生産用の制御システムを考えるときに、「停電が起きた場合にどうするか」と懸念がある装置があります。
突発的に止まることで、重要データを維持したい、製品や装置に対して安全な状態で停止したいなどの場合、UPSの導入が検討されます。
今回は、制御盤内に設置するUPSとは何かについて解説したいと思います。
UPSとは
UPSはUninterruptible Power Supplyの略で、電源が突発的に断たれても電力供給を続ける装置のことを指します。具体的にはバッテリーの内蔵した装置で、電源異常時に安定した電力を供給するためのものです。他の機能として、電圧を一定化させるためトランス(変圧器)が入っているものもあります。
また、制御ソフトと組み合わせて、停電時に非常用電源で10分程度時間を稼ぎながら、その間に安全にシステムをシャットダウンするという使い方もされます。
UPSと調べるとコンピューター系の情報が多く、企業のデータ管理や個人用PCの停電対策の機器としても用いられています。サイズや価格はバッテリー容量によって様々で、家庭用で机に置くサイズのものもあれば、事業者用であれば横幅2mほどの大容量で災害用電源として利用されるものもあります。
プラントや工場などを制御するDCSなどの電源はUPSが使用されている場合がほとんどです。
【自動制御】DCSとは何か、メリット・デメリットについて解説します
続きを見る
UPSの役割
上記のような機器で構成されているUPSですが、以下の用途で用いられることが多いです。
突発的な電圧低下による装置停止対策
工場内の他の装置の異常で、電圧が一時的に大きく低下すると制御盤などの制御システムも起動を維持できなくなります。
現実的に起こりうるシチュエーションとしては、次のような場面が考えられます。
- 新設装置の試運転中のトラブル
- 工事時の電源供給線の断線
- 人為的ミスで電線が抜けた
台風などの強風、大規模水害、落雷などで、電柱が倒れたり、電力供給装置が水没したりするなどのトラブルが発生すると、重要機器の制御システムへの電源供給も遮断されてしまいます。
こうした事態が発生しても、装置を停止しないためにUPSが用いられます。官庁や病院のような、社会的に重要なインフラに多く導入されている理由と言えます。
生産データの保守
IoTという言葉が普及していますが、近年の生産現場では生産用装置とコンピュータが接続されたデジタル管理が進んでいます。
各生産ラインだけでなく、装置ごとのデータ管理を行う事業所もあります。生産に関わるデータを一括管理することで、生産効率アップ、エラー発生時の分析、省エネルギーなど様々な用途に活用が期待できます。
一方で、制御システムの電気的な保護に注意する必要があります。
急な電圧異常で、制御装置のハードディスクのデータが破損してしまうと、過去のデータにアクセスできなくなったり、機器のシーケンス制御に異常をきたしたりする可能性があります。
UPSの種類
UPSには大きく分けて3種類あります。
常時インバータ給電方式
商用電源をインバータを介して、電圧を調整した上で出力する形式です。同時に内蔵バッテリーにも充電しています。
電源ノイズを除去できるという点と、停電時に原理的に電気の瞬断が起こらないというのが利点とされています。
切り替え時の瞬間的な遮断が起こらないため、重要機器であるサーバやストレージ機器などに用いられます。
生産現場においては、電圧変動、電源ノイズ、周波数変動など様々な電気的変動が考えられます。高価ではありますが、常時インバータ給電方式が最も安全なタイプだと言えます。
ラインインタラクティブ方式
通常時は商用電源を出力しますが、バッテリー側から電圧を安定させるための補助が入ります。停電時にはバッテリー運転になります。
次に紹介する常時商用給電方式よりも、安定した電圧での給電ができるとされます。
こちらは常時インバータ給電方式よりも安価ですが、ノイズ除去機能はないこと、瞬断時間が存在することは留意しておく必要があります。
常時商用給電方式
通常時には、商用電源をそのまま対象装置へ出力します。同時に内蔵バッテリーにも充電しています。通常運転時はインバータが動かないため、エネルギー消費が少ないことが利点です。
比較的小型の機器に用いられ、コンピューター用品にはこの方式が用いられることが多いようです。
まとめ
- UPSは停電時に制御システムを守るために使用される
- 生産現場では常時インバータ給電方式の導入が安全である
「止まらない工場」を実現するためにも、リスクをできるだけ排除し、効率を下げない対策をとることをお勧めします。