ノイズがそのまま影響を与えるような繊細な電気機器を使用する場合には、ノイズフィルターが利用されることが多いです。
今回は、制御盤などでよく使われているノイズフィルターについての記事を書きたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1.ノイズフィルターとは?
ノイズフィルターとは、使用する電源や信号からノイズを除くための回路を指します。ノイズフィルターには実に様々な種類と挿入する場所があります。
種類では大きく、受動部品で構成するパッシブフィルタと、能動部品(電源を必要とする部品)で構成するアクティブフィルタがあります。
挿入する場所としては、ノイズの侵入を防ぎたい場所に入れるフィルタとノイズを周りにまき散らさないために挿入するフィルタがあります。
更に、ノイズにはノーマルモードノイズとコモンモードノイズという2種類のノイズが存在するため、モードによって最適な効果をもたらすノイズフィルターが存在します。
ここでは特に、交流や直流のラインに入れるパッシブフィルタとしてのノイズフィルタの説明をしたいと思います。
2.ノイズフィルターの原理
一般的にノイズは周波数成分を持っていますので、必要な周波数以上をカットするローパスフィルタを作成してノイズフィルターとしています。
一般的に用いられるのはコイルとコンデンサを使用したローパスフィルタで、除きたいノイズ周波数に対してインピーダンス(その周波数に対する抵抗値のこと)が大きくなるような遮断周波数になるよう設計します。
フィルタの段数を増やすほど不要なノイズを落とす効果が大きくなりますが、部品点数が増えて大型化する点に注意が必要です。
また、高周波ノイズを落とすためにはフェライトと呼ばれる素材を固めた部品を用いる場合があります。
これはノイズをフェライトによって熱に変換して消費させるというもので、落としたいノイズの周波数やレベルによってさまざまな種類と大きさがあります。
実装方法ですが、信号線をフェライトコアに巻きつける方法や、フェライトコアのドーナツ状の中に信号を通す方式などがあり、巻き付ける回数やコアの数量で落とせるノイズレベルを調整することが可能です。
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3.ノイズフィルターが必要な理由
私たちが使用している交流100Vは、さまざまな場所に電力を供給しながらコンセントまで届いているため、色々なノイズが混入している可能性があります。
そのノイズを処理せずに電子機器内で使用すると、必要な直流電圧値が瞬間的に違う電圧になる場合が起こります。
期待する電圧に基づいて動作設計されている機器からするとノイズによる電圧の変化は好ましくなく、最悪誤動作を引き起こす可能性もあります。
こういった不具合を避けるため、ノイズフィルタを使って欲しい交流や直流にする必要があります。これがノイズフィルターが必要な理由です。
特に気を付ける必要があるのがコモンモードノイズという、電力線と同じ位相でコモンにもノイズが乗っている場合です。
コモンモードノイズはそのままでは害を及ぼさないのですが、高い確率でノーマルモードに変換されます。
ノーマルモードに変換されたノイズは、先ほど説明した誤動作の原因になりますので注意が必要で、その対策としてコモンモードノイズ対策用のノイズフィルターを選択することが重要です。
特に機器に関するノイズについては、出力するノイズ量と、受けたときに耐えられるノイズ量について、複数種類の規格があり、各国ともいずれかの規格を採用しています。
その規格にパスしないとその国での機器の販売ができなくなるので、ノイズ対策は必須の作業で、そのためにノイズフィルターは必ず必要な回路となります。
電気信号を純粋な信号のまま、目的地に運ぶための回路と考えていただければよいと思います。
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4.ノイズフィルターの使用例
特にノイズにおいては、製品がある程度完成しないとどの程度のノイズを出すか、ノイズに対する耐性があるかわからないため、完成して測定後、ノイズ源やノイズの影響を受ける場所にノイズフィルタを挿入したりすることがあります。
ノイズフィルタは電気回路の中に配置されるため、一般の目に届くような場所にはなかなかありません。
よくある例としては不慮のノイズから機器を守るために、ACアダプタの1次側にノイズフィルタを挿入する場合があります。
フェライトコアを使用した例としては、みなさんの周囲にあるACアダプタの機器側のラインに、一部分太くなっている箇所がある製品がありますが、これがフェライトコアであり電源線の周りにリング状に設置されています。
また、ACアダプタに貼られているラベルには規格をパスしたノイズ規格名称が列挙されており、これによりアダプタ内部にノイズフィルターが実装されていると推測できます。
5.まとめ
省電力化への貢献として工場や一般家庭にあるさまざまな機器の電力変換回路がスイッチング化されていることを考えると、高周波ノイズがあちこちにあることは容易に推測できます。
機器を安全に使用するためにノイズ対策は必須であると言えるでしょう。
一口にノイズフィルタと言ってもさまざまな種類や挿入する場所、回路構成があります。
また、ノイズを規制する規格も複数あります。どんなモードのノイズの入出力を避けるのか、周波数の値はいくつか、どの程度減衰させればよいのかによって使用する部品が変わってきます。
是非、最適な部品を選択できるようにしましょう。