タンクや釜など、ひとつの容器に複数の物体を入れるときにその容器の中が一体何℃になるのかを計算しないといけないことってありますよね?
これを計算する方法の1つにヒートバランスという考え方があります。
今回は、ヒートバランスとは何か?どんな使い方をするのかについて解説していきたいと思います
ヒートバランスとは?
ヒートバランスとは、エネルギー保存則と質量保存則を合わせたもので、1つの系に流入してくる物体の質量の合計と熱量の合計は出ていく物体のそれらと釣り合うという考え方です。
例えば、タンクに80℃の水が100kg/h、60℃の水が40kg/h、40℃の水が30kg/h還ってきて、水位が上がるとポンプから輸送先に送られるような条件を検討してみます。
この時、入ってくる水の質量の合計は
$$100+40+30=170kg/h$$
という事になります。
また、水の比熱を単純に4.2kJ/kgKとすると熱量の合計は
$$(80×4.2×100)+(60×4.2×40)+(40×4.2×30)=48720[kJ/h]$$
になります。
この場合、ポンプから輸送される水の状態は、質量が170kg/h、熱量が48720kJ/hという事が分かります。
よって次の式により輸送する際の水の温度が分かります。
$$\frac{48720}{(170×4.2)}≒68.2[℃]$$
もちろん、実際にはタンクの温度は変動しますが、平均すると68.2℃分の熱量を輸送しているという事になります。
このように、流入する質量と熱量は常に流出する質量、熱量と釣り合うという考え方がヒートバランスになります。
ヒートバランスの使い方
ヒートバランスは様々な場面で非常に便利な考え方です。
先程のように、物質が全て水の場合は比熱が一定なので簡単に計算できますが、物性の違う別の物質を混ぜ合わせる際には単純な計算式では難しい場合があります。
例えば、20℃、500kgの水に0.2MPaGの蒸気を吹き込んで80℃のお湯を作りたい場合を考えてみましょう。
この場合、蒸気の保有する熱量は水よりはるかに大きいですし吹き込まれた蒸気はお湯に戻るので先程の単純な割り算ではなく、方程式が複雑になります。
そこで、ヒートバランスの考え方を使います。
今回の場合、流入する質量は、蒸気の質量をxkgとすると次の式で表せます。
$$500+x$$
流入する熱量は0.2MPaGの蒸気の全熱を蒸気表から2706kJ/kgとすると次の式で表せます。
$$(500×4.2×20)+(x×2706)$$
出ていく熱量の式は水の温度が80℃なので
$$(500+x)×4.2×80$$
流入する熱量と流出する熱量は等しくなるので次の式が成り立ちます。
$$(500×4.2×20)+(x×2706)=(500+x)×4.2×80$$
よってx≒53kgという事が分かります。
このように、どれだけ複数の物質が混合してもそれぞれの熱量と質量が分かれば状態を計算することが出来るというのがヒートバランスの素晴らしいところです。
実務でヒートバランスを使用する場合
実際に実務でヒートバランスを使用する場合は、これまでのような手計算では複雑で面倒なのでエクセルに絵をかきながら計算をします。
エクセルで使用する場合には
- それぞれの物質の質量、熱量を記載する。
- 不明な数値は仮置きで入力する。
- 質量と熱量の釣り合いの式を立てる。
- 仮置きした数値を変化させながら質量と熱量がつり合うポイントを探す。
という流れになります。
どれだけ複雑に見える系でも絵にかいて単純化してしまえば簡単な場合が多いので是非一度やってみてください。
まとめ
- ヒートバランスは質量と熱量の釣り合いの式
- 物質の質量と熱量が分かれば、物質の不明な温度や質量が割り出せる
- 実務ではエクセルを利用して計算を行う
いかがだったでしょうか?
どれだけ複数の物質が混合していても、基本は足し算、掛け算、割り算だけで理解できてしまうのがヒートバランスのいいところです。
是非、職場で「そのタンクのマテバラ計算して」と言われた際の参考にして頂ければと思います。
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