ポンプを締め切り運転すると、水の温度が上がってきたという経験はありませんか?
電動ポンプは電気によって液体に圧力を加えて輸送する機械ですが、与えた電力すべてが運動エネルギーに変換されるわけではなく、一部が水の温度エネルギーに変換されます。
今回は、ポンプと熱エネルギーの関係について書いてみたいと思います。
1. ポンプと熱の関係
では、ポンプを稼働させたときにどの程度の割合で運動エネルギー、熱エネルギーに変換されるのでしょうか?
これはポンプの条件によって変わりますがポンプ効率という指標で見ることができます。ポンプ効率は与えた電力がどの程度、運動エネルギーに変換されるかを表したもので、性能曲線を見ることで確認することができます。
性能曲線についてはこちらのサイトが詳しく書かれています。性能曲線では吐出量、揚程によってポンプの効率が決まります。
例えばポンプの効率が50%だとすると、50%が運動エネルギー、残り50%が別のエネルギーに変換されます。
別のエネルギーを細かく分類すると次のようになります。
- 配管内の液体の温度上昇
- ポンプの騒音、振動
- ポンプケーシングの温度上昇
- 軸受けの摩擦熱(冷却水の温度上昇)
- etc
実際には配管内の液体の温度上昇の割合が高いため、安全を考慮してすべて液体の温度上昇に利用されると考える場合が多いです。
2. ポンプと熱の計算
では実際に計算してみましょう。
2-1. 通常の運転時
ポンプの動力を5.5kW、吐出し量0.6m3/min、ポンプ効率50%の条件でポンプを運転したとします。
この時、運動エネルギーに変換されなかったエネルギーがすべて熱エネルギーに変換されると仮定すると、熱エネルギーとして利用されるものは
$$5.5×0.5=2.75[kW]$$
kWはkJ/sなので、1分間当たりに変換すると
$$2.75×60=165[kJ/min]$$
0.6m3の水が1℃上昇するのに必要なエネルギーは
$$0.6×1000×4.19=2514[kJ]$$
よって上昇する温度は
$$165÷2514=0.06[℃]$$
つまり、通常の運転では温度上昇は0.06℃だということが分かります。普段ほとんど気にならないのはこのためです。
2-2. 締め切り運転時
では締め切り運転を行うとどうなるでしょうか?
同じくポンプ効率を50%としてポンプの出口を締め切った状態で運転したとします。この時、仮にポンプの中の液量が10Lだと仮定します。
1分間当たりの熱量は先ほどと同じ165kJになります。10Lの水が1℃上昇するのに必要なエネルギーは
$$10×4.16=41.6[kJ]$$
よって締め切り運転の場合の温度上昇は
$$165÷41.6=3.97[℃/min]$$
1分間あたり約4℃上昇するということが分かります。締め切り運転を長時間行うと内部の液温が上昇していき、やがて沸点に達してキャビテーションが発生します。
これがポンプを締め切り運転すると故障するというメカニズムですね。
3. まとめ
- ポンプの電力は運動エネルギーと熱エネルギーに変換される
- 熱エネルギーの割合はポンプ効率で分かる
- 長時間締め切り運転をするとキャビテーションが発生する
ポンプを運転すると液体の温度が上昇するというのは不思議な感覚ですが、エネルギー保存則を考えるとわかりやすいですね。
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