内圧が大気圧以上になる容器には、体積や圧力によって規制内容が変わる「圧力容器」という規定があります。
では、機器の内圧が大気圧以下の真空になる場合はどうなるのでしょうか?
今回は、圧力容器と真空の関係について解説してみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. 真空になる機器は圧力容器になる?
まず、結論ですが真空になる機器は圧力容器にはなりません。但しその機器が真空に耐えられるだけの構造になっているかは確認が必要です。
また、真空でも大気圧以上でも使用する場合は圧力容器に該当する可能性があるので注意が必要です。タンクについている安全弁の設定圧力がその機器の最高使用圧力になります。
一般的には正圧で0.2MPaG程度の圧力が耐えられる機器であれば問題ないとされていますが、この辺りは製造メーカーに確認する必要があります。
日本ボイラ協会の「ボイラー・圧力容器の法的区分(外部リンク)」というページを参考にしてみましょう。
内部が真空になるボイラーはないのでボイラーの適用区分については省きます。
1-1. 第一種圧力容器の適用区分
第一種圧力容器の定義を引用します。
- イ 蒸気その他の熱媒を受け入れ、又は蒸気を発生させて固体又は液体を加熱する容器で、容器内の圧力が大気圧を超えるもの(ロ又はハに掲げる容器を除く。)
- ロ 容器内における化学反応、原子核反応その他の反応によつて蒸気が発生する容器で、容器内の圧力が大気圧をこえるもの
- ハ 容器内の液体の成分を分離するため、当該液体を加熱し、その蒸気を発生させる容器で、容器内の圧力が大気圧をこえるもの
- ニ イからハまでに掲げる容器のほか、大気圧における沸点をこえる温度の液体をその内部に保有する容器
定義を見ると、内部が大気圧以下の真空になる場合は、第一種圧力容器には該当しないという事が分かります。
次に小型圧力容器の定義を引用します。
第一種圧力容器のうち、次に掲げる容器をいう。
- イ ゲージ圧力0.1MPa以下で使用する容器で、内容積が0.2m3以下のもの又は胴の内径が500mm以下で、かつ、その長さが1000mm以下のもの
- ロ その使用する最高のゲージ圧力をMPaで表した数値と内容積をm3で表した数値との積が0.02以下の容器
そもそも第一種圧力容器には該当していないので、小型圧力容器からも外れます。
最後に簡易圧力容器は、特に検査などが不要ですが、次のような定義がされています。
第1条第5号イからニ(上記の「1.第一種圧力容器」を参照。)までに掲げる容器のうち、第一種圧力容器以外のもの(ゲージ圧力0.1MPa以下で使用する容器で内容積が0.01m3以下のもの及びその使用する最高のゲージ圧力をMPaで表した数値と内容積をm3で表した数値との積が0.001以下の容器並びに船舶安全法の適用を受ける船舶に用いられるもの及び電気事業法、高圧ガス保安法、ガス事業法又は液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律の適用を受けるものを除く。)
簡易ボイラーには「簡易ボイラー等構造規格の遵守」が義務付けられています。(簡易ボイラー等構造規格はこちら(外部リンク))
つまり、第一種圧力容器には該当しないけど、構造規定に従って制作しなさいという事ですね。
1-2. 第二種圧力容器の適用区分
次に第二種圧力容器に該当するかを見てみます。
第二種圧力容器の定義は次のようになっています。
第二種圧力容器 ゲージ圧力0.2MPa以上の気体をその内部に保有する容器(第一種圧力容器を除く。)のうち、次に掲げる容器をいう。
- イ 内容積が0.04m3以上の容器
- ロ 胴の内径が200mm以上で、かつ、その長さが1000mm以上の容器
最初の文章をみると真空容器には該当しないということが分かります。
同じく簡易容器についても見てみます。
大気圧を超える圧力を有する気体をその内部に保有する容器(第1条第5号イからニまでに掲げる容器、第二種圧力容器及び第7号に掲げるアセチレン発生器を除く。)で、内容積が0.1m3を超えるもの(船舶安全法の適用を受ける船舶に用いられるもの及び電気事業法、高圧ガス保安法又はガス事業法の適用を受けるものを除く。)
こちらも真空は該当しないですね。
内部が真空になる機器は、圧力容器には該当しないという事が分かりました。
2. まとめ
- 真空機器は圧力容器には該当しない
- 大気圧以上でも使用する場合は、圧力容器に該当する場合がある
- 構造的に真空に耐えられるかどうかは製作者に確認が必要
以上です。真空機器の場合は、破裂した場合にも外部に飛散するという事がないので特に法規制はないという事ですね。
圧力容器についてもっと知りたいという方はこちらの本もおすすめです。