洗濯物ってどうして乾くの?
そう思ったことってありませんか?
水が沸騰して水蒸気に変わるのは何となくイメージできますが、天日干しや乾燥機で乾かす場合は100℃にして沸騰させているわけではありません。
今回は、何となく分かっているようで聞かれるとうまく説明できない洗濯物の乾燥の原理を科学的な観点で解説してみたいと思います。
1. 洗濯物は乾いた空気に触れることで水分が気化する
空気には水分を含まない乾き空気と水分を含んだ湿り空気というものがあります。
空気は温度ごとに保有できる水分の量が決まっており、その温度で最大の水分量を含んだ空気のことを飽和湿り空気と呼びます。
では、温度ごとの空気が含める水分量というのは何によって決まるのでしょうか?
2. 洗濯物が乾く原理
ある温度の空気が含むことができる水分量というのは、その温度の水の飽和蒸気圧によって決まります。
洗濯ものが乾く原理を科学的に理解するためには飽和蒸気圧について理解しておく必要があります。
2-1. 蒸気圧とは
以下引用します。
蒸気圧(じょうきあつ、英語: vapor pressure)、あるいは平衡蒸気圧(へいこうじょうきあつ、英語: equilibrium vapor pressure)とは、液相あるいは固相にある物質と相平衡になるような、その物質の気相の圧力のことである。蒸気圧は物質に特有の物性値であり、温度に依存して決まる。
(出典:Wikipedia「蒸気圧」(外部リンク))
温度ごとの水の蒸気圧はこちらの蒸気表で確認することができます。
水は大気圧だと100℃で沸騰します。
沸騰は、蒸気圧が大気圧と釣り合うので、液体として存在できずに液体に変化することで発生する現象です。
2-2. 分圧の法則とは
水は空気に含まれる水蒸気の分圧が飽和蒸気圧になるまで蒸発できます。
ここで蒸気圧とは別にもう1つ重要になってくる「分圧の法則」について理解しておく必要があります。
ドルトンの法則(ドルトンのほうそく、英語: Dalton's law)、あるいは分圧の法則とは、理想気体の混合物の圧力が各成分の分圧の和に等しいことを主張する法則である。 1801年にジョン・ドルトンにより発見された。
(出典:Wikipedia「ドルトンの法則」(外部リンク))
例えば、大気圧100kPaの同じ空間にAとBという気体が存在しているとします。
全体積(モル数)のうちAの体積は20%、Bの体積が80%だとすると、Aの分圧は20kPa、Bの分圧は80kPaということになります。
逆に言えば、AとBそれぞれの分圧を足し合わせたものが全圧になります。
このような法則を分圧の法則といいます。
分圧の法則から、20℃の空気と80℃の空気で保有できる水蒸気の割合を計算してみましょう。
例えば蒸気表の値から、20℃の水の飽和蒸気圧は2.3kPa、80℃の水の飽和蒸気圧は47.4kPaだとわかります。
大気圧を100kPa(実際には101.3kPa)とすると、体積ベースで20℃の空気が含める水蒸気量は2.3%、80℃の空気が含める水蒸気量は47.4%ということになります。
夏は蒸し暑く、冬は乾燥するというのは空気の温度が変化するからということですね。
湿った空気が冷えて、温度が下がると水蒸気として存在できない分が水に戻ります。この現象が結露で、冬場、灯油ヒーターなどを使ったときに窓に水滴がつくのは良く目にしますね。
2-3. 気化の原理
この分圧の法則を利用すると、気化する条件は次のように言えます。
空気中の水蒸気の分圧が飽和蒸気圧よりも低い場合は気化する。空気中の水蒸気の分圧が飽和蒸気圧の場合は気化しない。ということになります。
気化すると、水の潜熱分が奪われ水温は低下します。この原理を利用して、地面の熱を下げるのが打ち水です。
3. 洗濯物をより早く乾かすためには?
これを理解したうえで洗濯物を早く乾かすためには次のような方法が有効です。
3-1. 乾いた温度の高い風を送る
空気の温度が高ければ水蒸気を多く含めるので、早く乾かすことができます。
温度が高すぎると、衣類が縮んだりするため、実際の乾燥機では適切な温度に調整されながら供給されます。
3-2. 乾燥させたい水の温度を高くする
乾燥させる水自体の温度が高ければ、水の周りの空気も温められ、乾燥しやすくなります。
一般的な用途ではイメージしにくいかもしれませんが、工場やクリーニングで乾燥させるときは、熱をいれた鉄板に押し当てて熱を与えるということが良くあります。
3-3. 湿った空気をすぐに取り除く
空気は流れがないと水蒸気を含んで、そのまま飽和湿り空気になります。
こうなると、洗濯物は乾燥しなくなるので、より早く水蒸気を含んだ空気を排除するというのも重要になります。
気温が高く、乾燥していて風が多い日が一番洗濯物が乾きやすいということです。
当たり前ですね(笑)
4. 洗濯物を乾かすのに最強の組み合わせ
洗濯物を乾かすのには次の3つがあれば最強です。
4-1. 暖房
まずは、空気を温めるための暖房です。
注意しなければいけないのは、灯油ヒーターなどは、燃料中の水分を含んだ熱風が供給されるので、乾燥には不向きです。
出来るだけ電気ヒーターなどを用いましょう。
4-2. 除湿器
空気中の水分を取り除く除湿器です。
結構強力なタイプまであるようなので、1台あれば雨の日も安心ですね。
4-3. 扇風機
見落としがちなのが空気を循環させる扇風機です。
これがあるかないかで乾燥スピードは大きく変わります。
4-4. 再熱除湿機能付きのエアコン
除湿と暖房を同時に行ってくれる、再熱除湿機能付きのエアコンというものもあります。
これ一台あれば、除湿器を買わなくていいので交換される際には検討するのもありですね。
ちなみに一般的な除湿では、空気の温度を下げて、水分を取り除いたあと、そのまま冷風が供給されるので乾燥には向いていません。
再熱除湿は水分を取り除いた後、再び温めなおして供給してくれます。(電力コストは上がります)
エアコンについてはこちらの動画もおすすめです。
5. まとめ
この記事のポイント
洗濯物が乾くのは、空気に水分を奪われるから
空気は温度によって含める水分量が変わる
暖房、除湿、送風が洗濯物を早く乾かす条件になる
普段何気なく利用している自然現象も深く考えると面白いですね。
今回は蒸気圧の関係から考えてみましたが、他にもいろいろな視点があると思うので興味のある方は調べてみればいかがでしょうか?