制御弁

【制御弁】タービンバイパス弁とは何か、役割、作動する状況とは

プラントの安定稼働を実現させる弁の1つにタービンバイパス弁があります。

この記事ではタービンバイパス弁とは何か、その役割や作動する状況について解説します。

タービンバイパス弁とは

タービンバイパス弁とは主蒸気から蒸気タービンをバイパスさせて直接復水器へ接続するラインに設置する制御弁のことを言います。タービンバイパス弁から主蒸気をバイパスさせ、復水器へ送ることを「蒸気を復水器へダンプする」といいます。

一般的にはタービンが何らかの事情によりトリップした場合に開弁させ、主蒸気配管の急激な圧力変動を抑えることを目的に利用されます。

簡易な図で表すと次のようになります。

バイパスされた主蒸気は復水器で冷却され、復水に戻された後、ボイラー給水として再利用されます。冷却された熱は冷却塔で冷やされ、大気に廃棄されます。

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タービンバイパス弁を設けるメリット

タービンバイパス弁を設けることで次のようなメリットが得られます。

一次側の圧力が安定する

タービンバイパス弁を設け、一次側の圧力の変動を抑えることでボイラーの圧力を安定化させることが出来ます。

主な制御としては、一次側の圧力が設定圧力以上になると開弁するというのが一般的です。なお、放蒸弁も同様の役割を果たしますが、放蒸弁よりも先に作動させることで、大気に放蒸する量を減らします。

水を再利用できる

タービンがトリップした時、タービンバイパス弁を設けずに放蒸弁で蒸気を大気放出することでボイラーの圧力上昇を抑えることは出来ますが、その場合、放蒸した分の給水が必要になります。

ボイラーに給水できる水の量は上流側の水処理設備の能力により決まるため、これらの能力が不足する場合は放蒸できる蒸気の量を制限しなければいけません。

タービンバイパス弁を設ければ、バイパスさせた蒸気を復水として再利用できるので上流側の設備に負荷をかけることがなく運転を継続できます。

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タービンバイパス弁を設けるデメリット

一方、タービンバイパス弁を設けることで次のようなデメリットが出てきます。

復水器の負荷が上がる

本来、復水器はタービンで仕事をした蒸気を凝縮させるために利用するため、タービンバイパス弁を設けることで仕事をしていない主蒸気が流入することになり復水器の負荷が上がります。

これにより、復水器の必要な伝熱面積が大きくなる場合があります。

冷却塔の負荷が上がる

復水器で冷却された熱量は全て冷却塔で廃棄されるため、冷却塔の能力が不足すると冷却用の循環水温度が上昇していくこととなります。

これらを防止するために十分な能力を持った冷却塔を選定する必要があります。

設備のコストが上がる

上記のように、タービンバイパス弁を設置すると、弁が作動した場合を想定した機器選定が必要となるため、設備のコストが上がる可能性があります。

まとめ

  • タービンバイパス弁は主蒸気から蒸気タービンをバイパスさせて直接復水器へ接続するラインに設置する制御弁。
  • タービンバイパス弁の役割は一次側の圧力を安定させ、水を再利用すること。
  • タービンバイパス弁を設置することで、設備の負荷が上がり、イニシャルコストが上がる場合がある。

燃料を使って発生させた主蒸気に仕事をさせずに復水器で冷却すると考えると非常に無駄に思える設備ですが、タービンバイパス弁はプラントの安定稼働のためには必須となる場合がある弁の1つです。

制御弁

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エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



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