プラントの設計を行う担当者と仕様について話をする場合には必ずと言っていいほど、デビエーションリスト(通称:デビクラ)の作成を求められます。
この記事ではデビエーションリスト(デビクラ)とは何かについて解説してみたいと思います。
デビエーションリスト(デビクラ)とは?
デビエーションリストは、購買仕様書に対してメーカ側が「対応できるものと対応できないもの」をリストにしたものでクラリフィケーションリストとも呼ばれます。
プラントでは、配管からバルブや計装機器などが膨大な数取り付けられています。これらの機器の仕様を統一するために各プラントには設計基準が決められており、プラントメーカーは各機器の購買仕様書によって仕様の統一を行います。
ただ、設計基準はすべての機器に共通のため仕様書の内容は非常に細かく対象の機器には直接関係のない内容まで盛り込まれています。
例えば、溶接のない部品に対して溶接後の検査の方法が書いてあったり、小さな部品に対して機器の名称を記載するタグをつける要求があったりします。これらの細かい要求に対してメーカー側と「その仕様が本当に必要かどうか?」を検討するためにデビエーションリストが使用されます。
ちなみに英語のdeviationとは「逸脱する」という意味の単語で、デビエーションリストとは仕様から逸脱するリストということです。
デビエーションリストの目的は、設計側とベンダー側でお互いの認識をすり合わせることです。デビエーションリストがなければ、細かい仕様でも反映されていないというクレームにつながり、最悪の場合、裁判等に発展する危険性があります。
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デビエーションリスト(デビクラ)を作成するメリット
デビエーションリストを作成することには次のようなメリットがあります。
所掌範囲の明確化
デビエーションリストを作成することで、機器の手配や工事などの範囲が明確になります。
例えば、設計担当者は購買仕様書により発注していたつもりでもベンダー側は見積もりに含めていないなどのトラブルを防止できます。手配漏れなどが起こると追加費用や納期費用などの調整が必要となるため、デビエーションリストによりこれらを事前に防止することが重要です。
機器納入後のトラブル防止
デビエーションリストは、機器やシステムの納入後に発生するトラブルを未然に防ぐ役割も果たします。
納入時に仕様や基準から逸脱した点を記録し、適切な対策を講じることで、運用開始後の不具合を減少させることができます。これにより、納入後の修正や対応にかかる時間とコストを削減できます。
検査内容などの明確化
デビエーションリストを使用することで、検査内容や基準が明確になります。
例えば共通仕様により検査基準を明確に決めている場合でも、ベンダーにより工場側で対応可否が異なるため、認識違いがないように事前にデビエーションリストにより、検査内容の合意を得ることが重要です。
これにより、後々トラブルが発生した際に、検査の精度の認識違いなどのトラブルを防止できます。
デビエーションリスト(デビクラ)活用の流れ
購買仕様書から実際の発注までの流れは次のようになります。
このように、細かい仕様書に対して対応できるものと出来ないもの、また有償か無償かを分類してお互いに合意を取ります。それをしっかり文面に残して記録しておくためにデビエーションリストが必要になります。
文章で残しておくことで、何かあった際の責任範囲が明確になるので後々揉めることがなくなります。
デビエーションリストの作成方法やフォーマットについては各会社でマニュアルやルール持っていることが多いと思いますので上司に相談すればいいかと思います。
また、仕様書は非常に細かいことが多くデビエーションリストの作成も自社内の制作方法などを熟知していないとわからないことが多くあります。若手のうちは、詳しいベテランの話を聞きながら作成することがトラブル防止につながるので、是非相談しながら作成を進めてください。
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まとめ
- デビエーションリストは仕様書から外れる項目をリストにしたもの。
- クラリフィケーションリストとも呼ばれる
- 作成後は発注側と受注側で合意を取る。
- 作成するには自社製品に関する深い知識が必要。
デビエーションリストの作成は、若手のころは慣れるまで非常に時間がかかりますが、一つ一つ丁寧に確認しながら進めていきましょう。
プラント関係の仕事は細かいルールが多いですが、それだけ危険で規模の大きいものを取り扱っているというわけです。