熱力学

【熱力学】水は何度で沸騰する?100℃で沸騰しない水もある?

水は何度で沸騰する?

この質問をされるとあなたはなんと答えるでしょうか?

小学生の時に習ったことを思い出すと大気圧下で水は100℃で沸騰します。

しかし、実際には水の圧力によって沸騰する温度は変わります。圧力を低下させれば100℃以下でも沸騰します。逆に、圧力を上げてやれば100℃以上でも沸騰しません。

そもそも沸騰とはどういう現象のことを言うのでしょうか?今回は水の沸騰する温度について考えてみたいと思います。

1. 水の沸騰とは?

沸騰とは、水が気体の水蒸気に変化することをいいます。そして沸騰が始まる温度のことを沸点といいます。これをもう少し掘り下げてみましょう。

そもそも水はどうして液体として存在できるのでしょうか?

色々な視点がありますが、まず水にはそれぞれ温度によって気体になろうとする圧力というものがあります。これを飽和圧力といいますが、飽和圧力と水の周りの圧力との関係性によって沸騰するかどうかが変わります。

例えば60℃の水の飽和圧力は約20kPaです。一方、大気圧は約101kPaです。水が気体になろうとする圧力が約20kPaで、気体にならないように抑え込む圧力が約101kPaということになります。

この時、水を抑え込む力の方が大きいので60℃、大気圧では水は沸騰しません。

つまり、100℃にならないと水が沸騰しないわけではなく大気圧が水にかかっているため沸騰が始まらないわけです。

沸騰はしませんが、気化しないわけではありません。空気が乾燥していれば少しずつ気化はしていきます。沸騰は熱エネルギーを与えてもそれ以上温度が上がらない点になります。

これが100℃になると、水の飽和圧力が大気圧とつり合い沸騰し始めます。水が沸騰している間、温度が変わらないのは相変化して蒸気になることにすべてのエネルギーが使われるからです。

つまり、水の沸点は周囲の圧力によって決まります。

例えば、山頂でお湯を沸かすと100℃以下でも沸騰します。これは水の気化を抑える周囲の圧力が大気圧よりも低くなることが理由です。

逆に地下深く掘って、地中で水を加熱すると100℃より高い温度で沸騰が始まります。これは周囲の圧力が大気圧よりも高くなることが理由です。

火山の水蒸気噴火なんて聞いたことないでしょうか?

これは、地下水が地中に加圧された状態でマグマに加熱され大気に出てくる際に一気に気化することで爆発するというイメージです。

水の沸点は水の圧力によって変わります。水の圧力が高いほど沸点は高くなり、水の圧力が低いほど沸点は低くなります。

圧力と沸点(飽和温度)の関係は蒸気表を見れば確認することが出来ます。

2. まとめ

  • 水の沸点は圧力によって変わる
  • 圧が高いほど沸点が高くなり、圧が低いほど沸点は低くなる
  • 圧力と沸点の関係は蒸気表で確認できる

水は何度で沸騰するかと聞かれれば、100℃と答えてしまいそうですが実はそうではありません。

圧力によって沸点が変わるということをよく理解しておきましょう。

熱力学

2021/9/2

【熱力学】ヒートバランスって何?計算方法や使い方は?

タンクや釜など、ひとつの容器に複数の物体を入れるときにその容器の中が一体何℃になるのかを計算しないといけないことってありますよね? これを計算する方法の1つにヒートバランスという考え方があります。 今回は、ヒートバランスとは何か?どんな使い方をするのかについて解説していきたいと思います ヒートバランスとは? ヒートバランスとは、エネルギー保存則と質量保存則を合わせたもので、1つの系に流入してくる物体の質量の合計と熱量の合計は出ていく物体のそれらと釣り合うという考え方です。 例えば、タンクに80℃の水が10 ...

ReadMore

熱力学

2021/9/3

【熱力学】キロ、パスカル、圧力の単位が人によって変わる理由

水や蒸気、ガスなどの流体を扱うときに 「その圧力は何キロ?」と言われることもあれば 「その圧力は何メガパスカル?」と言われることもあります。 このように、人によって圧力の単位が微妙に違うので混乱してしまうことがしばしばあります。例えば、「何キロ?」と聞かれているものが「kPa」なのか「kgf/cm2」なのかわからないというところが厄介です。 なぜ人によって圧力の単位の認識が違うのでしょうか?それはSI単位の導入時期と関係がありました。 圧力の単位 圧力を表す単位は大体次のようなものが利用されます。 Pa ...

ReadMore

熱力学

2022/4/12

【熱力学】水の流量を測定する方法

工場やプラントで新しい設備の導入を検討するときや省エネの検討をするときに、今の設備がどれぐらいのユーティリティを使っているのか知りたいことってありませんか? 既に計測機器が設置されていてきっちり管理されている場合は問題ありませんが、ほとんどの場合はそれぞれの設備で流量計測が実施されていることはありません。 今回は、流量計の設置されていない設備で水の流量を計算する方法について書いてみたいと思います。 こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 水の流量を測定する方法 水 ...

ReadMore

熱力学

2022/8/27

【熱力学】ワットとカロリーの変換方法

熱をあつかうときに厄介なのが、エネルギーを表す単位です。カロリー、ワット、ジュール、キロワット、キロカロリー・・・。これらの単位をしっかり理解できれば、エネルギーの考え方を理解できたも同然です。 今回は、ワットとカロリーの変換方法について解説したいと思います。 こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 1. ワット まずはおさらいでワットについて考えてみましょう。 ワットは熱機関の祖であるジェームスワットにちなんでつけられた単位で、1秒当たりに1ジュール生じさせる仕 ...

ReadMore

熱力学

2024/7/13

【熱力学】エンタルピーって何?内部エネルギー、エントロピーとの違いは?

エンタルピーと聞くと何を思い浮かべますか? 物体の持つエネルギー量・・・ エントロピーとは全く別の概念・・・ 難しい数式で表されて良くわからないもの・・・ そんなイメージを持っている人も多いのではないかと思います。 確かに熱力学の教科書を読むと最初の方に何やらよくわからない数式とエンタルピーが一緒に出てきて頭が混乱してきます。でも、実際にはエンタルピーは工業系の実務で使えるとても便利な考え方なのです。 今回はそんなエンタルピーがどんな場面で利用されているのかについて解説します。 エンタルピーとは? エンタ ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

エコおじい

プラント業界一筋のエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。保有資格はエネルギー管理士と電験三種です。

効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-熱力学

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む