センサーから信号をもらう時や制御機器を比例的に動かす時は、ほとんどアナログ信号の4-20mAを用います。現場では「ヨンニジュウで送ればいいですか?」という言葉がよく使われて、電気分野では一般常識となっています。
しかし、電気分野に詳しくない方にとっては何が何だかわからないという事もあるかと思います。
この記事では
- 「4-20mAって何の話?」
- 「なぜ電流4-20mAの信号を使うの?」
- 「電圧1-5Vとの違いや変換方法は?」
- 「4-20mAが流れているかを測定する方法は?」
という疑問を持つ方に向けて「4-20mA」について詳しく解説していきたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
4-20mAとは?
4-20mAはアナログ信号の1種でセンサーの出力や制御信号として幅広く利用されています。制御入力としては1-5Vの電圧入力も一般的で4-20mAと同様の目的で利用されています。
以前の伝送電流信号は多くの種類がありましたが、国際電気標準会議において直流で4から20mAが広く採用されるようになりました。
測定値が0の時は4mAを出力し、測定レンジ最大の時は20mAを出力します。
例えば、0-200℃の測定範囲を持つ温度センサーを利用する場合は、次のような割り当てになります。
- 0℃:4mA
- 100℃:12mA
- 200℃:20mA
測定値が0の時でも4mAが出力されるので、本当に測定値が0なのか、断線しているだけなのかを電流値で判断することができます。
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4-20mAが多く利用される理由
4-20mAが多く利用されるのは次の3つの特徴があるからです。
4-20mAのメリット
- 断線すると0mAになるため異常が分かる。(フェイルセーフ性)
- 長距離の伝送でも減衰しにくい。
- 1-5Vの電圧入力に変換することが簡単。(250Ω抵抗を利用)
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
フェイルセーフ性
電流信号は測定値が0の場合でも4mAを出力します。断線した場合は0mAになるので、電流値を測定すれば断線しているのかどうかを検知することができます。
「4」mAという数値にしている理由は「計装機器の消費電流+α」の値で、以前は特に決まっていなかったようです。
例えば、計装機器の消費電流が3mAの場合は、そこに1mA分の下駄をはかせて信号電流として使用します。
長距離の伝送でも減衰しにくい
電流は水の流量と同じで距離が長くなっても減衰することがありません。
100L/minの水を流しているのに配管が長くなると出てくる量が減るってことはありませんよね?
電圧信号を長距離で輸送した場合、回路中の抵抗により減衰していきます。一方、4-20mAの場合は数百mという長距離の輸送でも減衰することがありません。
長距離での輸送が必要な場合は、必ず電流信号が用いられています。
1-5Vの電圧入力に変換することが出来る
長距離の輸送では4-20mAが利用されますが、複数の機器を測定する場合は1-5Vの電圧入力が利用されます。
4-20mAは抵抗250Ωをつけると1-5Vに簡単に変換することができます。4-20mAと1-5Vを組み合わせることで誤差や断線リスクの少ない方法をとる場合が多いです。
オームの法則
$$V=RI$$
V:電圧 (V)R:抵抗(Ω) I:電流(A)
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4-20mAのデメリット
では、4-20mAにはデメリットはないのでしょうか?
4-20mAには次のようなデメリットがあります。
4-20mAのデメリット
- 測定するときは配線を外さないといけない。
- ノイズの影響を受けると数値に表れる。
- ループが断線するとすべての機器が使用できなくなる。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
電圧より測定しにくい
電圧を測定する場合は、端子台の両端にテスターを当てればいいだけですが、電流を測定する場合はそれぞれの端子を外して直列回路を作らなければいけません。
導通確認をするときなど、電圧に比べると電流のほうが測定しにくいという欠点があります。
クランプメーターを利用すれば、電線を挟むだけで測定することができますが、やはり電圧のほうが測定は容易です。
ノイズの影響で測定値が変わる
アナログ信号特有の問題ですが、他の電線によってノイズの影響を受けてしまうと、ダイレクトに測定値の誤差につながってしまいます。
例えば、温度が一定になるように制御を行っていても、ノイズが発生すれば測定値がずれ、実際の温度制御に影響が出てしまいます。
高い制度の制御にアナログ信号を利用する場合はシールドケーブルなどを利用して、ノイズの影響を最小限に抑えなければいけません。
シールドケーブルって何?というかたは「【電気機器】シールドケーブルの種類と正しい接地方法について」を参照してください。
断線するとすべての機器が使用できなくなる
4-20mAの同一信号を複数の機器に渡らせる場合は直列回路にしなければいけません。
そのため、もし一か所が断線するとすべての機器に電流が伝わらなくなります。
電圧入力の場合は並列設置が可能なので、1か所が断線した場合でも他の機器は問題なく動きます。
1つの信号線で複数の機器に入力する場合は電圧入力にしたほうが断線による機器停止リスクを下げることができます。
4-20mAの使い方
4-20mAは様々なところで利用されます。
一例として次のような使い方があります。
- 温度・圧力センサーの測定値
- 流量計の測定値
- 制御弁の動作
- モーターのインバーター制御
こちらも詳しく見ていきましょう。
温度・圧力・レベルセンサーの測定値
温度、圧力、レベルセンサーもすべて4-20mAで出力することができます。
それぞれの測定レンジに合わせて4-20mAを出力するので、電流値を測定すれば調節計などの表示器がなくても測定値が分かります。
調節計などを通して、4-20mAの信号をやり取りすることで温度制御、圧力制御、レベル制御などが可能になります。
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流量計の測定値
型式にもよりますが、流量計の測定値も4-20mAで出力できることが多いです。
流量計の測定範囲で4mA-20mAに割り当てます。
流量計と制御弁を組み合わせれば、常に一定の流量になるように流量制御を行うこともできます。
制御弁の動作
エア駆動式の制御弁は4-20mAの電流を送ることでコイルが動き、エアの圧力を調整します。入力される電流値によってエアの圧力を微調整する機器をポジショナーといいます。
制御弁などは設定値に対して測定値がどれぐらい離れているか(偏差)によって開度を調整する比例的な動きをするので4-20mAの信号が有効です。
モーターのインバーター制御
ポンプなどのモーター機器は、負荷に応じて回転数を制御するインバーター制御がよく用いられます。
この場合も、ポンプの回転数を制御する信号には4-20mAが用いられることが一般的です。
負荷量に相当する信号を取得して、ポンプの必要な回転数を計算し、4-20mAの信号にのせて出力します。
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このように、4-20mAは連続した値で比例的に制御する場合に利用されます。
4-20mAの測定方法
現場で4-20mAが出ているのかどうかを確認する方法は次の2つです。
テスター
最も一般的な方法は、テスターを利用する方法です。
テスターを使う場合は、端子台から線を外してテスターと負荷が直列になるように接続します。
電圧と同じように並列で測定しようとしても、電流は流れてこないので注意が必要です。
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クランプメーター
2つ目はクランプメーターを利用する方法です。
クランプメーターは電流から発生している磁界をとらえて電流換算することができる機器です。
クランプメーターを用いれば、わざわざ結線を外さなくていいのでとても便利です。
磁界をとらえるという特性から、プラスとマイナスを両方挟むと打ち消しあって0Aを表示することになるので注意が必要です。
必ずプラスかマイナスの1本を挟むようにしましょう。
4-20mAの出力方法
4-20mAを出力して機器の動作確認を行いたい場合は電流発生器が必要です。
電流発生器は4-20mAの信号を選択して一定電流を発生させてくれます。
電流発生器を使えば、4mAで測定値が0を示すのか、20mAで最大値を示すのかを確認することができます。
また、任意の4-20mA信号を送ることで制御弁の動きやポンプの回転数などを見て、結線が間違っていないかなども確認することができます。
まとめ
記事の内容をまとめると次のようになります。
- 4-20mAはアナログ信号の一種で制御信号として幅広く利用される。
- フェイルセーフ性、長距離輸送可能、電圧変換が簡単などのメリットがある。
- 測定しにくい、ノイズの影響を受ける、断線すると複数の機器が止まるというデメリットがある。
- 各種センサー、流量計、制御弁、インバーター制御などに利用される。
- テスターやクランプメーターで測定することが出来る。
- 電流発生器で出力させることが出来る。
いかがだったでしょうか?
4-20mA信号を利用するのは、自動制御の世界では常識ですが、初心者にとってはわかりにくい項目の1つです。
基本が理解できるといろいろと応用が利くので、是非4-20mAについて理解を深めてみてください。