水質管理のために使用されるpHセンサー。
産業分野の現場でも、ラボスケールの研究所でも使用されますよね。ありふれた機器だからこそ原理をしっかりと理解しておきましょう。
今回はpH計の原理や注意点について解説したいと思います。
pHとは
pHは日本語だと水素イオン指数と呼ばれ、水素イオンH+が溶液1Lに対し何モル存在しているかを表しています。
pH0から14まで分類され、7より小さい数字が酸性、7より大きい数字はアルカリ性を意味します。数字は10の累乗の数字を表していて、例えばpH7ならば水素イオン濃度は10-7mol/Lです。
pH計の原理
現場で使用されるpH計は、ハンディタイプのものや据え置きタイプのもの、または単機能のものや複数の水質因子を分析できるものなどあり、様々な商品が市販されています。
pH計のメジャーな測定原理としては、ガラス電極法が用いられています。
用いられる特殊な薄いガラスには、水素イオンを通す性質があります。2つの電極が用いられ、一つはガラス電極、もう一つは比較電極と呼ばれます。
ガラス電極は、ガラス膜の容器の中に既知のpH濃度の溶液が入っており、その中に電極が浮いている(ガラス壁面につかないように設置されている)構造をしています。
ガラス膜の内液と外液(つまりpHを測りたい溶液)の水素イオン濃度に差があると、水素イオンがどちらか低い方に移動し、その際に起電力が生じます。
この起電力とpHは比例関係にあり、25℃の水の場合、起電力が59mV生じるとpHが1変化します。
発生した電位を正確に測るためには、比較対象が必要であり、電位の変化がない比較電極が用いられます。比較電極は、測定対象と接液させたり、セラミックで覆ったりして起電力が生じないようにしてあります。
わかりやすい動画がありましたので、こちらもご覧ください。
pH計の注意点
現場でモニタリングしていても、正しく使っていないと誤った情報を記録してしまいます。以下の注意点に心当たりがないか、確認してみてください。
温度補正ができているか
起電力とpHの関係は温度によって変化します。温度計による補正が機能しているか、温度計とpH計が同じ場所を測定しているか確認してください。
比較電極が接液しているか
製品によっては計測する棒の中の、ガラス電極と比較電極の高さが異なります。先端しか接液しておらず比較電極が溶液に接していないということがないようにしてください。
キャリブレーションしているか
標準液としてpH4とpH9の溶液がよく使われますが、メーカー基準の標準液を用いて2点調整もしくは3点調整(pH4、pH7、pH9での校正)を、メーカー指定の頻度で行ってください。
静電気が起きてないか
電極の水を拭き取る際に、擦ってしまうと静電気が発生し、測定エラーに繋がることがあります。
電極に異常がないか
表面が汚れている、電極内に気泡がある、ガラスが割れているなどの異常がないか、外観を確認してください。
導電率が低くないか
測定する溶液の導電率が低い場合には、低電気伝導率用の電極を用いることで改善できます。
強いアルカリ性ではないか
強アルカリ性の液体を計測するとき、比例関係が崩れ、起電力に対してpHが高く出る傾向があります(アルカリ誤差)。
まとめ
- pHは水素イオンH+が溶液1Lに対し何モル存在しているか。
- pH計の測定原理はガラス電極法。
- 汚れや静電気に弱い、定期的な校正が必要。
注意点を理解した上で、pH計を有効に活用しましょう。
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