今回は、ポンプや空調について勉強していると出てくる静圧と動圧についてです。
圧力を考える時に出てくるこの2つの言葉は何が違うのかについて、解説していきたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
動圧とは
うちわで扇ぐと風を感じますよね。これは空気に流速が与えられて、圧力が上がったから、と捉えることができます。この時の圧力を動圧と呼びます。
動圧とは流速や運動エネルギーに関係した圧力です。流体に動きがある時に発生する圧力のことを指します。定義は以下の式で表されます。
$$q = \frac{ρv^2}{2}$$
式において、qは動圧(Pa)、ρは流体密度(kg/m3)、vは流速(m/s)を表しています。
配管を流れる水でイメージするならば、水の流れに対して垂直にサイフォン管を取り付けた圧力ゲージと、水平かつ流れ方向の逆向きに取り付けられた圧力ゲージがあるとします。
水平に取り付けたほうが高い圧力を示すのですが、この時の圧力の差が動圧となります。
動圧とは、流れがあるものが何かにぶつかって、流れを阻害された時に初めて発生する圧力のことを指します。
なお配管径が決まっていれば、この動圧から流速を逆算することができます。代表的なものがピトー管と呼ばれる速度計です。古典的ですが、飛行機等に使われているものなので、興味があれば調べてみてください。
静圧とは
上記の動圧の説明とは逆に、流れがない時の圧力を静圧と呼びます。動圧に対して、区別してわかりやすく説明するための言葉として使われているというイメージでよいでしょう。
圧力計で測定できるのは原理的に静圧のみで、動圧は差圧を計算して求める必要があります。
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動圧と静圧はどんな時に必要?
動圧と制圧に関する理解は、ポンプのカタログに書いてある全揚程を正しく知るために必要です。
全揚程を圧力に換算したものを全圧と呼ぶのですが、
$$全圧=動圧+静圧$$
という関係式があります。
この全圧は流路や流速が変わっても一定であることが知られています。
この式、よく見るとベルヌーイの定理から位置エネルギーの値を消したものであることがわかります。全圧は一定なので、動圧が上がる(流速が大きくなる)と、静圧(見かけの圧力)は下がります。
ベルヌーイの定理について、詳しくは過去の記事もご覧ください。
ポンプの機器自体の能力を表そうとしても、実際に測定できる静圧は吸い込み・吐き出し側の配管径などによって変わります。
そこで試験装置で測定した静圧と動圧を足し合わせた全圧を使うことで、設備環境に左右されない数字として能力表記ができるようにしています。
つまりポンプの選定を行う上では、全圧についてのみ検討されればよいと捉えることができます。ポンプの全揚程については過去の記事でもまとめています。
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余談ですが、換気扇など空調機器の場合には、静圧と風量をグラフ化したP-Q曲線というものが用いられます。
まとめ
- 動圧とは流れがある時に生じる圧力、静圧は流れがない時の圧力。
- エネルギー保存則から動圧が上がれば、静圧は下がる。
- ポンプの全圧は静圧と動圧を足し合わせた値。
ポンプのH-Q曲線が「全揚程」で記載されている理由がお分かり頂けたでしょうか。
どちらも圧力を表すのに意味が違うので、勘違いしてしまいそうですが、是非間違えないように注意しましょう。