ボイラー

【ボイラー】スートブロワって何?その役割は?

ボイラーの運転ではしばしば、スートブロワによって灰を除去する煤吹き作業を行います。スートブロワが上手く作動しないとボイラーの水管や過熱管の寿命に大きな悪影響を与えます。

今回はスートブロワとは何なのか、スートブロワの目的や注意点について解説したいと思います。

スートブロワとは?

スートブロワは煤吹きというボイラーに定期的に行うメンテナンスを行う装置です。

ボイラーの蒸発管や過熱器エコノマイザー(節炭器)などの燃料や排ガスを使う熱交換器では伝熱面に煤や塵が付着します。通常はこれらを定期的に蒸気や圧縮空気を吹き付けることで吹き飛ばします。

スートブロワによる煤吹き作業を行わない場合、伝熱面に煤やダストが溜まって伝熱効率が下がり、結果として燃料の燃焼熱が上手く伝わらなかったり、排ガスの過剰流速により水管が減肉したりします。

ボイラー効率を高め、ボイラーの寿命を延ばすためにはスートブロワによる煤吹き作業は非常に重要になります。

大型のボイラーでは1日に数回程度行い、動作は全て自動化されているのが一般的です。オペレータが指令を送るだけで、ドレン切りや暖気、蒸気噴霧までの一連の動作がシーケンス制御で動きます。

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スートブロワの方式

スートブロワには様々種類がありますが、代表的なものを紹介します。

長抜差型

回転しながら前後に運動して吹き付けます。ボイラーの過熱器などの高温箇所に多く使われます。高温環境のため、機器の寿命を延ばすよう抜差しができるようになっています。

ボイラー幅方向に端から端まで往復することになるので、大型のボイラーでは、側面に大きく突き出して設置するような形になります。

過熱器に利用する場合、蒸気が高温なので、その温度に耐えられる材質で設計されています。動きの方向によって左右に振れるスイング式長抜差型というものもあります。

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定置回転型

熱交換器内に差し込んだ噴出管を回転させて吹き付けます。ボイラーの水管やエコノマイザーに使われます。

長抜差型との違いは、抜き差しを行わず常に固定された位置で回転を行うところです。そのため長抜差型よりも温度の低下した場所で利用されます。

往復動型

往復動型はT字の噴出管を前後に動かしながら蒸気を噴霧する方式です。主に空気予熱器などで利用されます。

回転させず、運動場の砂をならすトンボのような動きで煤吹きを行います。

定置固定型

最もシンプルな方式で、固定したパイプから決められた位置に蒸気を噴霧する方式です。

範囲が限定されるため、狭い範囲にピンポイントのブローを行いたいときに利用します。

圧力波式

近年、注目されている技術としては圧力波式というものもあります。

圧力波式は燃料ガスを点火プラグで爆発させることで、その衝撃波でダストを除去するというものです。蒸気を使う場合と比べてエネルギーロスやドレンアタックによる摩耗を防止することが出来ます。

JFEエンジニアリングが分かりやすい動画を公開しているので紹介しておきます。

JFEボイラークリーニングシステム(圧力波方式・水噴射方式)(外部リンク)

スートブロワの注意点

スートブロワをする際に注意すべき点は次の3つです。

  1. ボイラー負荷が最大に近いときに行う。
  2. 使用する蒸気はドレン抜きをしてまんべんなく吹き付ける。
  3. スートブロワ後は効果を確認する。

まず、高い温度・圧力で吹き飛ばす方が汚れが取れやすいため、出来るだけ負荷が高い時に実施するのが重要です。ボイラー内部の温度が低いときや消炎中は、煤や塵が冷えて固まっていてなかなか取れません。

また、蒸気に復水が含まれていたり、一か所に吹き付け続けたりするとエロージョン(ドレンアタック)が発生し、配管の穴あきリスクが上がるため注意が必要です。

最後にスートブロワの効果は通風の圧力損失(通風損失)や煙道のガス温度を測ることで確かめることができます。定期的にスートブロワが有効に機能しているかどうかを確認しましょう。

まとめ

  • スートブロワは伝熱面にたまった煤や塵を蒸気や圧縮空気で吹き飛ばす方法のこと。
  • スートブロワには長抜差型や定置回転型などの種類がある。
  • スートブロワを行うことでボイラー効率が向上し省エネになる。

ボイラー効率を高く保つことで燃料の削減、エネルギー原単位の削減につながります。ぜひ、省エネのためにもスートブロワによる煤吹きは欠かさず行いましょう。

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エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



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