物体の流れを止めるバルブには様々な種類があります。どのバルブも「流れを止める」という目的は同じですが、場合によってどのバルブを選択すればいいか迷うことってありませんか?
今回は、そんなバルブの中でも代表的なボールバルブとグローブバルブの使い分けについて解説したいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもご覧ください。
ボールバルブとグローブバルブ
ボールバルブとグローブバルブの特徴を比較すると以下のような違いがあります。
ボールバルブ | グローブバルブ | |
全開、全閉 | 90°回すだけ | 何度も回して全開、閉する |
流量調整 | 難しい | 適している |
圧力損失 | 小 | 大 |
ボールバルブとグローブバルブでは弁内部の構造が違います。
ボールバルブは中に穴の開いた球が入っており、その球を90°回転させることによって開閉を行います。中の構造については下のメーカーのホームページのバルブの基礎という項目を参照にしてください。
一方、グローブバルブはバルブ内がS字状になっており、弁体をSのくびれの箇所に押し付けることで開閉を行います。このような内部構造から、同じ量の流体が流れたとき、ボールバルブに比べ、グローブバルブのほうが圧力損失が大きくなります。
圧力損失が大きくなると、流速が大きくなった際に欲しい圧力が得られなくなり、機器の性能を発揮できないなどの問題が発生します。グローブバルブを選定する際はバルブの圧力損失も考慮しながら流体の圧力を決めてやる必要があります。
ボールバルブとグローブバルブの使い分け
このような構造の違いから、ボールバルブとグローブバルブの使い分けは次のようになります。
ボールバルブが適している場合
- 頻繁に全開、全閉の操作をする。
- 流体を完全に遮断したい。
- 圧力損失を少なくしたい。
ボールバルブは基本的に全開または全閉で使用します。そのため開度調整を目的とした用途には向いていません。一方「全開→全閉」または「全閉→全開」までハンドルを90°回すだけなので、瞬時に流体を止めることができます。
また、構造状圧力損失が少ないことから、常に全開で使用する場合はボールバルブが適しています。具体的には次のような場所でのボールバルブの使用が適しています。
- 常時運転を行う機器の入出口
- 緊急時に瞬時に流体を止める必要がある場所
似た用途で全開、全閉で使用するバルブにゲートバルブがあります。こちらは「全開⇔全閉」までハンドルを何度も回転させる必要があります。 一方、大口径の場合はボールバルブでは開閉に必要な力(トルク)が大きくなるためゲートバルブの方が適しています。
グローブバルブが適している場合
- 流量を調整したい。
- 微開状態で使用することがある。
- 多少の圧職損失が問題にならない。
グローブバルブは主に流量調整を行いたい場合に使用します。
また、一見グローブバルブと構造が似ているゲートバルブですが全開以外で使用した場合、弁体が徐々に削られ、全閉時のシール性が悪化するため流量調整には不向きです。
よって流量を調整したり、微開運転させる可能性がある場合はボールバルブやゲートバルブではなくグローブバルブを設置するほうが良いと言えます。
具体的には、次のような場所でグローブバルブの使用が適しています。
- 減圧弁、熱交換器など主要な機器のバイパス
- 水道の蛇口、エアの止め弁など
機器へバイパスラインを設ける場合、バイパスラインにグローブバルブを設置し、機器の前後にはボールバルブやゲートバルブを使用する場合が多いです。
ゲートバルブと似た構造のものでバタフライバルブもあります。バタフライバルブの場合は流量調整はできますが、調整感度はグローブバルブより悪く、150A以上の大口径の配管などに使用することが多いです。
バタフライバルブについては次の記事にまとめてあるので合わせてご覧ください。
【バルブ】バタフライバルブとは何か、特徴や選定のポイントについて解説します
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まとめ
- ボールバルブは全開、全閉のみの用途で主に装置の入口、出口に使用する。
- グローブバルブは開度調整が必要な個所に使用する。
- グローブバルブはフルポートではなく圧力損失が大きいので注意する。
バルブなんてどれでもいいと考えがちですが、色々な種類があるということは、それぞれに使い分けが必要という意味があります。
安易に選択せずに、実際に使用するときを思い浮かべながら、より最適なバルブを選ぶように心がけてはいかがでしょうか?