「プラント業界は激務」と言われることがありますが、プラント業界へ就職や転職を考えている方にとって「本当に激務なのか」は気になるテーマだと思います。
そこで今回は実際に10年以上プラント業界で働く私が「プラント業界は激務なのか?また、なぜ激務と言われるのか?」について解説したいと思います。
プラント業界は激務なのか?
まず、プラント業界は激務なのかどうかですが「部署と時期によっては激務になる」というのが答えになります。
例えば、同じプラントの仕事でも顧客と直接関わることのない間接部門に比べると直接部門の方が納期がある分、激務になりやすいと言えます。
また、プラント業界の仕事は案件の規模が大きいので受注した時とそうでないときで仕事の量や業務時間が大きく変わります。
自分の担当している案件が受注すると前半では毎月設計工程の締切に追われ、後半では工事や試運転の対応に追われるため業務を自分で調整することが難しくなります。周りの人を見ていると残業時間は大体月60時間(1日平均3時間)を超えているようなイメージです。
昔は100時間越えが当たり前だったらしく、最近ではかなりましになったという言葉をよく聞きます。
受注がない時期は社内の業務効率化を進めたり、過去のトラブル事例をまとめたりするなど自分で調整しながらできる仕事が多いので激務ではありません。
プラント業界が激務と言われる7つの理由
ここからはプラント業界の仕事がなぜ激務になってしまうのかについて考えてみます。
納期が決まっている
プラントを受注すると必然的に客先への引渡し日が決まります。
設計工程や工事工程のどこかで少しの余裕は見込むものの、引渡し日から逆算してすべての工程が決まるので、常に締切りに追われることになります。
「何月末までに○○を完了させる」がずっと続き、遅れることが許されません。
また、受注した段階で全ての設計条件が決まっていればいいですが、設計と同時並行での確認になることも多く仕様見直しなどがあると工程はかなりタイトになります。
このような理由からプラント業界に限らず、納期に追われる仕事というのは比較的激務になりやすいと言われます。
担当の範囲が広い
部署ごとに役割が決まっており、分業制が組めれば理想的ですが、引継ぎ忘れなどの発生リスクも増加するので現実的には1担当者がかなり広い領域を担当することになります。
ある程度、妥協するところを見極める要領の良さが求められるので、一人で抱え込むタイプの人が担当を持つと残業時間は無限に増えていきます。
また、範囲が広くてもミスは許されないので、全てを細かくチェックする必要があり労働時間がかなり長くなります。
扱う機器数が多い
プラントの規模によりますが、全体で見ると扱う機器数は数十~数百のオーダーになります。
そのため、それぞれの機器の購買仕様書の作成やメーカーから受領する仕様書、図面のチェック、取合確認、過去のトラブル反映など対応すべきことは非常に多くなります。
また、書面だけでは分からないことも多く大型の機器では大抵打ち合わせも行うのでそれにも時間が取られていきます。機器の点数が多くなれば多くなるほど確認事項が増えていきます。
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昭和気質な人が多い
プラント業界は主にインフラを作ってきたので、産業自体が古く「成熟した産業」と呼ばれます。よって働いている人に昭和気質な考え方の人が多いです。
実際に働いてみると根底に「無限に残業してでもやるべきことはやる」という文化があるので「定時で終わらせるにはどうすればいいか」という発想をする人が少ないように感じます。
若手と年配の方でかなり考え方に差がありますが、今後もしばらくは「残業ありき」の文化は変わらないかもしれません。
チェック体制が強固
プラントの仕事は図面等に確認漏れがあるとそれが最後に形となり、ダイレクトに損失につながってきます。
そのため、企業はミスを防止するため二重、三重、もしくはそれ以上にチェック体制を強固にしており、作った資料は大抵何度か差戻しを食らいます。作成、修正、作成、修正を何度か繰り返すことになるので質は上がりますが、仕事の効率は下がります。
業務プロセス上、失くせない作業ですが、これも激務になる一つの要因と言えます。
やろうと思えばどこまでも出来る
全体を通して言えることですが、プラントの仕事はとにかく情報量が多いのでこだわろうと思えばどこまでも時間をかけることが出来ます。
仕事が好きな人だと働きたい時間までいくらでも仕事をすることが出来ます。周りから見れば激務といえども、本人は好きでやっている場合もあるのでそのあたりは判断が難しいところです。
逆に激務化を避けたい人は、どこまでやるかの線引きを自分で決める必要があります。
とにかく書類が多い
プラントの仕事はとにかく書類作成が多いです。
購買仕様書、社内引継書、国への申請書、打合せ議事録、社内会議用資料、デザインレビュー用資料、その他もろもろとにかく書類作成が多いです。
慣れである程度は早くなりますが、それらを全てしっかりと作成しないといけないので次から次へと書類作成の仕事が舞い込んできます。これも激務になる一つの要因かと思います。
プラント業界には激務ゆえのメリットもある
プラント業界の仕事は時期によると激務になりますが、それゆえのメリットもあります。
年収が高い
残業は多いですが、サービス残業はないのでやればやった分だけ給料が増えていきます。
大体ですが30歳で600~700万円、35歳で700~800万円、40歳で800~1000万円ぐらいの年収というイメージです。現場出張が多い場合はこれに手当てがつくので実際の年収は更に上がります。
建設業もそうですが、時間はないけどお金はあるという状態になりがちです。ただ、勤務体系的に激務な部署になると、夫婦共働きは難しいかもしれません。
やりがいがある
受注すると激務にはなりますが、最終的には成果物として自分の目に見える形でプラントが出来上がるのでとてもやりがいがあります。
また、社会インフラの図面に自分の名前が残るというのもすごい事だと思います。仕事を真剣にやりたいという人にとってはとてもやりがいの多い仕事と言えます。
やればやるだけ返ってくるというのがプラントの仕事の魅力の一つです。
マネジメント力が身に付く
担当が広く色々な部署や社外との連携が必須になってくるので、自分が激務にならないためにいつ、どの仕事を誰に振るかということを考えることが多くなります。
役職や部下がいなくてもそういったことを考える癖がつくので自然とマネジメント力を身に着けることが出来ます。
社内外の利害関係を理解しながら全体を回すような業務ができるのがプラント業界の仕事の魅力といえます。
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まとめ
- プラント業界が激務かは時期と部署による。
- 激務になる理由は業務内容と体質によるが、以前よりは緩和されている。
- 年収が高くやりがいがあるのが魅力。
プラント業界が激務と言われる理由を働く側の視点で考えてみました。
プラント業界に関わらず建設業は「金を取るか時間を取るか」的なところが大いにあるように感じます。やりがいはありますがワークライフバランスを重視したいという人は現状は向かないかもしれません。
ただ、成長できる機会の多さと高年収を考えるとある程度は仕方ないかなという感じですね。もちろん、会社によって変わるかと思いますが、これから就職や転職を考える方にとっては少しは参考になるのではないかと思います。
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