流量計

【流量計】カルマン渦って何?原理や活用法について

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一定の速さで流れるある流体の中に障害物を置くと、障害物の後方に渦が発生します。この発生する渦をカルマン渦といいます。

今回は流体力学を理解する上で欠かせないカルマン渦について動画を用いながら解説していきたいと思います。

1. カルマン渦とは?

カルマン渦はハンガリー出身のアメリカの流体力学者カールマン・トードルにちなんで名づけられたもので、流れの中に障害物を置いたり、固体を動かしたりすると後方に交互に渦の列ができる現象です。

掲げた旗が風でなびいたり、川を流れる葉っぱが石の後ろで回転していたり、風が吹くと電線が音をならしたりするのもこのカルマン渦によるものです。

カルマン渦が発生すると、煙突を振動させたり、潜水艦の潜望鏡を揺らしたり何かと厄介なことが多いですが、近年ではカルマン渦の発生を利用して流量計などの制御機器に利用されています。

2. カルマン渦の原理

カルマン渦は、流体が障害物を通過する際に障害物後方で流速が遅くなる領域が発生する事が原因で起こります。

例えば、次の動画を見てください。

煙の中にストローを置くと、ある一定の速さに達するとストローの後ろの流れの遅い領域との速度差が大きくなります。この時発生する摩擦によって流体が引っ張られ、渦が交互に発生します。

カルマン渦の発生を計算でシミュレーションしたものもあったので参考にどうぞ。

3. カルマン渦の活用方法

カルマン渦は時に悪さをすることもありますが、いくつかの良い点もあります。カルマン渦の原理を利用した機器や事故などの事例について紹介します。

日常生活でも意識してみると、様々な場面でカルマン渦は発生していますので少し意識してカルマン渦を見つけてみてはいかがでしょうか?

3-1. 渦式流量計

渦式流量計は、カルマン渦の発生を利用して管内の流量を測定する機器です。流体の流速と渦の周波数が比例することから流量を計算することができます。圧電素子や超音波検出器で周波数を計測します。1960年代から開発が始まり1970年代に実用化されました。

水、蒸気、空気に利用することができます。特徴としては、他のタイプの流量計に比べ圧力損失が少なく、流量測定可能なレンジが広いことが挙げられます。ただ、周辺に回転機などが多く配管自体が振動している場合は誤差が生じる可能性があるので注意が必要です。

流速と発生周波数の関係はストローハル数から計算することができます。ストローハル数は次の式で表されます。

$$St=\frac{fD}{U}$$

  • f:振動現象の周波数(Hz)
  • D:流れの相当長さ(m)
  • U:流れの特性速さ(m/s)

ストローハル数は、レイノルズ数500~200000の範囲では0.2程度であることが分かっています。

ストローハル数(ストローハルすう、英: Strouhal number)とは、流体力学において、流れにある振動現象の周波数を表す無次元量である。(Wikipedia「ストローハル数」より)

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3-2. 野球のナックルボール

野球で魔球と呼ばれるナックルボールもカルマン渦を利用しています。ボールに回転を掛けずに投げると、ボールの後ろにカルマン渦が発生して不規則な揺れが発生します。いかに回転を掛けずに速い球を投げ、ストライクゾーンに入れるかということが重要なようです。

 

(出典:カルマン渦の利用

ボールのスピードが速いほうがボールの周囲を流れる量が増えるので振動しやすくなります。実際の動画があるので載せておきます。

3-3. 橋の崩壊

活用法とは少し違いますが、アメリカ合衆国・ワシントン州のタコマナローズ橋がカルマン渦による振動によって架橋後間もない1940年に崩壊したと言われています。

タコマナローズ橋が崩壊した理由については次のように記載されています。

落橋後の原因調査で、桁が薄い板状になっていると振動が非常に起こりやすいことがわかった。この振動は横風によって桁の上下に発生した空気の渦が桁を上下に振動させ、さらに大きな渦が発生して振幅を増大させる自励振動(発散振動)と呼ばれる。タコマナローズ橋の場合は、桁の薄さと幅員の狭さが相まって剛性が不足し、ついには振幅増大による崩壊を許容してしまったのである。反省から、以後多くの長大吊り橋には、補強のための補剛トラスが備わることとなった。設計者のモイセイフは面目を失ったまま1943年に死去した。(Wikipedia「タコマナローズ橋」より)

瀬戸大橋や明石海峡大橋では、この事故を背景に様々な対策が行われています。

3-4. 鳴門の渦潮

渦潮で有名な鳴門海峡で発生する海上の渦もカルマン渦と同じ原理です。

渦潮は干潮と満潮により海面高さに差が生じ、高い方から低い方へ勢いよく海水が流れる際に周囲の水との速度差によって摩擦が生じます。

これによって海面に渦が出来る現象が渦潮になります。

鳴門の渦潮は、瀬戸内海と紀伊水道の干満差により、激しい潮流が発生することによりできる「自然現象」です。春と秋の大潮時に最大となり、直径20mにも達する渦潮の大きさは世界一といわれています。1日のうちで潮流が最速となる時間帯に最も迫力ある渦潮が発生し、潮の流れない時間帯には渦潮を見ることはできません。見頃の時間は「潮見表」でご確認ください。(出典:渦の道

3-5. 煙突周りのらせん階段

プラントや工場の煙突周りに螺旋階段が併設されているのを見たことはないでしょうか?

あれはメンテナンス用に設置されているだけではなく、煙突周りに螺旋階段を設けることによって、渦の発生が不規則に振動による崩壊を防止するために設置されています。

搭状構造物には、構造物本体から発生するカルマン渦により、渦励振とよばれる振動現象が生じる。渦励振は、比較的低風速で発生する現象であり、構造物が設置される風環境(たとえば、台風や季節風の影響により、共振風速域の風速が比較的継続して吹くような風環境)によっては、常に振動が発生する状況が続くことになる。このような風による振動を制御する方法の一つとして、煙突本体に螺旋状のひれを設置して周期的な渦そのものの発生を抑制する方法(空気力学的対策)がある。(出典:Yahoo知恵袋「煙突のらせん上のフィンの意味は?」

4. まとめ

  • カルマン渦は流体中に障害物を置いたとき、後方に交互に発生する渦。
  • カルマン渦は流体の速度差による摩擦が原因で発生する。
  • カルマン渦は流量計や野球、建築関係で利用される。

渦式流量計の測定原理としてよく出てくるカルマン渦ですが、実は意外なところでよく目にしています。

皆さんも日常生活にカルマン渦が隠れていないか意識すれば、意外なところにカルマン渦が隠れているかもしれません。

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エコおじい

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