プラントや工場で自動化を進めていると「カスケード制御」という言葉を聞くことはないでしょうか?
フィードバック制御やフィードフォワード制御については、イメージ的に理解しやすい方も多いと思いますが、フィードバック制御を複数組み合わせるカスケード制御は理解しにくい制御方式の一つです。
今回は、カスケード制御とは何か、メリットやデメリットについて解説してみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
【自動制御】フィードバック制御とフィードフォワード制御の違い
続きを見る
カスケード制御とは?
カスケード制御は、二つの制御ループ(マスターループとスレーブループ)を階層的に組み合わせた制御です。
マスターループが主要な制御目標を設定し、スレーブループがその目標を達成するためのより細かな調整を行います。このような構成は、一つのループだけでは対応が難しい外乱やプロセスの変動に迅速に対応させたい場合に使用します。
カスケードという言葉には「段になった小さな滝」という意味があります。また、これを工業的に用いて「縦に連なる」などという意味もあります。
カスケード制御を用いれば、フィードバック制御のみの場合に比べ外乱の影響を小さくすることが出来ます。
カスケード制御のデメリット
カスケード制御を利用すれば応答性が早い高精度な制御が可能ですが、一方で以下のようなデメリットもあります。
制御が複雑になる
カスケード制御は、マスターループとスレーブループの二重の制御構造を持つため、システム全体の複雑性が増加します。
各制御ループのパラメータ設定や相互の調整のため、試行錯誤が必要です。
コストの増加
カスケード制御を行うためには、複数の制御ループに対応するためのセンサーや調節計などが必要です。
DCSの場合はあまり影響はありませんが、そうでない場合は制御盤のサイズなどを考慮する必要があります。
カスケード制御の例
例えば、蒸気を使ってタンクの中の水を温める場合を考えてみましょう。
加熱する水の設定温度を80℃、最初の温度を20℃だとします。
フィードバック制御の場合
フィードバック制御の場合は次のような順序になります。
- 水の温度を測定(20℃)
- 設定値(80℃)との偏差(60℃)を検出
- 蒸気制御弁が開いて80℃になるように開度MV(%)を出力
- 水の温度(℃)を測定
という動作を繰り返します。
この時、外乱があった場合を考えてみます。例えば、供給する蒸気の圧力が変動したとしましょう。
フィードバック制御では、蒸気の圧力を検知する仕組みがないので、水の温度が変化して初めてそれを修正する動作が入ります。つまり、外乱がそのまま水温に影響を与えてしまいます。
次に、カスケード制御の場合を考えてみましょう。
カスケード制御の場合
今回は、温度制御の下に流量制御が入るカスケード制御を組んだとします。
カスケード制御の場合は次のような順序になります。
- 水の温度を測定(20℃)
- 設定値(80℃)との偏差(60℃)を検出
- 流量制御の調節計に対し、流量の設定値(SV値)を出力
- 制御弁を開いて命令された流量になるように開度MV(%)を出力
- 水の温度(℃)を測定
こちらも、、外乱があった場合を考えます。
供給する蒸気の圧力が変動すると、水の温度が変化しなくとも制御弁の入出の差圧が変わり、流量が変化するためそれを打ち消す調整が入ります。
蒸気の圧力が低下すれば制御弁が開き、圧力が上昇すれば制御弁が閉じることになります。
このように、カスケード制御を組めばフィードバック制御のみの場合に比べ、外乱の影響を抑えることが出来ます。
常に一定の負荷を与え続ける場合などには、カスケード制御は特に有効ということになります。
まとめ
- フィードバック制御を組み合わせたもの
- フィードバック制御よりも外乱の影響を受けにくい
- 機器費用や故障リスクが上がる
2重のループを組むことで外乱の影響を受けにくいという理屈を理解して頂けたでしょうか?例に挙げた使い方以外にも、ヒーターやポンプなど様々な所でカスケード制御は利用されています。
カスケード制御を行っている機器に出会ったら、カスケード制御を行うことでどんな外乱の影響を減らしているのか考えてみてはいかがでしょうか?