電力

【電力】プラントの自立運転とは?メリット、デメリットを解説

発電プラントを系統の状態に関わらず、安定的に運転させるためにはプラントに自立運転機能を設ける必要があります。

この記事では、プラントの自立運転とは何か、その状態やメリット・デメリット、持たせるべき機能について解説します。

プラントの自立運転とは

プラントの自立運転とは、系統の停電時により系統から解列された場合にも運転を継続できる状態のことを言います。下のような工場の場合、赤枠で囲んだ箇所のみで運転を行う場合は「発電プラントの自立運転」青枠で囲んだ箇所のみで運転を行う場合は「工場の自立運転」という言い方をします。

一般的な発電プラントの系統を元に解説します。一般的な工場で発電設備を持ち、売電も行っているプラントでは、発電機にて発電された電力の一部をポンプや通風機など発電所内の負荷に利用し、余った分を工場母線に送電します。

工場母線では、配電盤により工場内の負荷に振り分けられ、残った電力が受変電設備を経由して系統に送電されます。この時、各母線の周波数や電圧は全て電力会社の系統に支配されます。これが一般的な電力の流れです。

次に同期投入遮断機①が開き、発電プラントが電力系統的に切り離された場合を考えます。

このような場合、発電所内が運転を続けるためには発電所内の負荷と同期発電機の負荷を釣り合わせる必要があります。発電所内の負荷は発電所の規模によって変わりますが、仮に発電機の定格発電量の10%だとすると電力の流れは次の図ようになります。

この時、発電所内の電源周波数は発電機の回転速度によって決まり、これを一定にするためにタービンは速度制御運転が行われます(極数が4で50Hzの場合は発電機が1500rpm、60Hzの場合は発電機が1800rpmとなるように制御する)。また、工場内の負荷は商用電源によって賄われます。

この状態を「発電プラントが自立運転している」と言います。

次に、同期投入遮断機①を投入し、同期投入遮断機②を開いた状態を考えます。

このような場合、先ほどと同様に工場内の周波数は同期発電機の回転速度によって決まり、工場全体の負荷と発電機の発電量が釣り合います(工場内の負荷が急変動した場合は、周波数が変動します。)

この状態を「工場が自立運転をしている」と言います。

【ポンプ】回転数を表すrpmとは?

続きを見る

【発電機】ドループ制御とアイソクロナス制御の違い、使い分け

続きを見る

プラント自立運転のメリット

プラントに自立運転機能を持たせるメリットは停電が発生して系統と解列されても運転を継続できることです。

一般的な発電プラントの場合、タービン、発電機は送電を行う前提で設計されるため、自立運転機能を持たないプラントでは系統と解列された場合に電力の送り先がなく、ボイラーやタービンを停止せざるを得ません

また、大型になればなるほど、ボイラーやタービンは一度停止させると再起動させるのに時間と手間がかかるため、運転停止期間が長くなり、機会損失につながります。

このような系統の事故による機会損失を無くせるというのがプラントに自立運転機能を持たせる最も大きなメリットです。

プラント自立運転のデメリット

一方で、プラントに自立運転機能を持たせる場合、制御が複雑になり設備のコストが上がります。

発電プラントに自立運転機能を持たせる場合、定格発電量に対してプラント内動力を賄う程度(10%程度)の低負荷で運転を行う必要があります。

この場合、発電機を回転させる動力源として蒸気を用いている場合は次のようなランキンサイクルを利用します。

自立運転を行う場合、発電機の発電量を低負荷に抑えるために蒸気タービンへ供給する蒸気量を減らす必要があります。ボイラーの応答性に問題がなければ良いですが、燃料によって緩慢な作動を行うような場合は発生蒸気のうち余剰分を大気に放出させたり、タービンをバイパスさせるなどの機器や制御が必要になります。

また、タービン自身も状況に応じて電力制御から回転速度制御に切り替えるなどの制御変更機能が必要になります。このように制御の複雑化と設備コストの増加がプラント自立運転のデメリットと言えます。

【熱機関】ランキンサイクルとは?pv、hs線図や効率を解説

続きを見る

まとめ

  • プラントの自立運転は系統から解列された場合にも運転を継続できる状態をいう
  • メリットは停電が発生して系統と解列されても運転を継続できること
  • デメリットは制御が複雑になり設備のコストが上がること

プラントの自立運転と一言で言っても、電力系統によって、どの状態で運転を継続させたいかが変わります。プラントを自立運転させたいという場合は、どの遮断機が開いた状態で運転を行うのかを考えることが重要です。

電力

2022/8/30

【電力】水力発電の出力、揚水発電の電力計算方法は?

この記事では水力発電の出力計算方法と揚水発電の電力計算方法について解説します。 水力発電の出力計算方法 水力発電の出力計算は位置エネルギー(質量m×重力加速度g×高さh)を時間sで割ったものが出力になるというのが基本的な考え方です。 有効落差を求める まず、有効落差を計算します。有効落差は実際の貯水池と放水池の液面高さで決まる総落差から摩擦などにより損失するエネルギー(損失水頭)を引いたものが有効落差となります。 $$有効落差[m]=総落差H[m]ー損失水頭h[m]$$ 実際の損失水頭は配管の形状や材質、 ...

ReadMore

電力

2022/2/28

【電力】プラントの自立運転とは?メリット、デメリットを解説

発電プラントを系統の状態に関わらず、安定的に運転させるためにはプラントに自立運転機能を設ける必要があります。 この記事では、プラントの自立運転とは何か、その状態やメリット・デメリット、持たせるべき機能について解説します。 プラントの自立運転とは プラントの自立運転とは、系統の停電時により系統から解列された場合にも運転を継続できる状態のことを言います。下のような工場の場合、赤枠で囲んだ箇所のみで運転を行う場合は「発電プラントの自立運転」、青枠で囲んだ箇所のみで運転を行う場合は「工場の自立運転」という言い方を ...

ReadMore

電力

2022/8/30

【電力】発電端効率と送電端効率の違いとは?

発電所の熱効率を表す値として発電端効率と送電端効率があります。 それぞれ言葉が似ているので勘違いすることも多いですが、どちらを表しているのかによって数字が大きく変わってきます。今回は発電端効率と送電端効率の違いについて解説したいと思います。 発電端と送電端の違いとは 発電端と送電端の違いは次のようになります。 発電端:発電機直近のこと。 送電端:発電機から所内負荷を経て送電を行う箇所のこと。 言葉では分かりにくいので図に表すと次のようになります。発電機によって発電された電力は発電所内の送電線によって運ばれ ...

ReadMore

電力

2022/8/30

【電力】太陽光発電の原理を徹底解説します

最近よく目にするようになった太陽光発電ですが、太陽電池が太陽の光から電気を取り出す原理は結構複雑です。 今回は、太陽光発電の原理について解説したいと思います。 太陽光発電とは 太陽光発電は太陽の光を半導体で出来た太陽電池モジュールに当てることにより、発電を行う方式です。 2012年より始まった固定価格買取制度(FIT制度)で電力の買取価格が一定になったことから一気に普及が広がっています。 太陽光パネルと設置するだけで電気を取り出せるので非常に簡易ですが、気候条件により発電出力が左右されるなどのデメリットも ...

ReadMore

電力

2022/8/30

【電力】フェランチ効果って何?原理と対策について

交流送電を行う際、発生する問題の1つとしてフェランチ効果があります。 エネルギー管理士や電験3種などでもよく問われる現象の1つなので、発生要因や弊害、また防止するためのための対策についてイラストを用いて詳しく解説したいと思います。 フェランチ効果とは フェランチ効果とはある特定の条件下で受電端電圧が送電端電圧よりも高くなる現象です。 フェランチ現象と呼ばれる場合もあります。直流回路ではフェランチ効果は発生しませんが、交流回路では電圧と電流に位相のずれが生じることからこのような不思議な現象が起こります。 フ ...

ReadMore







  • この記事を書いた人

エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-電力

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5