伝熱工学

【伝熱工学】夏場の鉄棒が冷たいのはなぜ?

夏場、公園で鉄棒に触れたときに冷たく感じることを不思議に感じたことってありませんか?

公園の木に触ると冷たく感じないのに、鉄棒に触ると冷たく感じます。同じ気温のはずなのに感じ方に差が出るのはなぜでしょうか?

今回は夏場に公園の鉄棒を触ると冷たく感じる理由について解説してみたいと思います。

 

鉄棒が木よりも冷たく感じる理由は次の3つです。

  1. 鉄は木材よりも熱伝導率が高い
  2. 熱伝導率が高いと総括伝熱係数が大きくなる
  3. 総括伝熱係数が高いと熱の移動が大きくなる

専門用語が出てきたので一つずつ見てみたいと思います。

1. 鉄は木材よりも熱伝導率が高い

人が手で触って冷たいと感じるのは「手から熱が移動したとき」といえます。つまり鉄棒を触って冷たく感じるのに木を触って冷たく感じない理由は、鉄棒を触ると熱が移動しやすく、木を触ると熱が移動しにくいということになります。

この熱の移動のしやすさを「熱伝導率」といいます。

鉄と木材の熱伝導率の違いを見てみましょう。

  • 鉄:84W/m2K
  • 木材:0.25W/m2K

なんと300倍以上違います。木製の家は断熱性能が高いなんて言いますが、熱伝導率を見ればその理由が分かりますね。鉄は木材よりも熱が伝わりやすい物質といえます。

【伝熱工学】熱伝導率と熱伝達率の違いは!?2つを合わせたU値の求め方

鉄自体が温度が上がりやすいか、そうでないかは熱容量という別の指標で考えることができます。

【伝熱工学】熱容量って何?大きいものと小さいものの違いは?

2. 熱伝導率が高くなると総括伝熱係数が高くなる

熱が伝わる量を式に表すと次のようになります。

$$Q=AUΔT$$

Qは熱量、Aは伝熱面積、Uは総括伝熱係数、ΔTは物体の温度差を表します。今回の場合ではAは手のひらの面積、ΔTは手のひらと鉄棒の温度差を表します。

鉄と木材の熱伝導率が変わると、総括伝熱係数が変わります。総括伝熱係数(熱貫流率)は次の式で表すことが出来ます。

$$\frac{1}{U}=\frac{1}{h1}+\frac{L}{λ}+\frac{1}{h2}$$

  • h1:熱伝達率 W/m2K
  • L:熱板厚さ m
  • λ:熱伝導率 W/mK
  • h2:熱伝達率 W/m2K

ここで、鉄と木材を比較すると熱伝導率が大きい鉄のほうが総括伝熱係数は大きくなります。

よって鉄棒を触ったときと木を触ったときでは、同じ気温でも鉄棒を触ったときのほうが熱の移動が大きく冷たく感じるという訳です。

【伝熱工学】熱伝導率と熱伝達率の違いは!?2つを合わせたU値の求め方

3. まとめ

  • 鉄棒が冷たく感じるのは熱伝導率が高いから
  • 熱伝導率が高いと総括伝熱係数が大きくなる
  • 熱の移動は伝熱面積、総括伝熱係数、温度差で決まる

日頃の生活で感じる不思議な現象も、熱の移動について考えると分かりやすいですね。皆さんも是非、日常に隠れる現象を数値や式で考えてみてはいかがでしょうか?

伝熱工学についてもっと知りたいという方はこちらの本もおすすめです。

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エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



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