熱交換器やボイラーなどの性能劣化具合を検討する値の一つに汚れ係数があります。この記事では汚れ係数とは何か、どんな場面で利用されるのかについて解説します。
汚れ係数とは
汚れ係数とは伝熱面の汚れによる熱抵抗のことで単位はm2K/Wなどで表されます。
ボイラーや熱交換器などを長期間運転していると伝熱面に錆やスケール等が堆積し伝熱効率が低下します。この時の熱抵抗の値を示すものが汚れ係数です。
伝熱面に堆積した汚れの厚みをl[m]、熱伝導率をλ[W/mK]とすると汚れ係数は次の式で表すことが出来ます。
$$r=\frac{l}{λ}[m^2K/W]$$
この式から分かるように、汚れの厚みが大きく熱伝導率の低いものが体積すれば、汚れ係数は大きくなることが分かります。実際には汚れ係数を単独で計算することは困難なため、試運転時の伝熱条件から総括伝熱係数(U値)を計算し、汚れ係数を逆算することで、現状を把握するという手法を取るのが一般的です。
実際に汚れ係数を含む総括伝熱係数の式は次のようになります。
$$\frac{1}{U}=\frac{1}{h1}+\frac{L}{λ}+\frac{1}{h2}+r$$
- h1:熱伝達率 W/m2K
- L:熱板厚さ m
- λ:熱伝導率 W/mK
- h2:熱伝達率 W/m2K
- r:汚れ係数 m2K/W
熱交換器の伝熱能力は伝熱面積、総括伝熱係数、対数平均温度差を掛けたものになるため、汚れ係数が大きければ大きいほど熱が伝わりにくくなることが式を見ても分かります。
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汚れ係数を低くするためには、加熱物側、被加熱物側に不純物の少ない清浄度の高いものを利用する、定期的に洗浄する、ストレーナー等によりゴミを取り除くなどが有効です。
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汚れ係数の考え方
汚れ係数は次のような場合に活用します。
設計時の汚れ係数
熱交換器の設計時では汚れ係数の値によって、どの程度伝熱面積に余裕を見込むかが変わります。
- 汚れ係数 大:伝熱面積 大
- 汚れ係数 小:伝熱面積 小
設計時にどの程度の汚れ係数を見込むかは、想定されているメンテナンス周期なども考慮し、汚れた状態でも能力が発揮できるようにしておく必要があります。
運転時の汚れ係数
運転時の場合は、メンテナンスの必要性や汚れ具合を検討する際に利用されます。
試運転時のデータから、汚れがない状態でのU値が計算できれば現状の熱交換能力より汚れ係数を計算することが出来ます。汚れ係数を管理することで連続的な汚れ具合を確認することが出来、メンテナンス時期などの検討に利用できます。
まとめ
- 汚れ係数は伝熱面の汚れによる熱抵抗を表す指標。
- 汚れ係数を低く保つためには流体の清浄度を上げる。
- 汚れ係数は設計の安全率やメンテナンス時期の検討に用いられる。
伝熱計算の式で見ると、汚れ係数は実運転条件と伝熱計算の帳尻合わせのように見えますが、実際には機器の性能劣化具合を図るための重要な値になります。
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