方々の高度な技能に支えられているところが大きく、その技能を引き継いでいく技能伝承は各社が経営課題として上げています。
Proceedクラウドではこの点に着目し、各工程の写真に工程ごとの注意事項のコメントなどを書き込んだり、タグ付けにより整理出来るようになっています。
日頃の業務に追われる中で、なかなか教えることに時間が割けない現場も多いですが、日々製造される完成品の写真に注意事項をコメントするというひと手間を加えることで標準化やマニュアル化へのハードルが一気に下がります。これも重工業という特定の業界に特化していることで生まれた機能と言えます。
- コメント機能により技能のマニュアル化が容易
業務を効率化できる
Proceedクラウドを上手く活用できれば、様々な事務的な業務を削減することが出来ます。
実際に私も企業で働きながら社内で共通のプラットフォームがないことによる業務効率の低下は日々感じています。「欲しい情報がどこかにあるのは知っているけど、どこにあったか思い出せない。ただ、サーバーの検索機能はあまりあてにならないからファイルの置き場を誰かに聞きに行く」という出来事が結構あります。
Proceedクラウドのようなプラットフォームがあれば、そのような手間を削減でき業務効率を向上させることが出来ます。
また、報告書の自動作成機能によって報告書作成時間が削減出来たり、外注先の生産工程が見えることによって、直接現地に行って確認するための無駄な出張を削減することが出来ます。
- 写真整理・検索の時間短縮
- 黒板撮影、報告書作成時間の短縮
- 出張の削減
Proceedクラウドのデモを見た感想
先日、社長の池さん(@ike_minoru)よりWeb面談で商品の紹介プレゼンとデモを見せて頂きました。一通りのデモを見て私が個人的に感じたことを書きたいと思います。
シンプルで分かりやすい
まず、とてもシンプルで分かりやすかったです。
私は業界的にユーザーになるのでその目線で聞いていましたが、ユーザーからするとアプリで設定された工程を選んでスマホで撮った写真を入れるだけで勝手に写真が整理されて表示されます。
以前、SalesForceを使ったことがありますが、感覚としてはそれに近く、更に重工業の工程管理という1点に絞ったソフトウェアなので使わない無駄な機能がなく非常にシンプルです。
特に製造現場ではITツールを導入しても、使いづらければ結局使ってもらえないことがあるのでシンプルというのは非常に重要な要素だと感じました。導入すれば誰でもすぐに使いこなせるようになりそうです。
生産管理以外にも役立つ
Proceedクラウド自体は生産管理部門が利用することを想定して作られていますが、設計や工事など他部門でも十分に役立つツールだと感じました。
特に普段あまり製品を見る機会の少ない中、図面を作成しないといけない設計部門からすれば、製造中の部材の写真をすぐに検索できるのはかなり貴重です。
その他にも、営業部門の納期調整の際の客先説明や工事部門の工事計画の作成など、まとまったデータベースが構築されているだけで可能性は無限大だと感じました。
導入の目的は違っていても、思いもよらないところで業務効率が格段に向上したなんてことが今後度々ありそうです。
アップデートが期待できる
これはクラウドを利用したサービス全般に言えることですが、Proceedクラウドは月額課金制で買い切りではないので、今後もユーザーの声を反映させながらアップデートされていくことが期待できます。
多くの業界を相手にしたサービスの場合は、どうしても汎用的なサービス内容になりますが、Proceedクラウドのように重工業に特化したものであればその業界特有の課題を解決することに注力できるのでユーザーにとってメリットは非常に大きいです。
今後、導入企業が増えてユーザー情報が集まればますます良いサービスになっていくことが想像できます。
関連記事
- 【Proceed Cloud Magazine】「生産工程の見える化」が解決する7つの課題とは!?(外部リンク)
Proceedクラウドの導入実績
Proceedクラウドはまだリリースされて日が浅いので今後、導入実績を作っていく段階ですが既に造船関係の複数社に導入され、改善事例として紹介されているものもあります。
実績が全くない状態から展示会やTELアポを通して実績を増やしていく過程も含めてnoteで情報発信されているので、そのものがコンテンツとして面白いですね。
今後も、実績が増えていけばこちらに追記していきたいと思います。
まとめ
- Proceedクラウドは「製造現場を見える化する」をテーマに作成されたソフトウェア
- 重工業界の工程管理、技能伝承、業務効率化などの課題を解決できる
- 今後もユーザーの声を反映したアップデートが期待できる
実際にデモを見て、自分の働いている業界でも業務効率化のツールとして使えそうだと強く感じました。製品としては完成されているので、今後、営業や広報活動などによって多くの企業に導入されることを期待しています。
東京ファクトリーではオウンドメディアの「Proceed Cloud Magazine」なども運営されているので、もし良かったら覗いてみてください。