配管から出てくる汚れを鉄錆かどうか見分けるために磁石につくか調べたらわかるかも?と思っていませんか?
でも本当にそれが鉄錆だった場合、磁石につくでしょうか?今回は、鉄錆と磁石について記事を書いてみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. 鉄錆は磁石にくっつくのか?

結論ですが、一般的に配管の鉄錆と言われる赤錆(Fe2O3)は磁石にはくっつきません。そのため、汚れが錆かどうかを判断するのに磁石は適しているとは言えません。
正確には、常磁性体と呼ばれており磁界の中では若干の磁性を示しますが、純鉄のように磁石に勢いよくつくという事はありません。
ただ、実際に磁石を近づけると、一部の汚れは磁石につく場合があります。それは、錆の中に磁性をもつ構造の違う赤錆(γ-Fe2O3)や黒錆(Fe3O4)、酸化されていない鉄が含まれているからです。
鉄錆と一言に行っても複数の種類があり、磁石につくものもあればつかないものもあるという事です。
2. 鉄錆にはどんな種類がある?

鉄錆びには大きく分けて次の4種類があります・
基本的には、鉄が空気中の酸素や水と化学反応を起こし、酸化されたものを鉄錆と呼んでいますが、その組成によって呼び方も特性も変わるという事になります。
この中で、配管の鉄錆として発生しやすい赤錆にも次のような種類があります。
- Fe(OH)3
- Fe2O3・H2O
- Fe2O3(α、β、γ、εの4種類)
- FeOOH
これらは、赤褐色の色をしているため、赤錆と呼ばれますがそれぞれの特性が違います。例えば、同じ赤錆の中でもα-Fe2O3は常磁性体ですが、γ-Fe2O3はフェリ磁性体と呼ばれ磁石につきます。
つまり、赤錆と一言に行っても、成分や構造によって磁性が変わってくるため、磁石につくかどうかで鉄錆かどうかを判断するのは難しいと言えます。
また、赤錆を発生させないように加熱などにより強制的に参加させた際に出来る黒錆(Fe3O4)は磁鉄鋼とよばれ磁石にはつきます。
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3. 鉄錆かどうかを判断するためには?

配管内の汚れが鉄錆かどうかを判断するのに最も確実な方法は成分分析です。
化学的分析方法には様々な方法がありますが、酸化鉄などの固体無機物の場合は次のような方法が一般的です。
- X線光電子分光法
- オージェ電子分光法
- 走査型電子顕微鏡
- エネルギー分散型蛍光X線分析法
- X線高電子分光法
- レーザーラマン分光光度法
- X線解析
様々な分析化学の専門機関があるので、どの方法が最適化は相談により決めればいいかと思います。
また、軽いものと比較するのであれば水に沈めてみて比重を比べるなども簡易的ですが有効な策と言えます。
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4. まとめ
- 一般的な赤錆は磁石にはくっつきにくい
- 構造や組成によっては磁性を持つものもある
- しっかりと判断するためには分析機関への依頼が必要
錆びは結合構造や酸素の数によって性質が全く変わるので注意が必要です。
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