機器を新たに導入する際、「防爆の種類って何を選べばいいのだろう」となった経験のある方は多いはず。
工場内の他の機器を見て、同じ規格を選ぶというのも手ですが、今回は防爆規格についてわかりやすく解説したいと思います。
現場で使用されるポンプなどの電動機や計装機器に特に関係する、「安全増防爆」と「耐圧防爆」の違いについて解説します。
こちらは動画でも解説しているので、動画がいいという方はこちらもどうぞ。
防爆とは
防爆電気機器は工業分野の様々な現場で使われています。
こうした現場では可燃性ガスが存在する中で、火花が少なからず発生する機器を使用するため、着火して爆発しないように特殊な対策をしたものが使用されます。このような機器の構造を防爆と呼びます。
爆発とは可燃性ガス・酸素・着火源の3つが揃った時に起こるため、そのいずれかが遮断されれば爆発は起こりません。
実際の防爆構造としては、発火源を無くす、爆発に耐える容器で覆う、ガスや酸素濃度を下げる、発火温度に達しないようにするなど様々な対策が取られます。
各々の対策に対して名称(耐圧防爆や安全増防爆など)が付いているというわけです。
家庭用にはめったにみることはないですが、現場の機器で「d2G4」などの記号がついた機器を見たことがあるのではないでしょうか。
防爆も例に漏れず、規格があります。日本で見かけるものとしては「構造規格」と「国際規格」の2種が主だと言えます。
構造規格
日本国内において制定された「電気機械器具防爆構造規格」が正式名称で、危険場所では検定を受けた防爆機器を使用するように定められています。
「d2G4」というように4文字で表されます。
1桁目は防爆構造の種類(例えばdは耐圧防爆)、2桁目は爆発等級(1〜3)、3−4桁目は発火温度(G1〜G6)を表しています。
周囲に存在する爆発性ガスによって変わり、例えばアセトンなら「1 G1」という分類になります。
国際規格
IEC(国際電気標準会議)が定める国際規格に基づいて作られた防爆電気機器の規格です。
海外メーカー品を使うときによく見かけます。「Ex d IIB T5」のような書き方をします。
Exは防爆の意味、1桁目は防爆構造の種類(例えばdは耐圧防爆)、2桁目はガスの最大安全すきま(IIA〜IIC)、3桁目は温度等級(T1〜T6)を表します。
周囲に存在する爆発性ガスによって変わり、例えばアセトンなら「IIAT1」という分類になります。
両規格の表記の意味を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
⇒ 参照:株式会社ノーケン 防爆規格(外部リンク)
安全増防爆とは
「あんまし」という言葉に省略されてよく使われます。
その名の通り、通常の機器よりも安全度を増加させた構造をしています。正常な使用中には火花を発生させることがない電気機器に適用されます。
温度が上がりにくい金属材質、防爆構造のコネクタ(ケーブル接続口)、異物の侵入を防止する保護構造(パッキンなど)など、安全増防爆の規格を満たすための部品が使用されています。
先の規格での書き方としては、両規格共にeで表されます。
耐圧防爆とは
一方で耐圧防爆とは、電気機器内で爆発しても容器が爆発に耐えるので外に引火しない構造のものです。
耐圧防爆の電気機器の端子箱をイメージしてもらいたいのですが、あの頑丈な金属の箱内に万が一、可燃性ガスが流入してかつ端子付近で火花が散った時でも、爆発の圧力に耐えられるということです。
内部での爆発を前提に設計された丈夫な外箱、火炎が外に出るまでに十分温度が下がるような長さの接合部、耐圧防爆規格を満たしたコネクタなどが使用されます。
先の規格での書き方としては、両規格共にdで表されます。
安全増防爆と耐圧防爆の違い(比較表)
| 項目 | 安全増防爆 | 耐圧防爆 |
|---|---|---|
| 記号 | e(構造規格・国際規格とも) | d(構造規格・国際規格とも) |
| 考え方 | 火花や高温部を「出さない」ようにして、着火源をつくらない | 内部で爆発しても容器が耐え、炎を外に「出さない」 |
| 使える機器 | 正常な運転中に火花や高温部を生じない機器(かご形モーター、端子箱、照明器具など) | 正常な運転中に火花を出す機器も含む(開閉器、スイッチ、制御盤など) |
| 容器 | 保護構造(パッキンなど)で異物や水の侵入を防ぐ。比較的軽い | 爆発の圧力に耐える頑丈で重い容器。接合部のすき間と長さが決まっている |
| 主な設置場所 | 2種場所が中心 | 1種場所・2種場所 |
安全増防爆と耐圧防爆の使い分け
両者の構造上の違いがわかったところで、使い分けはどうするのでしょうか。
危険な可燃性ガスが存在する現場は、3つに区分けされます。構造規格と国際規格で多少変わりますが、大まかな説明をします。
0種場所(ゾーン0)
爆発性雰囲気が長時間存在する、と説明されますがガソリンタンクの中などが当てはまります。常に燃えるもので満たされた空間ということです。
1種場所(ゾーン1)
爆発性のガスが通常使用時にも存在する可能性がある場所です。ガスのダクト付近や、タンクなどの開閉部付近が当てはまります。
2種場所(ゾーン2)
装置が故障するなどイレギュラーの事態に爆発性雰囲気になる可能性がある場所をさします。
例えばガスボンベ設置箇所(運搬時に倒すリスク)、ガス用の換気扇(故障・異常時のリスク)、1種場所につながる扉(開閉時のリスク)の付近がこれに当てはまります。
3つの区分を説明しましたが、現場によって建屋ごと部屋ごとに分けられていたり、同じ空間の中でも複数が共存したりする場合があります。
例えば可燃性ガスを出す製品タンクの開閉口付近は1種で、その他の部分は2種など。(街中のガソリンスタンドでは0、1、2種のエリアが敷地内に指定されそれぞれに適した機器が施工されています。)
危険場所の区分と、使える防爆構造(ガス・蒸気の場合)
※国内の構造規格による安全増防爆は、1種場所では機器によって選定例がない、またはなるべく避けたい扱いになります(下の説明を参照)。危険の度合いは 0種>1種>2種 で、危険な場所ほど使える構造が少なくなります。
使い分けですが、実はこの3種の場所ごとに使用可能規格が分けられています。
- 0種場所→本質安全防爆*
- 1種場所→本質安全防爆(ia・ib)、耐圧防爆、内圧防爆、安全増防爆など
- 2種場所→1種場所で使える防爆構造すべて(非点火防爆構造なども可)
というふうに覚えておいてください。(*先に触れませんでしたが、発火源を作らない回路構造・低電流低電圧にしたもので理論上発火しません)
ただし、安全増防爆の1種場所での扱いには注意が必要です。国際規格(IEC)に合わせた基準では、Ex e(機器保護レベルGb)は1種場所に使える構造とされています。一方で、国内の構造規格による安全増防爆は主に2種場所向けとされ、1種場所では「なるべく避けたい」扱いになったり、照明器具のように1種場所では耐圧防爆しか選定例がなかったりします。1種場所に置く機器は、検定に合格した内容(記号)と工場の基準を必ず確認しましょう。ポンプなど2種場所の機器は、コスト面から安全増防爆が選ばれることが多いです。
価格は機器の種類や大きさによって変わるため、「どの構造が必ず高い」とは言えません。まずは設置場所の区分で使える構造を絞り、その中から価格や保守のしやすさで選ぶのが基本です。
参考:労働安全衛生総合研究所「工場電気設備防爆指針(国際整合技術指針)」、パナソニック 防爆照明器具の選定(危険場所別選定例)
まとめ
- 安全増防爆と耐圧防爆の違いは内部の構造による。
- 現場で扱うガスによって危険場所の分類が変わる。
- 機器の防爆規格を選ぶ時は設置場所の分類を調べる。
今回は「防爆とは」から始まり現場でよく見る2種類の防爆規格について説明しました。紹介した2つの他にも防爆規格はあるので調べてみてください。




