工場やプラントで燃料として使用するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。
それらを満たした燃料として、よく使用されるもので大きく、気体燃料、液体燃料、固体燃料の3つに分けることができ、用途や情勢によって使用する燃料が変化します。
今回は、気体燃料について、その種類や特徴について記載していきたいと思います。
気体燃料とは?
気体燃料とは、燃焼によってエネルギーを得るために使用される気体状態の燃料の総称です。
代表的な気体燃料には、天然ガス、プロパン、ブタン、水素などが含まれます。これらの燃料は、主に炭化水素を含んでおり、燃焼時にクリーンなエネルギーを供給します。
気体燃料は、固体や液体燃料に比べて燃焼効率が高く、汚染物質の排出が少ないため、環境負荷が低いのが特徴です。特に天然ガスは、家庭用から産業用まで幅広く利用され、エネルギー源として重要な役割を果たしています。
気体燃料の特徴
気体燃料には次のような特徴があります。
燃焼効率が高い
気体燃料は、燃焼効率が非常に高いのが特徴です。これは、気体が酸素と容易に混合するため、燃焼が速やかに進行し、熱エネルギーに変換されやすいからです。
特に、天然ガスや水素は高い燃焼温度を持ち、その結果として発生するエネルギーが大きく、効率的な熱利用が可能です。また、燃焼制御が容易であるため、エネルギー供給の精度や安定性も向上します。
このため、気体燃料は発電所や工業炉など、エネルギー効率が重視される分野で広く利用されています。
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環境にやさしい
気体燃料は、環境にやさしいエネルギー源としても知られています。燃焼時に発生する二酸化炭素や硫黄酸化物などの有害物質が少なく、クリーンなエネルギー供給を実現します。
特に天然ガスは、同じエネルギー量を発生させる際に石炭や石油に比べて二酸化炭素の排出量が少ないため、地球温暖化対策の一環として注目されています。
また、水素燃料は燃焼時に水だけを生成し、完全にクリーンなエネルギー源とされています。これにより、気体燃料は環境保護の観点からも非常に優れた選択肢となっています。
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貯蔵、運搬が難しい
気体燃料は、その物理的性質により貯蔵や運搬が難しいという課題があります。
気体は液体や固体に比べて体積が大きいため、圧縮して液化するか、専用の高圧タンクに保管する必要があります。これにより、貯蔵施設や運搬装置が大型化し、コストも増加します。
また、液化天然ガス(LNG)のように、非常に低温で液体にする必要がある場合は、さらに高度な技術と設備が必要です。このため、気体燃料の効率的な運搬や貯蔵は、技術革新が求められる分野です。
災害リスクが大きい
気体燃料は、漏洩や爆発のリスクが大きいため、災害のリスクが高いという特徴があります。
気体は空気中に容易に拡散し、爆発性の混合気体を形成する恐れがあるため、取り扱いには非常に高い安全性が要求されます。特に、天然ガスやプロパンは燃焼範囲が広く、引火しやすい性質を持つため、漏洩が発生した場合には重大な災害に繋がる可能性があります。
このため、気体燃料を使用する設備やシステムには、厳重な安全管理が不可欠であり、定期的な点検と保守が求められます。
気体燃料の種類
気体燃料と一言で言っても、様々な種類があります。ここでは、代表的なものを紹介したいと思います。
天然ガス(LNG)
天然ガスは、地中に存在するメタンを主成分とする化石燃料です。
液化天然ガス(LNG)は、天然ガスを超低温で液化したもので、体積を大幅に縮小できるため、長距離輸送に適しています。燃焼時に排出される有害物質が少なく、クリーンエネルギーとして注目されています。
発電所や家庭用燃料として広く利用されており、エネルギー効率の高さから産業用途でも多用されています。
液化石油ガス(LPG)
液化石油ガス(LPG)は、プロパンやブタンを主成分とするガスで、石油精製や天然ガス処理の副産物として得られます。
LPGは常温・常圧では気体ですが、低温や加圧によって容易に液化できるため、ボンベやタンクに貯蔵されやすい特徴があります。
家庭用や商業用の燃料として使用されるほか、自動車用燃料としても利用されています。特に、災害時の非常用燃料としての需要も高まっています。
都市ガス
都市ガスは、地域ごとに異なる成分を持つガス燃料で、主にメタンやエタンが含まれます。
各家庭や商業施設に供給され、調理や暖房、給湯などに利用される一般的な燃料です。都市ガスの供給は、地下パイプラインを通じて行われ、供給地域によってガスの成分や燃焼特性が異なるため、対応する機器も地域ごとに異なります。
クリーンで便利なエネルギー源として、多くの都市で利用されています。
油分解ガス
油分解ガスは、石油精製過程で生成される副産物のガスです。
このガスは、主にエチレンやプロピレンなどの炭化水素を含んでおり、化学工業の原料として広く利用されています。油分解ガスは、燃料としての利用も可能ですが、その高いエネルギー密度や化学的価値から、主に化学製品の製造に使用されます。
環境負荷が比較的低く、利用の際には高い効率が求められます。
石炭ガス
石炭ガスは、石炭を乾留して得られるガスで、かつては都市ガスとして広く使用されていました。
主成分は一酸化炭素や水素であり、燃焼時に多量の熱を発生します。現在では、石炭ガスの利用は減少していますが、特定の産業用途や発電用燃料として依然として使用されています。
石炭ガスは、環境への影響が大きいため、環境対策が重要な課題となっています。
溶鉱炉ガス
溶鉱炉ガスは、製鉄所の溶鉱炉から発生するガスで、主に一酸化炭素や窒素を含んでいます。
このガスは、製鉄過程で副産物として生成され、そのまま燃料として再利用されることが一般的です。溶鉱炉ガスは、製鉄所内の発電や熱供給に利用され、エネルギーの効率的な利用に貢献しています。
また、環境負荷の低減にも寄与しており、循環型エネルギーとしての役割が期待されています。
製油所排ガス
製油所排ガスは、石油精製過程で発生する副産物のガスです。
これらのガスは、燃焼によってエネルギーとして利用されるほか、化学工業の原料としても使用されます。製油所排ガスには多くの有価成分が含まれており、これを回収して利用することで、エネルギーの有効活用が図られています。
また、排ガスの処理と再利用は、環境保護の観点からも重要な技術とされています。
気体燃料の燃焼方式
気体燃料を燃焼させて熱エネルギーを取り出すためには、空気中の酸素と混合させなければいけません。空気と混合させる方式として、あらかじめ燃料と空気と混合させてから燃焼させる方法と別々のノズルから噴霧して混合させながら燃焼させる方法の2種類があります。
この2種類のうち前者を予混合燃焼バーナー、後者を拡散燃焼バーナーと呼びます。
予混合燃焼バーナー
予混合燃焼バーナーは、燃料と空気をあらかじめ混合させてから燃焼させる方式です。燃料と空気の一部(30~80%程度)を混合させて二次空気で調整する部分予混合バーナーとすべて混合させてから燃焼させる完全混合バーナーの2種類に分かれます。
予混合燃焼バーナーの特徴は次のようになります。
- 燃焼の反応速度が大きい
- すすが発生しにくい
- 逆火(バックファイア)や吹飛びなどを考慮する必要がある
予混合燃焼バーナーは、空気があらかじめ混合させていることにより安定した火炎を作れますが、円筒の長さや燃焼速度により逆火や消炎のリスクがあります。
用途として家庭用ガスコンロから工業用のボイラーなど幅広く利用されていますが、大容量の炎が必要な用途には不向きとされています。
拡散燃焼バーナー
拡散燃焼バーナーは、燃料と空気を別のノズルから噴霧させて燃焼させる方式です。
拡散燃焼バーナーの特徴は次のようになります。
- 逆火(バックファイア)が起きにくい
- 輝炎(明るい黄色)になりやすい
- 予熱空気を利用できる
- 燃焼量を広範囲に調整できる
- すすが発生しやすい
拡散燃焼バーナーは燃焼量を広範囲に調整できて、
予熱空気を利用できることから工業用バーナーとして最も多く用いられている。大容量に向いている燃焼方式でノズル型とポート型に分けることができます。
ろうそくの炎などは拡散燃焼バーナーと同じ方式で、炎が明るいことが特徴です。ガスバーナーの使い方を見ると、完全燃焼した際の青い炎とすすが発生する輝炎の違いがよくわかります。
気体燃料の今後の展望
気体燃料は、クリーンエネルギーとしての役割がますます重要視される中で、その利用が拡大しています。
特に、地球温暖化対策やエネルギー効率の向上が求められる現代社会において、気体燃料は持続可能なエネルギー供給の一翼を担っています。
水素社会の実現
水素は、燃焼時に水しか排出しないクリーンなエネルギー源として注目されています。
水素を利用した燃料電池車や発電システムの普及が進む中、水素社会の実現が現実味を帯びています。水素は、再生可能エネルギーとの相性も良く、太陽光や風力で得た電力を使って水素を製造する「グリーン水素」の利用が期待されています。
今後、水素インフラの整備が進むことで、より広範な分野での利用が可能となるでしょう。
天然ガスのさらなる普及
天然ガスは、石炭や石油に代わるクリーンな化石燃料として、今後も需要が増加すると予測されています。
特に、発展途上国や新興市場においては、電力供給の主力としての役割が期待されており、インフラの整備とともに天然ガスの利用が拡大するでしょう。また、LNG技術の進化により、遠隔地や新興市場への供給が容易になり、エネルギーの安定供給に寄与することが期待されています。
再生可能エネルギーとの連携
気体燃料と再生可能エネルギーの連携は、持続可能なエネルギー供給の鍵となります。
例えば、再生可能エネルギーで発電された電力を使って水素を製造し、これを燃料として利用する「パワーtoガス」技術が注目されています。
この技術により、再生可能エネルギーの不安定な供給を補完し、エネルギーの貯蔵や供給の柔軟性が向上します。気体燃料は、再生可能エネルギーとの組み合わせで、さらなる環境負荷の低減に貢献することが期待されています。
まとめ
- 気体燃料は環境にはやさしいが、貯蔵・運搬が難しい
- 気体燃料は災害のリスクも大きい
- 気体燃料には様々な種類がある
気体燃料、液体燃料、固体燃料に関する問題は必ず出題されるので色々な観点から、違いを理解しておく必要があります。