発電所や電力システムにおいて、発電機の系統と母線を接続する際には同期投入が行われます。
この記事では、同期投入とはなにか、同期投入を行うために必要な条件について解説します。
同期投入とは
同期投入(シンクロナイゼーション)は、発電機が電力網に接続される際に、発電機の電圧、周波数、および位相角を電力網と一致させるプロセスです。
このプロセスにより、発電機が電力網にスムーズに連携し、電力の安定供給が確保されます。
同期投入が適切に行われない場合、発電機と電力網の間で電圧や周波数の不整合が生じ、重大な損傷や運用上の問題が発生する可能性があります。そのため、同期投入は非常に重要なプロセスとされています。
同期投入のプロセス
同期投入のプロセスは以下のステップで構成されています。
- 発電機の起動
- 電圧の調整
- 周波数の調整
- 位相角の調整
- 同期投入
蒸気タービン発電機を用いて同期投入を行う場合を想定すると次のようになります。
発電機の起動
まず、発電機を起動させ、蒸気タービンに高温高圧の蒸気を流入させます。
蒸気の駆動力により蒸気タービンが回転し、それに接続された発電機も回転を始めます。
電圧の調整
自動電圧調整器(AVR)により発電機の電圧を調整します。
AVRは発電機からのフィードバックを監視し、出力電圧が設定値を維持するよう界磁電流を制御します。電圧が設定値よりも高いまたは低い場合、AVRは励磁機に送る電流を調整して、磁場の強さを変更し、発電機の出力電圧を制御します。
周波数の調整
蒸気タービンへの蒸気流量の制御によって回転速度の調整を行い、周波数を系統と同様になるように制御します。
西日本であれば60Hz、東日本であれば50Hzとなりますが、減速比や発電機の極数によって目標となる回転数は異なります。
位相角の調整
周波数調整後、位相角の調整を行います。
発電機の位相角は、その回転速度に影響を受けます。蒸気タービンを駆動する蒸気量の調整により、発電機のシャフトの回転速度が変わります。速度が速くなると位相角が進み、遅くなると遅れます。この速度の調整によって、発電機の位相角を調整します。
同期投入
全ての調整が完了したら、同期検定器により発電機を電力系統に同期投入します。
同期検定器は、発電機の電圧と電力網の電圧を比較し、その位相角の差を指針の動きで示します。指針が特定の位置(通常は上部、"12時"の位置)に達した時、両者の位相が一致していることを意味し、このタイミングで発電機を電力網に接続すると、同期投入がスムーズに行われます。
同期投入のプロセスは一般的には自動で行われますが、目視によりタイミングを合わせて手動で投入を行う場合もあります。
同期投入に必要な条件
同期投入を成功させるためには、以下の条件が満たされている必要があります。
- 電圧の一致
- 周波数の一致
- 位相角の一致
これらが不一致の場合は次のような不具合が発生します。
電圧が不一致の場合
電圧が一致していないと、発電機と電力網間で電圧差が発生し、大きな電流が流れることになります。
この電流は、発電機や電力網の機器に過負荷をかけ、損傷や故障の原因となることがあります。
周波数が不一致の場合
周波数が異なる場合、発電機が電力網に同期することができず、結果として発電機が電力網から押し出されるか、引き込まれるかのいずれかの状態になります。これは発電機や他の接続機器に機械的なストレスを与え、振動や損傷を引き起こす可能性があります。
位相角が不一致の場合
位相角が合っていない場合、電力の流れが不均衡になり、発電機や電力網に大きな力がかかります。これにより、電力システム全体の効率が低下し、最悪の場合、発電機が電力網から物理的に「脱落」してしまうことがあります。
これらの不一致が存在すると、電力品質が低下し、電圧降下、周波数の変動など、電力システム全体の性能に悪影響を及ぼします。また、保護装置が誤動作を起こすこともあり、それが電力供給の中断や安全上の問題を引き起こす原因となることもあります。
まとめ
- 同期投入は発電機の電圧、周波数、位相角を電力系統と一致させること
- 同期投入には同期検定器が用いられる
- 電圧、周波数、位相角が不一致の場合、機械の損傷や系統の遮断につながる
同期投入は、発電機と電力網の間で電圧、周波数、位相角を一致させるプロセスであり、電力システムの安定性と効率的な運用に不可欠です。
適切な同期投入により、システムの安定性、設備の保護、効率的な運用、電力品質の向上を目指しましょう。