現場で制御弁の選定を行うとき、必ず出てくるCv値。詳しい原理はよく分からなくても、仕事で使っていると慣れてくるものだと思います。ですが、Cv値の選び方はいつも迷ってしまう方が多いのではないでしょうか?
今回はCv値の選定基準と、選定間違いをしてしまった際に生じる問題をまとめました。
Cv値とは
バルブは配管サイズによって内径が当然変化します。また、例えば玉型弁と仕切弁のように、バルブの内部構造は種類によって異なります。さらに世界中に多種多様なメーカーがあるわけですから何か流れる量に基準が欲しい、というわけでCv値という基準が使われています。
Cv値とは、ある基準で流体を流した時に流れる流量を表した数値で、語源はValve Flow Coefficientを省略した記号です。他にもKv値やAv値というのもあります(使用する単位が異なります、調べてみましたが語源は辿れませんでした)。
液体のCv値を決める数式は、
$$Cv = Q ×√(G / Δp)$$
Cv : Cv値、Q : 流量(gal/min) (1ガロンgallonは約3.8L)、G : 比重(lbf/gal) (1ガロンあたりの重量ポンドlbf、水の場合は1)、Δp : 差圧(lbf/in2) (1平方インチinあたりの重量)
で表されます。
流す流体の条件は、華氏60℉(=15.5℃)の流体を1lbf/in2(=6.9kPa)の圧力差で流した時という基準です。見て頂いたようにアメリカでよく用いられるヤード・ポンド法で記載されますので、この時点で日本人にはわかりにくいですよね。ある決まった隙間を、ある圧力差で流れる時の流量は同じだということです。
ちなみに、m3/hなど見慣れた単位を使った式や、ガスや蒸気のような気体用の換算式はたくさんありますので、是非調べてみてください。またブラウザ上のソフトやアプリなどで自動計算できますので、式自体を覚える必要はありません。換算する際は、各パラメーターの単位に注意してくださいね。
Cv値の選定方法
Cv値が何かなんとなく分かったところで、次は正しい選定の仕方について学びます。
順序としては、流量・圧力差を確認する、Cv値を計算する、バルブCv値を選定する、の3ステップです。
流量・圧力差を確認する
1つ目の「流量・圧力差を確認する」は最も重要なプロセスと言っても過言ではありません。既設設備であれば、流量計・バルブ前後の圧力差を確認しましょう。
流量計がなければ既設バルブのCv値と圧力差から、現在の使い方で流れている流量を計算します(制御弁や玉型弁などのバルブは、メーカーカタログにサイズごとのCv値が記載されていますので、取扱説明書やネットカタログを確認しましょう)。
新設の場合は、必要な流量や熱量を算出して、安全を見て流量を決めましょう。必要量を時間で割って平均値を出すのが一般的です。
対象がプロセス(製品など)かユーティリティ(加熱・冷却を行う水や蒸気など)かで計算で考慮する点が変わるかと思います。
差圧について、特に出口側の圧力は場合によって異なります。例えば水を一定量タンクに入れるなどであれば出口圧力は大気圧ですし、蒸気の圧力コントロールを考えるのであれば出口圧力は制御圧力となります。
2つ目の「Cv値を計算する」ですが、作業をする上では簡単で、1で決めた数値をソフトに入力すればO Kです。
参考:株式会社フジキン Cv値計算・流量計算ツール(外部リンク)
バルブCv値を選定する
最後の「バルブCv値を選定する」は注意が必要な点です。計算Cv値をそのまま選ぶと余裕がないので、より大きなCv値のバルブを選んでください。
その基準ですが、バルブCv値の80%よりも計算Cv値が大きくならないように選定する、と考えてください。そのバルブCv値を満たしたバルブサイズを選定することになりますので、場合によっては前後配管より大きくなったり小さくなったりします。
また制御弁の特性にはリニア特性とEQ%(イコールパーセント)特性という2種類があり、(詳しくはここでは触れませんが)E Q%の場合、弁開度が80%の時に流量が最大流量の50%となります。バルブCv値が計算Cv値の2倍で選定した時に、弁解度80%で実制御できるようになり安定した制御が期待できます。
【制御弁】イコールパーセント特性とリニア特性の使い分けは?
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Cv値の選定を間違えた場合
選定したCv値が小さすぎた場合
万が一、正しく選定できなかった場合はどんなトラブルが予想されるでしょうか。
まずは小さすぎた場合。バルブ内の隙間が小さいわけですから、必要流量が確保できません。結果として、工程時間が延びてしまったり、バルブ内の流速が上がりすぎることによるエロージョンや騒音が発生したりする恐れがあります。こういったことは流量試算を間違えていた時や、つくる製品の種類や量が変わった時に起こりえます。
選定したCv値が大きすぎた場合
大は小を兼ねると思いがちですが、そうでもありません。大きすぎるCv値のバルブで小流量を制御しようとした場合、わずかな操作量でも必要以上の量が流れたり、ON/OFF制御に近いような動きになったりする恐れがあります。
またサイズが大きいと当然コストも上がります。制御弁で大口径になると価格も跳ね上がりますので、現実的なサイズを選定してください。
まとめ
- Cv値の選定は計算値より大きいものを選ぶ
- 選定するCv値は大き過ぎても良くない
Cv値の選定方法について理解できたでしょうか?
実際に制御弁を選定する場合は制御弁メーカーの方にも相談しながら、適切なCv値のバルブを選定しましょう。