熱を与えることによって仕事をさせる「熱機関」ですが、これらを考えるときには「有効エネルギー(=エクセルギー)」と「無効エネルギー(=アネルギー)」という考え方が必要になります。
熱エネルギーはすべて仕事に変換できるわけではなく、仕事として有効に利用できるエネルギーと廃棄せざるを得ないエネルギーとに分かれます。
今回はこの「エクセルギー」と「アネルギー」の違いについて解説していきたいと思います。
1. エクセルギーとアネルギーの違い
エクセルギーとアネルギーの言葉の意味を考えてみましょう。
エクセルギー
「エクセルギー」という言葉の語源は、ギリシア語のex(外へ)とergon(仕事)というところからきています。「有効エネルギー」とも言われ、ある系から外へ取り出せる最大の機械的仕事のことを言います。
電気エネルギーは、ほぼエクセルギーからなりますが、熱エネルギーは廃棄されるエネルギーを多く含みます。一般的に熱の省エネルギーというときは、このエクセルギーを効率的に利用するという意味で使われます。
アネルギー
これに対し「アネルギー」は、仕事に変換することができない「無効エネルギー」のことを言います。エクセルギーとアネルギーは、エネルギー変換を行うシステムが、エネルギーをどの程度有効に利用できるかをはかる尺度として使われます。
2. エクセルギー効率には限界がある
熱機関では、熱エネルギーからいかに効率よく仕事を出力するかが重要になり、全エネルギーのうち仕事として取り出せるエネルギーの割合を「エクセルギー効率」や「熱効率」といいます。
ちなみに熱機関の例をあげると、次の動画のように熱を仕事に変換する機関になります。
動画に出てくるようなスターリングエンジンは販売もされてますので、子供の教育などにいかがでしょう?(笑)おそらく数回しか使わないでしょうけど、地味に欲しくなります。
この時、全エネルギーから仕事として取り出せる最大のエネルギーというのはあらかじめ決められています。この最大の効率を「カルノー効率」といいます。
カルノーの定理は非常にシンプルで次の2つで成り立っています。
- 熱機関の最大効率は、作業物質にはよらず2つの温度のみで決定される。
- 不可逆機関の効率は可逆機関の効率より小さい。
⇒ 「カルノー効率」=1-T2/T1(T1:高温熱源温度、T2:低温熱源温度)
ちなみにここでいう「可逆機関」というのは、熱から仕事を生み出したように、同じだけの仕事から同じ量の熱を生み出せる機関のことを言います。
熱機関から取り出せる最大のエネルギー効率が、高温熱源と低温熱源の温度から決まります。つまり、温度さえわかればその熱機関から取り出せる最大のエクセルギーを計算することができます。ここから、実際に仕事として取り出すことのできたエネルギーと比較することでエクセルギー効率を出すことができます。
また、カルノー効率の式から、効率を高めるためには「高温熱源の温度をできる限り高くすること」と「低温熱源の温度をできる限り低くすること」の2つが言えます。熱機関を考えるうえで非常に重要なのでしっかり押さえておきましょう。
3. まとめ
この記事のポイント
エネルギーにはエクセルギーとアネルギーの2種類がある
熱機関から取り出せる最大のエクセルギー効率を「カルノー効率」という
カルノー効率は、熱源の温度のみで決まる
エクセルギーやアネルギーという言葉は、普段あまり聞きなれないので、最初は理解しにくいかもしれません。
この言葉自体の意味が問われることはあまりありませんが、熱機関の問題では必ず全体の「効率」を問われるので、カルノー効率の考え方は理解しておきましょう。