発電所などで受電点の力率について考えるときに「遅れ力率」や「進み力率」という言葉が出てきます。
この記事では「遅れ力率」と「進み力率」の違いについて詳しく解説します。
力率とは
力率とは、電力系統における電力の効率を表す指標で有効電力と皮相電力の比率で示されます。
具体的には、電力がどれだけ有効に使われているかを示す値であり、理想的にはこの比率は1(100%)に近いほうが良いとされています。
電力系統で使用される電力には、有効電力と無効電力の2種類が存在します。有効電力は実際に仕事をする電力で、モーターや照明などの負荷で利用されます。
一方、無効電力は、電力の伝送や誘導性負荷によって生じる磁場の生成に関わる電力で、実際の仕事には直接貢献しませんが、電力系統全体の安定には必要な電力です。
力率が低い(1から遠い値)と、無効電力が多くなり、電力損失が増えるため、電力の効率が悪くなります。したがって、電力を効率良く使用するためには、力率を改善することが重要とされています。
力率の式とベクトル図
電圧と電流の位相のずれを θ とすると、力率は次の式で表せます。
力率 = cosθ = 有効電力P[kW] ÷ 皮相電力S[kVA]
皮相電力 S = √(P² + Q²) Q:無効電力[kvar]
例:P=80kW、Q=60kvar のとき S=√(80²+60²)=100kVA、力率=80÷100=0.8(80%)
電圧を横向きの矢印にして電流の向きを描くと、遅れと進みの違いが一目で分かります。
遅れ力率:電流が電圧より遅れる
モーター・変圧器(誘導性負荷)が多い
進み力率:電流が電圧より進む
コンデンサ(容量性負荷)が多い
どちらも θ が大きいほど力率(cosθ)は小さくなります。力率の値だけでは遅れか進みかは分からないため、「遅れ0.9」「進み0.95」のように向きをつけて表します。
遅れ力率とは
遅れ力率とは、電流が電圧に対して時間的に遅れて流れる状態を指します。
この状態は主に誘導性負荷が原因で起こります。誘導性負荷とは、モーターやトランスフォーマーなどのコイルを使用した機器で、これらが運用される際には電流が磁場を作り出し、その磁場が生成される過程で電流の流れが電圧の変化よりも遅れることになります。
遅れ力率が顕著な場合、電力系統には多くの無効電力が発生し、これが電力損失の原因となるため、全体の電力効率が低下します。
電力効率が低下すると、発電所は同じ量の有効電力を供給するためにより多くのエネルギーを消費しなければならなくなり、結果的に運用コストが増加するという問題が生じます。
このため、工業施設や大規模な商業施設では、遅れ力率を改善するために進相コンデンサなどの機器を導入して無効電力を減少させ、電力損失を最小限に抑え、効率的な電力使用を目指しています。
進み力率とは
進み力率とは、電流が電圧よりも先に流れる状態を指します。
この現象は主に容量性負荷の影響で発生します。容量性負荷とは、コンデンサなどが代表的で、これらは電圧の変化に応じて電流を先行させる性質を持ちます。これが進み力率の状態です。なお、電流の位相が電圧より「進む」だけで、電力が逆向きに流れるわけではありません(有効電力は負荷側で消費されています)。
進み力率が顕著なシステムでは、無効電力が負の値をとることがあり、これによって電力系統の電圧が上昇するなどの問題が発生する可能性があります。
このため、進み力率が高い状態を適切に管理することは、電力系統の安定性を保つ上で重要です。進み力率の問題を解決するためには、分路リアクトルなどを使用して電流の位相を遅らせ、力率を改善する措置がとられます。
進み力率になりやすい場面
工場では遅れ力率を改善するために進相コンデンサを入れていますが、休日や夜間など負荷が軽いときにコンデンサが入ったままだと、補償しすぎて進み力率になります。進み力率になると受電点の電圧が上がり、機器に負担をかける原因になります。
そのため、負荷の大きさに合わせてコンデンサを自動で入り切りする自動力率調整装置を使ったり、軽負荷時にコンデンサを切り離す運用をしたりして、力率を1に近い遅れ側に保つのが一般的です。
まとめ
- 遅れ力率とは電流が電圧に対して時間的に遅れて流れる状態
- 進み力率とは電流が電圧よりも先に流れる状態
- 遅れの場合は進相コンデンサ、進みの場合は分路リアクトルで力率を改善できる
遅れ力率と進み力率は、感覚的に難しいですが、コイルやコンデンサと電流、電圧の関係を理解すればどのような状態で遅れになるのかなどが良く分かります。
是非、間違えないように注意しましょう。




