前回、蒸気の圧力を下げると省エネになるのか?という記事で間接加熱の場合の計算を記載したので、今回は直接加熱についても書きたいと思います。
蒸気で直接加熱する場合の計算方法①
まず、上の図のようにタンクに水をため、直接蒸気を投入して加熱する場合を考えます。この時、タンクには温度センサーを設置し、制御弁によってタンク内の温度を調整します。
次の条件で計算を進めていきます。
10℃の水、10トンを60℃まで加熱するのに0.3MPaGの蒸気はどれだけ必要か
直接蒸気を投入して計算する場合は間接加熱のように単純な計算ではなく、熱収支の考え方で計算することが出来ます。
①質量の関係式を作る
まず、質量の関係の式を作ります。蒸気の質量をx[kg]として60℃の温水をy[kg]とすると、yはもともとの水に蒸気分が足されたものになるので、次の式で表すことが出来ます。
$$y=x+10000・・・①$$
②熱量の関係式を作る
質量と同様に熱量に関しての式を作ります。0.3MPaGの蒸気の全熱は2737[kJ/kg]、水の比熱を4.186[kJ/kgK]とすると、熱量の式は次のように表せます。
$$2737×x+10000×4.186×10=y×4.186×60・・・②$$
ここで間接加熱と大きく違う点は、計算に全熱を使うということです。間接加熱と違い、全て温水に入れるので潜熱ではなく全熱を使います。
未知数はxとyの2つで式が2つの連立方程式が出来るので、両方が求まります。今回の条件で計算すると次の答えが得られます。
$$x=842$$
$$y=10842$$
よって、蒸気が842kg必要ということが分かります。蒸気自体は凝縮してタンク内で温水となるため、その分水量が増えることになります。タンク内に水をためて保温をしているだけの場合は、その分はオーバーフローさせることになります。
蒸気で直接加熱する場合の計算方法②
別のやり方として、欲しい熱量を蒸気の有効熱量で割るというやり方もあります。例えば、先程の条件で温水が欲しい熱量としては次のようになります。
$$10000×4.186×(60-10)=2093000[kJ]$$
0.3MPaGの蒸気の中で有効に利用できる熱量は60℃の温水以上の熱量のみなので有効熱量は次の式で表せます。
$$2737-(4.186×60)=2486[kJ/kg]$$
よって必要な蒸気量は
$$2093000÷2486=842[kg]$$
という形で同じ答えを算出することが出来ます。どちらのやり方でもいいですが、最初の計算の方が色々なパターンでの応用が出来るので考え方としてはお勧めです。
間接加熱で加熱をした場合
同じ条件で間接加熱で計算をした場合は、0.3MPaGの潜熱は2133kJ/kgなので
$$10000×4.186×(60-10)÷2133=981[kg]$$
となり、直接加熱よりも16%程度必要な蒸気量が増えることになります。似ているようで考え方が違うので、計算する際は注意が必要です。
間接加熱の場合は主に飽和蒸気として計算します。
「飽和蒸気」って何?という方はこちらの記事を参照ください。
⇒ 参考:飽和蒸気圧とは?求め方と入試の計算問題の解き方を徹底的に解説!(外部リンク)
まとめ
- 直接加熱の蒸気量は2つの方法で計算できる。
- 間接加熱と比べると使用する量は少なくなる。
- 考え方が違うので注意が必要。
どちらの方法が良いかは場合によりけりですが、熱収支の考え方は色々なところで使えるので覚えておくと便利ですね。