工場や事業所の省エネを考えるとき、熱源の変更はテーマの一つとして上がります。
条件が合えば、廃熱ボイラーを検討に入れるのがよいかもしれません。今回は廃熱ボイラーとは何かについて解説していきます。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
廃熱ボイラーとは

大型プラントでは製鉄、石油化学品精製などで非常に高い温度(例えば製鉄なら炉内の温度が2000℃を超えます)が必要とされます。
燃焼後に出てきたガスは、高温を維持しながらも使うことはできないため、放熱した上で排気します。こうした排気ガスを熱源に、蒸気を作り出すボイラーを廃熱ボイラーと呼びます。
また大型事業所のみならず、ゴミ焼却施設などから出る排気熱も廃熱ボイラーに有効利用することができます。
そのため廃熱ボイラーと一口に言っても、蒸発量が数百キロ(kg/h)のものから数十トンのもの、型式も煙管タイプや貫流タイプと様々です。
余談ですが、「廃熱」と「排熱」に明確な定義はなされてないです。辞書によっては片方しか掲載していないものもありました。
経産省の資料を見ていると、捨てるだけを指す時に「排熱」、回収して管理・再利用する文脈では「廃熱」が使われています。
廃熱ボイラーの熱源
廃熱ボイラーにはどんな熱源が適応できるのでしょうか。いくつかご紹介します。
コークス
石炭を蒸し焼きにした燃料で、製鉄や燃料用などに用いられます。冷却時に出るガスを廃熱ボイラーに供給することで、蒸気を得ます。国内の製鉄所では大部分を蒸気や電力として回収しているそうです。
石油化学製品
石油や天然ガスを精製する際に、残余ガスが発生します。その熱を有効利用するために廃熱ボイラーが用いられています。発生させた蒸気は熱源として事業所内で使われることが多いです。
硫黄
硫黄化合物はゴム製品や医農薬など多くの化学製品に使われており、原料となる硫黄の精製には廃熱ボイラーが使用されています。排ガス中に腐食性物質(硫黄酸化物)に強いタイプの廃熱ボイラーもあります。
ゴミ

街のゴミ焼却施設でも廃熱ボイラーは用いられています。ゴミを高温で焼却することで、匂いの成分を分解することができます。ゴミ処理施設で発生した蒸気を用いて発電し、売電しているところもあります。
バイオマス
木材チップや、製紙工場で生まれる黒液、食品工場で廃棄される油を含んだ廃液などを熱源にすることができます。
ボイラーで扱えるように処理する手間がかかりますが、廃液処理のコストを考えると、燃やして熱を回収する方がメリットがあります。
こちらは上記の3つの例と比べても、検討の余地がある事業所が多いのではないでしょうか。
経産省のwebサイトに参考になるページがありました。こちらも読んでみてください。
参考:資源エネルギー庁 再生可能エネルギー
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まとめ
- 別の用途で使われて捨てられる熱源を利用したものが廃熱ボイラー。
- コークス、硫黄、ガスなど様々なものが熱源として利用される。
- バイオマスなど中小規模事業所においては廃熱ボイラーの新規検討の余地がある。
製造工程で大量の廃熱が発生する場合は、多くの事業所で廃熱ボイラーが導入されています。
是非、廃熱ボイラーを見かけた場合は、何を熱源としているのかに注目してみてください。
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