ボイラーの水質管理をはじめ、産業分野でも水質はよく見られる指標の一つです。
今回は含まれる金属イオン濃度の指標としても使われる導電率やそれを測定する導電率計の原理と注意点について解説します。
導電率とは
導電率は、電気伝導度や伝導率などとも呼ばれる、溶液中の電気の流れやすさを表す度合いです。
単位はS/m(ジーメンス毎メートル)を使います、なおSは電気抵抗Ωの逆数です。
名称は19世紀のドイツ人電気工学者ヴェルナー・ジーメンスからです。彼は産業分野の自動化システムを提供するグローバル企業シーメンスの創業者でもあります。
この導電率には、水中のイオン濃度が高いと導電率も上がるという性質があります。イオンが電子を運ぶ(つまり電気を流す)役割を果たしているからです。
塩NaClは水中ではNa+イオンとCl-イオンに別れるため、塩分濃度が高いと導電率が上がります。また硬水のようにカルシウムイオン濃度などが高い水でも、高い導電率を示します。
導電率計の原理
主に2つの測定原理が用いられています。
電極式
2つの電極を溶液の中に入れ、交流電気を流し、電極間に流れる電流値を測定します。
低い導電率測定に適しているとされ、導電率が高いと分極(電荷が偏ること)の影響が大きくなり正しく測定できないとされます。
電磁式
2つのコイルで電磁誘導を発生させる形式です。電極の汚れや分極による影響が少ないです。高い導電率の測定は得意ですが、低い場合は不向きとされます。
表面をセラミックなどで覆うこともできるため、金属腐食性のある液体にも使用できます。計測部が電極式よりやや大型です。
わかりやすい動画がありましたので、こちらもご覧ください。
導電率計の注意点
測定、使用時の注意点をまとめました。
温度が一定か
水温によって導電率が変わるため、正確な記録・比較のためには測定対象の温度を一定に保っておく必要があります。
電極に異常がないか
ガラス製の棒に入ったタイプの場合は、内部に気泡がないか、表面に汚れがないか外観を確認してください。結果に大きな影響が出てしまいます。
校正しているか
電極が古くなると数値がずれてきます。定期的に校正を行い、古くなったら電極を交換しましょう。
まとめ
- 導電率は溶液中の電気の流れやすさを表す度合い。
- 導電率計には電極式と電磁式がある。
- 低導電率の溶液には電極式、汚れが多い溶液には電磁式。
原理を理解した上で、現場に合わせた導電率計の導入・管理を実施しましょう。
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