バタフライバルブという型式を聞かれたことはありますか?現場では「バタ弁」と呼ばれることもあります。
バルブの選定で、「どの方式を選ぶのがいいのだろう」と迷われた経験のある方向けに、今回はバタフライバルブのメリット・デメリットについて解説をしたいと思います。
バタフライバルブとは
バタフライバルブの構造は、「蝶」と名付けられた丸いディスクと、その中心に通った軸、というシンプルな構造です。
バルブの外側には軸につながったハンドルがあり、ハンドルを90度回転させることで、全開・全閉を操作することができます(ここはボールバルブを同じですね)。また、上の画像のように数回転させることで開閉を行うタイプもあります。
他のバルブと比べると、バルブ部分が薄く作られています。ディスクの中心に軸があるタイプと、中心からずらした偏心タイプがあります。
歴史を遡ると、18世紀後半には蒸気エンジンの初期型に使われていたそうです。現在では食品、製薬、化学製品など様々な業界の現場で活用されています。性能上、どんな特徴があるのか見ていきましょう。
バタフライバルブのメリット
バタフライバルブには一般的に、以下のような利点があります。
流路が大きく、圧力損失が小さい
バタフライバルブは全開時に、配管径と同サイズとなり流路を塞ぐものが少ない構造です。そのためグローブバルブなどに比べ圧力損失が小さく、ゴミなど異物が詰まりにくいです。
設置スペースが小さい
全閉時にディスク部を覆うだけの厚みがあれば良いので、他のバルブに薄く設計されています。よって狭いスペースにも設置ができます(ハンドル部は長く大きいこともあるので、よく確認してください)。
特に大口径の場合は他のバルブより大きく省スペース化を図れるのでバタフライバルブは重宝されます。
開閉トルクが小さい
構造上、バルブを開閉させるための力が小さくて済みます。自動化を考えたとき、電気や空気駆動のアクチュエータに求められるスペックを小さくできます。
実際に自動化する場合はアクチュエーターの他にスピードコントローラーやリミットスイッチを設置することが多いです。
バタフライバルブのデメリット
一方、バタフライバルブのデメリットとして挙げられる点を記載します。
高いシール性が求められる場所には不向き
全閉時に、ディスクの外周部がバルブ内壁にぴったりとはまる形で閉弁するため、グローブ弁のように力強く押し込むタイプではありません。シール部が摩耗に弱いと言えます。
温度制限がある
シール性確保のためにシール部分がゴムなど非金属で作られている場合には、その素材に応じて温度や圧力の制限があります。使用する流体の最高使用温度に注意しましょう。
流量制御には向かない
基本的には全開・全閉で使うタイプのバルブです。一方で、流量制御可能という製品もありますので、メーカー担当者とよくご相談ください。
流量制御を行う場合は比例制御用のポジショナーをアクチュエーターに設置し、4-20mA信号で動かすのが一般的です。
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バタフライバルブを利用した方がいい例
上記のような特徴があるため、バタフライバルブは特に以下のような用途で使用されます。
配管やバルブが多く狭い場所
新たに工事して改造する場合には、省スペースで設置ができることが利点になります。
圧力損失を小さくしたい場合
できる限り圧力損失の影響を抑えたい場所に有効です。例えば、流体粘度が高い、配管径が小さい場合などです。
大口径の場合
大型の排水配管や原油・石油の配管に設置するバルブにはバタフライバルブが用いられます。トルクが小さく、大口径でも薄いので小型化できるのが特徴です。
まとめ
- バタフライバルブは薄く、開閉トルクが小さいのが特徴。
- 狭い場所や、大口径の場合には有効に用いられる。
- 流量制御など調整が必要な用途には向かない。
上記のような特徴を理解された上で、バタフライバルブの使用を検討されてみてください。
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