勉強していると、電気と磁力は互いに影響を及ぼし合うことを学ぶことになりますが、そんな時に出てくるのが「誘電率」と「透磁率」だと思います。
今回は間違えやすいこの2つについて、できるだけ簡単に説明します。
間違えやすいのは漢字が似ているというだけでなく、電磁場の解説は電気と磁界の話が同時に出てくる、関係式が似ているということが考えられます。しっかり区別して覚えましょう。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
誘電率とは
電気を誘導する割合、絶縁体が蓄える電気量の大きさを表しています。誘電率が大きいほど、蓄えられる電気量が多いということを示します。もう少し詳しく説明します。
絶縁体(誘電体)に電場をかけると、電荷が正と負に偏ります。この現象を分極と呼び、この分極の度合いを誘電率と呼びます。
極板面積S、極板間隔dのコンデンサーを考えたときに、電気容量C(電荷を蓄える能力)を以下の式で表します。
$$C=ε\frac{S}{d}$$
電極同士の距離あたりの極板の面積にかかる係数が誘電率ε(エプシロン)です。真空中の誘電率をε0で表し、他の物質が真空と比べてどの程度電気を通しやすいか表す指標として比誘電率εrを用います。
$$εr=\frac{ε}{ε0}$$
εは物質固有の誘電率で、上式は単に割合を表しているだけです。例えば、空気の比誘電率は1.0、ゴムが2程度、ガラスが10、コンデンサーに用いられるチタン酸バリウムは5000ほどということが知られています。
業務的には比誘電率のほうが多く使われる言葉かと思います。
透磁率とは
物質の磁化のしやすさを表す指標です。磁石を鉄にくっつけてしばらくおくと、離した後もしばらく磁力を維持します。
どんな物質にも磁化の影響を受けることが知られていて、その度合いを数値にしたものが透磁率です。
磁束密度B(物質によって変わる周囲の磁場の様子を表す)と磁場の強さH(距離あたりの磁極の強さを表す)の関係を表したのが以下の式です。
$$B=μH$$
この時のμのことを透磁率と呼びます。真空の透磁率をμ0としたときに、各物質の透磁率μがどの程度か表した数値のことを比透磁率μrと呼びます。
$$μ=μrμo$$
例えば、水や空気は1、金属でも磁化しないアルミニウムや銅は1、炭素鋼は100、純鉄は5000ということが知られています。
誘電率と透磁率の関係
2つの指標には以下の関係があります。
$$ε0μ0=\frac{1}{c^2}$$
cは電磁波の速度です。詳しくは「マクスウェルの方程式」と調べてみていただきたいのですが、電磁気学の研究の中で導かれた関係式で、cは後に光速度と同じ(つまり光は電磁波の一種である)ということが証明されました。
まとめ
- 誘電率は、電気を蓄えられる度合いを表す。
- 透磁率は、磁化の影響の受けやすさを表す。
比較的短い解説になりましたね。こうしてまとめてみると、漢字が近いだけで、異なるものを表していることがわかります。
英語だと誘電率がelectric permittivity、透磁率がmagnetic permeabilityなので、英語圏の方も同じ悩みを持っているかもしれませんね。
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