電動機などを扱っていると「サーマルがトリップして動かなくなった」なんて言葉を聞くことはありませんか?
電気についてある程度慣れている人にとっては当たり前のように扱う言葉ですが、始めて聞いた人にとっては何のことを言っているのかわからないということもあるかと思います。
この記事では、サーマルリレーとは何か、トリップが発生した場合の対処法について解説します。
サーマルリレーとは
サーマルリレーは、電動機やその他の電気機器を過負荷から保護するために使用される機器です。過電流が流れた際に回路を遮断し、機器の損傷を防ぐ役割を果たします。
サーマルリレーの基本的な構造は、ヒーターと膨張率の違う金属を貼り合わせたバイメタルストリップで構成されています。
サーマルリレーの役割は次のようになります。
- 回路を通る電流によって熱を発生させる。
- 温度の上昇によってバイメタルが湾曲する。
- 湾曲によって接点が開いて回路を遮断する。
- 過電流が電動機へ流れるのを防止する。
サーマルリレーは主に三相誘導電動機に使用され、モーターの負荷が増加したり、異常が発生したりした際に回路を自動的に遮断し、電動機が過熱するのを防ぎます。また、サーマルリレーには手動でリセット可能なリセットボタンが付いており、過負荷が解消された後に回路を再接続することができます。
サーマルリレーとよく似た機器でショックリレーがありますが、回路を守るのか、機械を守るのかによって使い分けがされています。
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サーマルリレーのトリップとは
サーマルがトリップするというのは、機器を保護するためのサーマルリレーに過電流が流れ、強制的に回路が遮断されることを言います。過電流の原因としては、漏電、短絡、ゴミ噛み、過負荷などが挙げられます。
サーマル(Thermal)は「熱」という意味で、トリップ(Trip)は「外れる、切れる」という意味を表します。つまり「サーマルがトリップする」とは言い換えると「サーマルリレーの接続が切れる」という事を表します。
三相誘導電動機の一般的な回路を例にすると、通常は電源から配線用遮断器(MCCB)を通ってサーマルリレーにつながります。間に入っている電磁リレー(MC)は遠隔により安全に運転・停止が行えるようになっています。
サーマルリレーがトリップすると、モーターへの回路が途切れるため運転ボタンを押しても電動機が動かなくなります。サーマルリレーについているリセットスイッチを押すと復帰させることができますが、過電流の原因が解消していない場合は、再びトリップするので注意が必要です。
アニメーションを作成したのでこちらをご覧ください。
ヒューズやサーキットプレテクタも同様の目的で使用されます。
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サーマルリレーがトリップした場合の対処法
サーマルリレーがトリップした場合、電動機やその他の電気機器が過負荷や異常状態にあります。
サーマルリレーがトリップした場合は次のような手順で対処します。
安全の確保
サーマルリレーがトリップした場合、最も重要なのは現場の安全を確保することです。
トリップの原因として過電流や機器の異常が考えられますが、まず最初に、作業員や周囲の人々の安全を確認し、危険がない状態を確保します。電気機器の電源を切る、作業区域を安全に囲い込むなどの対処を行います。
安全が確認された後、トリップの原因を特定し、必要な修理や点検を行うことで、再発を防止することが重要です。
原因の特定
次にサーマルリレーがトリップした原因を特定します。サーマルリレーのトリップが発生する要因としては主に次のようなものがあります。
- 過負荷:電動機が過剰な負荷で動作していないか。
- 短絡:配線や接続部に短絡が発生していないか。
- 漏電:電動機や回路が漏電していないか。
- 異物混入:ゴミや異物が回路や電動機に挟まっていないか。
まず、電動機が過剰な負荷で動作していないか確認します。過負荷は機械的な問題や設定ミスが原因で発生します。
次に、配線や接続部に短絡がないか目視検査やテスターを使用して調査し、異常な電流の流れを特定します。また、電動機や回路が漏電していないか絶縁抵抗計などでチェックします。
最後に、回路や電動機にゴミや異物が挟まっていないか確認します。異物が原因で過電流が発生することがあります。
修理・調整
原因が特定されたら、適切な修理や調整を行います。
- 過負荷の解消:機械的な問題を修理し、負荷を適切な範囲に調整。
- 短絡の修理:短絡が発生している場合は、配線や接続部を修理または交換。
- 漏電の修理:絶縁不良が原因の場合、絶縁を強化するための修理。
- 異物の除去:異物が原因であれば、異物を取り除き清掃。
これらは複合的に発生する場合もあるので、複数の観点から調査やメンテナンスを行うことが重要です。
サーマルリレーのリセット
原因が解消されたら、サーマルリレーをリセットします。多くのサーマルリレーにはリセットボタンが付いており、これを押すことで回路が再接続されます。
リセット後、機器が正常に動作するか確認します。
再発防止策の検討
再発を防ぐためには、対策防止策の検討が必要です。例えば機器や回路の異常を早期に発見するための定期点検や、機器の負荷管理による、過負荷状態の防止などがあげられます。
サーマルリレーの設定値の決め方
サーマルリレーの整定電流は、電動機やその他の機器を過負荷から適切に保護するために重要です。
整定電流の決め方には、いくつかの基本的な手順があります。
電動機の定格電流を確認する
まず、保護する電動機の定格電流を確認します。定格電流値は電動機の銘板や取扱説明書、仕様書などに記載されています。定格電流は、電動機が通常の運転条件下で運転可能な最大の電流を示しています。
環境条件を考慮する
電動機が設置されている環境条件を考慮します。例えば、高温多湿の環境では、電動機の冷却が十分でない場合があり、過負荷に対する感度を高める必要があります。このような場合は、整定電流を定格電流の90%程度に設定することが推奨されます。
過負荷の種類を考慮する
電動機がどのような過負荷にさらされる可能性があるかを考慮します。例えば、電動機が頻繁に起動・停止を繰り返す場合、瞬間的な過負荷が発生することがあります。
このような場合には、瞬間的な過負荷に耐えられるよう、整定電流を少し高めに設定することがあります。
サーマルリレーの仕様を確認する
サーマルリレー自体の仕様を確認します。
多くのサーマルリレーは、調整範囲が設定されています。この範囲内で、整定電流を調整する必要があります。サーマルリレーの取扱説明書に従い、適切な設定を行います。
実際の運転条件での試運転
整定電流を設定した後、実際の運転条件で試運転を行います。この際、サーマルリレーが適切に動作するかを確認します。
過負荷が発生した場合にサーマルリレーが適切にトリップするか、また正常運転中に不必要にトリップしないかを確認します。
定期的な見直し
整定電流の設定は、一度決めたら終わりではありません。定期的に見直しを行い、運転条件や環境条件が変化した場合には、再設定を行う必要があります。
定期的な点検と調整を行うことで、最適な保護を維持することができます。
これらの手順に従って、サーマルリレーの整定電流を適切に設定することで、電動機や機器の過負荷からの保護が確実に行われ、安全な運転を維持することができます。
まとめ
- サーマルがトリップするとは、過電流により回路が遮断されること。
- トリップすると電動機が動かなくなる。
- 復帰させるためには過電流の原因を特定する必要がある。
電気を扱う現場では聞きなれない言葉も多いですが一つずつ意味を理解していけば単純なものが多いです。
当サイトと提携をしている『電気工事士デポ』では、現役の電気工事士が実体験に基づいて記事を執筆しています。基本的な漏電やコンセントのトラッキングについての記事もありますので、ぜひ読んでください。