水、ガス、蒸気などの配管を設計する際には、配管内の流体の流速が重要です。
流速が遅い分には問題ありませんが、速すぎると様々な問題を引き起こします。
今回は、配管内の流速が速いとどんな問題が起きるのかについて詳しく解説してみたいと思います。
1. 流速が速いと何が問題?
配管内の流速が速いと次のような問題が発生します。
1-1. 圧力損失が大きくなる
まず、圧力損失が大きくなり、使用先で欲しい圧力が得られなくなる可能性があります。
圧力損失は、 配管壁面と流体との摩擦によって発生し、 流速の二乗に比例して増加していきます。
圧力損失によってほしい圧力が得られなくなると、水の場合は必要な流量が確保できなくなり、 蒸気の場合は温度が低下してしまいます。
そのため、使用先までの距離を考慮して圧力損失が大きくなりすぎないよう注意が必要です。
1-2. 減肉が発生する
流速が速すぎると、 物理的な侵食作用が働き、配管の内壁を削り取っていきます。特に、流速が変化する配管の曲がり部などで発生しやすく、配管穴開きの原因になります。
配管の曲がり部で穴開きが発生した場合は、流速を疑ってみるのもありかと思います。
1-3. 振動する
流速が速すぎると、各所で振動が発生し、それが共鳴することで大きな配管の揺れに繋がる可能性があります。エアヒーターなどで風速が速くなりすぎると、振動によるダクトが外れる原因にもなるため、注意が必要です。
また、振動が日常的に発生すると、配管の荷重を支えるサポートから外れる場合もあり、工場の安定操業にダメージを与えます。
2. 流速を抑える方法は?
配管内の流速は、流体の体積と配管径によって決まります。そのため、流速を抑える方法として、次の2つがあります。
2-1. 配管径を大きくする
配管径を膨らませれば、管内の断面積を大きくできるため、同じ流量でも流速を抑えることができます。
配管断面積が、2倍になれば流速は半分になります。ただし、過剰に大きくしすぎると配管コストが大幅に上がるので注意が必要です。
2-2. 流量を減らす
同じ配管径で流速を抑えるには、流量を減らすのも方法の1つです。
流量を減らすには、バルブを絞ったり流量調整用のオリフィスプレート(穴の開いた板)を入れてやるのが有効です。配管の施工しなおしが大変な場合はこちらの策が有効です。
-
【配管】配管流速の計算方法
3. まとめ
- 流速が速いと圧力損失、減肉、振動が発生する。
- 流速は流量と配管断面積で決まる。
- 流速を抑えるには配管径大きくする方法と流量を減らす方法がある。
以上です。
どの程度の流速が一般的かは、流体によって変わるので一概には言えませんが、水だと大体2~3m/sといわれています。ただ、使用用途によって最適な値は変わるので圧力損失と流速の両方の値を見ながら設計を進める必要があります。
配管
2024/7/7
【配管】ラプチャーディスクを設置する目的、安全弁との違いは?
産業施設やプラントの運用において、安全性を保つための圧力管理は非常に重要です。 過剰な圧力が発生すると、設備の損傷や事故の原因となり得るため、適切な圧力解放装置が必要です。 ラプチャーディスクと安全弁はその代表的な例ですが、それぞれの特徴や設置目的には明確な違いがあります。本記事では、ラプチャーディスクの設置目的と安全弁との違いについて解説します。 ラプチャーディスクとは ラプチャーディスクは、過圧保護を目的とした安全装置の一種です。主にプロセス産業や化学工場など、高圧の流体を取り扱う場所で使用されます。 ...
ReadMore
配管
2024/7/5
【配管】ストレーナに差圧計をつけるのはなぜ。設置するメリットは?
ストレーナは、流体システムにおいて異物や不純物を取り除くために使用される重要な機器です。 その中で、ストレーナに差圧計が設置されているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。本記事では、ストレーナに差圧計をつける理由について解説します。 ストレーナとは ストレーナは、流体(液体や気体)の中に含まれる固形物や異物を捕捉するための装置です。 流体がストレーナを通過する際に、フィルターが異物を取り除き、クリーンな流体だけが下流に送られます。これにより、ポンプやバルブ、熱交換器などの重要な機器が異物による ...
ReadMore
配管
2022/7/31
【配管】フランジ規格FFとRFの違い、使い分けは?
バルブや配管を接続するフランジにはJIS10Kなどの後ろにFFやRFという種別が記載されています。 低圧ではFFとRFでどちらを使っても問題ない場面が多いので使い分けが良く分からないという方も多いのではないでしょうか? この記事では、フランジの座面形状を表すFFとRFの違いについて解説します。 FFとRFの違い FF FFはFlat Face(フラットフェイス)の略で上の図のようにガスケットの座面を全面に仕上げたものを言います。主にJIS10K、JIS20K、JPI150、JPI300などの低圧で使用され ...
ReadMore
配管
2022/7/31
【配管】バッファータンクの役割とは?設置するメリットは
給排水系統や空気系統では負荷変動を抑えるためにバッファータンクが良く用いられます。 この記事では排水系統などで良く利用されるバッファータンクについて解説します。 バッファータンクとは バッファータンクとは気体や液体を一時的に貯留させるためのタンクです。レシーバータンクとも呼ばれ、給排水系統や空気系統などに設置されます。 バッファータンクを設けることで、設備のイニシャルコスト低減や工場の安定性を向上させることが出来、大きければ大きいほど変動許容率が上がります。 バッファータンクの役割 バッファータンクの役割 ...
ReadMore
配管
2022/7/31
【配管】バケットストレーナーとは何か、メリットデメリットを解説
ポンプや制御弁など重要な機器を保護するためにはストレーナーは必須です。 この記事では大口径の配管に良く採用されているバケットストレーナーとは何か、また、メリットデメリットについて解説します。 バケットストレーナーとは バケットストレーナーはバケット状のメッシュにて流体内の異物を取り除くための機器です。小口径で良く利用されるY型ストレーナに比べると大口径で利用されることが多い機器です。 内部のバケットは上部のカバーを取り外すことで取り出すことができ、定期的に洗浄を行うことで目詰まりなどを防止します。上部のカ ...
ReadMore