プラントや工場で自動化を進めていると「カスケード制御」という言葉を聞くことはないでしょうか?
フィードバック制御やフィードフォワード制御については、イメージ的に理解しやすい方も多いと思いますが、フィードバック制御を複数組み合わせるカスケード制御は理解しにくい制御方式の一つです。
今回は、カスケード制御とは何か、メリットやデメリットについて解説してみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
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1. カスケード制御とは?
カスケード制御は、調節計を複数使用してフィードバック制御を2重に組み合わせた制御方式です。
カスケードという言葉には「段になった小さな滝」という意味があります。また、これを工業的に用いて「縦に連なる」などという意味もあります。
カスケード制御を用いれば、フィードバック制御のみの場合に比べ外乱の影響を小さくすることが出来ます。
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2. カスケード制御の例
例えば、蒸気を使ってタンクの中の水を温める場合を考えてみましょう。
加熱する水の設定温度を80℃、最初の温度を20℃だとします。
2-1. フィードバック制御の場合
フィードバック制御の場合は次のような順序になります。
- 水の温度を測定(20℃)
- 設定値(80℃)との偏差(60℃)を検出
- 蒸気制御弁が開いて80℃になるように開度MV(%)を出力
- 水の温度(℃)を測定
という動作を繰り返します。
この時、外乱があった場合を考えてみます。例えば、供給する蒸気の圧力が変動したとしましょう。
フィードバック制御では、蒸気の圧力を検知する仕組みがないので、水の温度が変化して初めてそれを修正する動作が入ります。つまり、外乱がそのまま水温に影響を与えてしまいます。
次に、カスケード制御の場合を考えてみましょう。
2-2. カスケード制御の場合
今回は、温度制御の下に流量制御が入るカスケード制御を組んだとします。
カスケード制御の場合は次のような順序になります。
- 水の温度を測定(20℃)
- 設定値(80℃)との偏差(60℃)を検出
- 流量制御の調節計に対し、流量の設定値(SV値)を出力
- 制御弁を開いて命令された流量になるように開度MV(%)を出力
- 水の温度(℃)を測定
こちらも、、外乱があった場合を考えます。
供給する蒸気の圧力が変動すると、水の温度が変化しなくとも制御弁の入出の差圧が変わり、流量が変化するためそれを打ち消す調整が入ります。
蒸気の圧力が低下すれば制御弁が開き、圧力が上昇すれば制御弁が閉じることになります。
このように、カスケード制御を組めばフィードバック制御のみの場合に比べ、外乱の影響を抑えることが出来ます。
常に一定の負荷を与え続ける場合などには、カスケード制御は特に有効ということになります。
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3. カスケード制御のデメリットは?
フィードバック制御に比べ外乱の影響を受けにくいカスケード制御ですが、デメリットは次の2つ程度ではないかと思います。
3-1. 機器費用が高くなる
フィードバック制御に比べ、測定機器が多く必要になる為、機器費用が高くなります。
先ほどの例では、フィードバック制御の場合には必要のなかった流量計や調節計が追加されることになります。また、制御盤や電気工事などの費用もその分高くなります。
3-2. 故障リスクが高くなる
機器が複数になると、故障のリスクも高くなります。
特に、カスケード制御では流量制御を行うことが多いですが、流量計などは精密機械のため故障のリスクも他の機器に比べ高くなる傾向があります。定期的に点検や入れ替えなどの処置が必要になります。
機器構成が複雑になると、トラブル発生時に原因を追究する難易度も上がります。できるだけ安定したシンプルな構成にするのがベストです。
4. まとめ
カスケード制御の特徴は
- フィードバック制御を組み合わせたもの
- フィードバック制御よりも外乱の影響を受けにくい
- 機器費用や故障リスクが上がる
2重のループを組むことで外乱の影響を受けにくいという理屈を理解して頂けたでしょうか?例に挙げた使い方以外にも、ヒーターやポンプなど様々な所でカスケード制御は利用されています。
カスケード制御を行っている機器に出会ったら、カスケード制御を行うことでどんな外乱の影響を減らしているのか考えてみてはいかがでしょうか?
自動制御にはほかにも比率制御やスプリット制御、PID制御など様々なものがあります。どの制御が一番最適なのか、その都度考えましょう。