制御弁

【制御弁】放蒸弁とは何か、役割、作動する状況とは

プラントを安定的に稼働させるために設置される制御弁の1つとして放蒸弁があります。

この記事では放蒸弁とは何か、その役割や作動する状況について解説します。

放蒸弁とは

放蒸弁とは蒸気を放出することで一次側配管の蒸気圧力を下げるために設置される制御弁です。

放蒸弁の一次側に圧力センサーを設置し、設定圧力以上になると放蒸弁が開度を調整しながら放出させる蒸気量を制御し、圧力を一定に保ちます。

放出される蒸気の量によっては流速が100m/s程度と速くなり、騒音が発生するので放蒸弁二次側には騒音低減用のサイレンサが設置されるのが一般的です。

一般的な火力発電所のフローで表すと放蒸弁は次の位置に設置されることが多いです。

上記の図では主蒸気の圧力を一定に保つために設置されていますが、工場などでプロセス用として使用する場合はプロセス蒸気用の放蒸弁などが設置されることもあります。

【制御弁】制御弁が動く仕組みとは?

続きを見る

放蒸弁の役割

放蒸弁の役割は、安全弁を作動させないように蒸気側の圧力を制御することです。

通常、内部流体の圧力が異常に上昇した場合は、安全弁が噴き出すことで配管の設計圧力を担保します。ただ、安全弁は何度も作動するとシール性が低下し、流体を漏らす可能性が上がるため、放蒸弁を利用することにより安全弁の作動回数を低減させます。

一般的な設定圧力の並びとしては安全弁の設定圧力を最も高くし、続いて放蒸弁の設定圧力、ボイラーの設定圧力という順番になります。

放蒸弁が作動する時

主に主蒸気ラインに放蒸弁を設置した場合という観点で、放蒸弁が作動するのは次のような場合です。

負荷変動が大きい

蒸気を使用する側の負荷変動が大きい場合、ボイラーの燃焼制御が追い付かず放蒸弁が作動することがあります。放蒸弁が作動することにより負荷側の変動が大きくなっても主蒸気の圧力を一定範囲内に抑えることが出来ます。

タービンのトリップが発生した

負荷変動と意味としては同じですが、系統の事故などにより発電機のトリップが発生し、タービンのガバナが急閉した場合などにも放蒸弁が開放されることになります。

このような場合、放蒸弁の瞬時的な開動作が必要になるため、DCSなどの制御側でそのような動きとなるようソフトに組み込む場合もあります。

【自動制御】DCSとは何か、メリット・デメリットについて解説します

続きを見る

ボイラーの制御範囲を下回る

大型のボイラーで燃料がガスや重油など調整範囲が広い燃料でない場合は、燃料の応答性が悪くボイラーの制御可能範囲が決められている場合があります。

このような場合、制御可能範囲を下回る場合は一時的に放蒸弁を作動させながら運転させることになります。当然、エネルギーとしては無駄になるため、あまり好ましい運転条件とは言えません。

まとめ

  • 放蒸弁は蒸気を放出することで一次側配管の蒸気圧力を下げるために設置される制御弁。
  • 放蒸弁は安全弁の作動頻度を減らし、プラントの運転を安定化することが出来る。
  • 放蒸弁は負荷側の変動やボイラーの制御範囲外運転などにより作動する。

燃料を使用して発生させた蒸気を放出させるのは無駄な気もしますが、放蒸弁はプラントの安定稼働には必須な制御弁の1つと言えます。

制御弁

2023/12/31

【制御弁】タービンバイパス弁とは何か、役割、作動する状況とは

プラントの安定稼働を実現させる弁の1つにタービンバイパス弁があります。 この記事ではタービンバイパス弁とは何か、その役割や作動する状況について解説します。 タービンバイパス弁とは タービンバイパス弁とは主蒸気から蒸気タービンをバイパスさせて直接復水器へ接続するラインに設置する制御弁のことを言います。タービンバイパス弁から主蒸気をバイパスさせ、復水器へ送ることを「蒸気を復水器へダンプする」といいます。 一般的にはタービンが何らかの事情によりトリップした場合に開弁させ、主蒸気配管の急激な圧力変動を抑えることを ...

ReadMore

制御弁

2023/12/31

【制御弁】放蒸弁とは何か、役割、作動する状況とは

プラントを安定的に稼働させるために設置される制御弁の1つとして放蒸弁があります。 この記事では放蒸弁とは何か、その役割や作動する状況について解説します。 放蒸弁とは 放蒸弁とは蒸気を放出することで一次側配管の蒸気圧力を下げるために設置される制御弁です。 放蒸弁の一次側に圧力センサーを設置し、設定圧力以上になると放蒸弁が開度を調整しながら放出させる蒸気量を制御し、圧力を一定に保ちます。 放出される蒸気の量によっては流速が100m/s程度と速くなり、騒音が発生するので放蒸弁二次側には騒音低減用のサイレンサが設 ...

ReadMore

制御弁

2021/8/29

【制御弁】並列に設置する理由は?

大型の生産ラインなどを見ていると、制御弁が並列に数台設置されているのを見たことがないでしょうか? 制御弁は流量を自動で制御してくれるので、大きいものを1台つけておけば問題なさそうですが、あえて並列設置をしているのには理由があります。 今回は制御弁を並列設置する理由について解説します。こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 制御弁を並列設置する目的 制御弁を並列に設置するのは次のような理由からです。 制御性を上げる 立ち上げ速度を緩やかにする 制御弁を並列に設置する ...

ReadMore

制御弁

2021/8/31

【制御弁】Cv値の選定方法は?基準をまとめてみた

現場で制御弁の選定を行うとき、必ず出てくるCv値。詳しい原理はよく分からなくても、仕事で使っていると慣れてくるものだと思います。ですが、Cv値の選び方はいつも迷ってしまう方が多いのではないでしょうか? 今回はCv値の選定基準と、選定間違いをしてしまった際に生じる問題をまとめました。 Cv値とは バルブは配管サイズによって内径が当然変化します。また、例えば玉型弁と仕切弁のように、バルブの内部構造は種類によって異なります。さらに世界中に多種多様なメーカーがあるわけですから何か流れる量に基準が欲しい、というわけ ...

ReadMore

制御弁

2021/9/2

【制御弁】イコールパーセント特性とリニア特性の使い分けは?

制御弁には、バルブの固有特性としてイコールパーセント特性とリニア特性、クイックオープン特性があります。 一般的には、イコールパーセント特性が使用されることが多いですが、流量特性のグラフを見るとリニアの方が分かりやすくていいように見えます。では、なぜイコールパーセント特性が使用されるのでしょうか? 今回は、イコールパーセント特性とリニア特性の違いや使い分けについて解説したいと思います。 イコールパーセント特性とリニア特性とは? 制御弁では、開度が100%になったときに流せる流量をCv値という値で表します。 ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

エコおじい

プラント業界一筋のエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。保有資格はエネルギー管理士と電験三種です。

効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-制御弁

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む