安全弁には、揚程式と全量式という2種類あります。
2つとも安全弁なので、設定圧力よりも高くなると作動して、機器や配管の内部圧力が上昇するのを防ぐという役割は同じです。
揚程式と全量式は少しずつ放出するか、一気に放出するかが違います。この2つについて分かりやすいものがなかったのでここで解説してみたいと思います。
※ こちらの記事は動画でも解説しています。
1. 揚程式と全量式の定義
安全弁の揚程式と全量式の定義はそれぞれJISで定められています。
(出典:株式会社ベン安全弁編)
揚程式
安全弁のリフトが弁座口の径の1/40以上1/4未満で、弁体が開いた時の流路面積の中で弁座流路面積(カーテン面積)が最小となる安全弁。
全量式
弁座流路面積が弁体と弁座との当たり面より下部におけるノズルののど部面積より十分大きなものとなるようなリフトが得られる安全弁。
少しわかりにくいので図で表してみます。
赤い矢印がそれぞれのリフト量(閉弁⇒開弁のときに動く量)を表し、青い丸が開弁したときに流体が流れる場所を示しています。
これを見ると、揚程式は圧力が設定値を超えたとしても、リフト量が小さく弁座と弁体のすき間が最小面積なので、流量はそこに依存することになります。
対して全量式は、リフト量が大きく一気に上まで持ち上がるので、下ののど部面積が流量を決めることになります。
2. 揚程式と全量式の使い分けは?
上の図を見ながら、揚程式と全量式の違いをいくつかご紹介します。
揚程式 | 全量式 | |
リフト量 | 小さい | 大きい |
公称吹出し量(同じ呼径) | 少ない | 4~5倍 |
吹き出し音 | 小さい | 大きい |
呼び方 | リリーフ安全弁 | フルボア安全弁 |
価格 | 安い | 高い(約3倍 |
このような特徴の違いがあります。
使い分けとしては、明確に決められているものはないようですが、一般的に瞬間的に大容量の蒸気を放出しなければならないボイラーなどは全量式を用いるようです。
揚程式はポンプの二次側など、液体に使用する際に使用します。気体にも用いることはできますが、全量式を選定しておいた方が無難かと思います。
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3. まとめ
安全弁やら逃し弁(リリーフ弁)やら呼び方が統一されてないのでわかりにくいですが、基本用途は同じです。
圧力を一定以上に上昇させたくない箇所に設置して、設定値を超えると中の流体を吹き出します。
揚程式と全量式はその吹き出し方が違います。揚程式は徐々に、全量式は一気にというイメージです。
液体なら揚程式、気体でも一気に大量を吹き出す必要がなければ揚程式、一気に吹かせたい場合は全量式という考えでいいと思います。