都市の景観をよくするために、電柱をなくす無電柱化を行うなんてことを聞いたことはないでしょうか?
今回は、電線を地中に通して送電を行う地中送電についてメリットやデメリット、方式などを解説していきたいと思います。
※ こちらの記事は動画でも解説しています。
地中送電とは?
地中送電とは都市部や市街地で電線を地中に通し、送電を行うことです。送電とは別に配電という言葉を聞くこともあるかと思いますが、この2つは明確に使い分けがされています。
- 送電:発電所~変電所、変電所~変電所の線路
- 配電:変電所~需要家(各家庭等)
地中送電を行うことで都市の景観を維持や、安定した電気供給を行うことができます。
また、地中送電を行う電線のことを地中送電線路と呼びます。最近では、地中に電線を通すは場合は光ファイバや水道管など他の設備も一緒に地中化してしまうのが一般的です。
地中送電のメリット、デメリット
電気を送る方式は大きく分けると地中送電と架空送電があります。
架空送電は鉄塔を用いて電線を地中から距離のある高所に設置する方式です。よく、山に大型の鉄塔が立っている姿を見たことがある人も多いのではないでしょうか?
架空送電と比べた場合に地中送電にはメリットとデメリットがあります。
地中送電のメリット
地中送電には主に次の4つのメリットがあります。
- 景観が維持できる
- 感電のリスクが小さい
- 自然災害の影響を受けにくい
- 他の通信線への影響が小さい
まず、電線をすべて地中に埋めることができるので、都市の景観を壊すことなく、感電リスクも小さくできます。このような理由からヨーロッパの観光都市などでは地中送電方式が多く導入されています。
ほかにも積雪、台風など自然災害の影響を受けにくいのも特徴です。また、ケーブルは3線式が用いられるため、ノイズを打ち消し合い、他の通信線への影響も防止することができます。
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地中送電のデメリット
一方、地中送電には次のようなデメリットがあります。
- 建設コストが高い
- 異常発生時の復旧が難しい
- フェランチ効果が発生しやすい
方式によってまちまちですが、架空送電に比べて地中に埋める分、建設コストが高くなります。
また、災害の影響は受けにくいですが、いざ異常が起きてしまった場合は異常個所を見つけることが難しく、復旧に時間がかかります。
その他にも、架空送電に比べ、線路の静電容量が大きくなることから送電端よりも受電端のほうが電圧が大きくなるフェランチ効果の影響を受けやすくなるというデメリットがあります。
地中送電の方式
地中送電方式には大きく分けて次の3つの方式があります。上が工事費、下が工期の比較になります。
直接埋設式
直接埋設式は浅い地中にコンクリートの溝(トラフ)を埋め込んでケーブルを格納する方式です。小規模なので工事費が安く、放熱もしやすいですが、土との距離が近く静電容量が大きくなることから、フェランチ効果の影響をうけやすくなります。
管路式
管路式はコンクリートに穴をあけて、その間にケーブルを通すという方式です。適当な感覚で人が入ることができるマンホールを設け、ケーブルの保守、点検を容易にします。直接埋設式よりは工事費が高くなります。
暗渠(あんきょ)式
暗渠式は地下に人が入れる程度のトンネルを掘り、通信線やガス管、水道管などをすべて通してしまう方式です。東京など都市部では比較的よく採用されており、工事費は3つの方式の中で最も高いです。
地中送電ケーブルの種類
地中送電は一般的な電線ではなくケーブルを用います。ケーブルは裸電線にを絶縁被覆(ぜつえんひふく)、保護被覆(ほごひふく)で覆って強化したものです。
地中送電には主に次の3種類のケーブルを用います。
OFケーブル
OFケーブルは絶縁体に紙と油、シースにアルミを用いることが多いケーブルです。粘度の低い絶縁油を充填し、導体周りの紙にしみこませることで絶縁を行います。絶縁油を常に大気圧以上にすることでボイド(気泡)の発生を防ぎます。
CVケーブル
CVケーブルは、絶縁体に架橋ポリエチレンを使用するケーブルです。シースにはビニルを使用しており、工事・保守が容易であるという特徴ああります。
OFケーブルと比べると給油設備が不要なため、一般的によく使われています。
CVTケーブル
CVTケーブルは、単心のCVケーブルを3本より合わせたものです。3心共通シース型のCVケーブルと比べると、放熱性が高く曲げやすいという利点があります。
まとめ
- 地中送電は景観を維持できるなどのメリットがあるが工事費は高くなることが多い。
- 直接埋設式、管路式、暗渠式などの方式がある。
- 電線ではなくOFケーブル、CVケーブル、CVTケーブルなどを使用する。
台風や地震などの自然災害が多い日本ではこれから都市部を中心に地中送電が進められていきそうです。是非、市街地を歩くときは電柱の数に注意してみてはいかがでしょうか?
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