流量計を設置しようと検討する際、流量計にはいくつかの計測原理があることに気づかれると思います。
そして「結局どれが良いのだろう?」という疑問を持たれますよね?
配管内の流路を邪魔しないタイプの流量計を調べると、超音波流量計と電磁流量計が主に出てきます。この2つ、どんな違いがあるのでしょうか。
今回は、流量計の超音波式と電磁式の違いについて解説してみたいと思います。
超音波流量計とは
超音波とは2万Hz以上の人には聞こえない周波数の音のことを指します。実際にこれより低い周波数も流量計には使われているようです。超音波は機体や液体を通して振動を伝えます。
超音波流量計は伝播時間の差を測ることで流量に換算します。
配管内のある地点AからB(流体の流れ方向の上流にA、下流にB)にかけて超音波を出し、Bに当たった音の波がAに戻る速度を測ります。
送る側と帰ってくる側の音波のわずかな時間差を計算するという原理です。実際に、流量計の一次側と二次側にセンサーがついています。
流体の速度Vは、次の式で表すことが出来ます。
$$V=D×\frac{ΔT}{{sin2θ×(T0 – t)^2}}$$
Dは配管内径、ΔTはAからBまでの到達時間差、θは超音波の入射角、T0は流量0の時の時間、tは配管壁面を流れるのに必要な時間です。V×断面積Aの計算で体積流量が計算できます。
流量計を配管の外から設置して流量を測定することが可能です。
国内ではキーエンスやオーバルなど、産業分野向けの多くのメーカーが取り扱っています。
動画がありましたのでご紹介します、こちらも学習に役立つかと思います。
このほかにもドップラー式という測定原理の超音波流量計もありますが、一般に伝播時間差の方が精度が高いとされています。
電磁流量計とは
コイル内で磁石を動かすと起電力が生まれることはご存知ですよね。
配管にコイルを巻き通電しておいた状態で、配管内に導電性のある流体が流れると、起電力が発生します。
この時の電圧は、流体の流速に比例することが知られています。配管内径はわかっているので、流速を含めて逆算すれば、流体の流量がわかるという原理です。
起電力Eの計算式は、次の式で表されます。
$$E=4×B×\frac{Q}{π×D^2}$$
Bは磁束密度、Qは流量、Dは配管内径です。
技術の歴史は古く、60年前近く利用されてきた原理です。アズビルや横川電気などを含めた多くのメーカーが製造販売している型式です。
超音波式と電磁式の使い分け
どちらの流量計も配管内に異物がないので、流路を邪魔する構造ではない、つまり圧力損失が非常に小さい構造をしています。
また稼働部がなくメンテナンスが容易、密度や粘度の影響を受けないという点も同じです。
利点のうち異なる点を挙げていくと、
超音波式
- レンジアビリティが大きい、精度が高い
- 配管を切らずに外付けできる型式がある
電磁式
- 気泡の影響を受けにくい
- 超音波式に比べてコストが安い
といった違いがあります。
まとめ
- 超音波式も電磁式も配管経路を狭めない構造
- 両者には利便性やコストに違いがある
時に見た目も類似している流量計なので、今回はこの2種に特化して記事を作成しました。
実際の導入時には単品のコストだけでなく、配管工事費やメーカーの対応頻度なども考慮に入れて、どの型式が良いか検討してみてください。
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