工場で使う飲料水や、製品の原料溶液、処理する工場排水など、産業分野において水質を正しく測定することは重要です。
指標の1つでもある濁度は、「単位が曖昧で、よくわからない」という方も多いのではないでしょうか。今回は、濁度の単位と測定原理の違いについて、解説していきたいと思います。
濁度とは
濁度とは字の通り「水の濁り」を表します。しかし、例えば導電率(S/m)のような明確な単位はなく、単に「度」と言われます。これは、濁度が基準の溶液に対してどの程度、試料が濁っているかを示す単位であるからです。
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基準となる標準液には、カオリンという鉱物の一種や、ホルマジンというポリマー混合溶液が使用されます。使用した標準液に応じて、度(カリオン)や度(ホルマジン)という単位で記載されます。
実は前者のカリオン濁度には単位があり、mg/Lが使われることもありますが、これは同量のカリオンが含まれる水と同程度の濁り具合であることを意味します。後者は、FNU(ホルマジン比濁計単位)という単位が使われることもあります。JISの規格ではホルマジンが採用されていますが、日本水道協会の試験ではカオリンが採用されています。
ここまでの説明で濁度は、pHやDO、導電率などの他の水質指標とは性質が異なる指標であることがお分かりいただけたかと思います。
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濁度測定の原理
濁度測定の原理には、JISの工業用水試験法においては4つの測定方法が記載されています。
- 視覚濁度(目で見て判断する方法)
- 透過光濁度(透過する光を測定する方法)
- 散乱光濁度(散乱する光の強度を測定する方法)
- 積分球濁度(散乱光と透過光の比から求める方法)
今回は、透過光法と散乱光法について解説したいと思います。
濁度測定①透過光法
水に対して光を当てて、どれだけ光が減衰するかを受光素子で測定します。懸濁されている粒子のサイズが一定で、色が白っぽい場合には、正しく数値が表示されますが、様々な粒子が含まれている場合には不向きなタイプです。後ほど説明で触れますが、今では透過光法単体での測定原理を採用している測定器は多くありません。
濁度測定②散乱光法
水に対して光を当てて、反射(散乱)した光を受光素子で測定します。濁った水に光を当てると、一部は透過し、一部は散乱します。そのため濁度が高いと、受光素子にまで到達できなくなり、測定できなくなります。こちらの方式も、粒子の色によって、光の反射の強度が変化するとされます。
また、この2つを組み合わせた透過散乱光法というもあります。これは透過光と散乱光による測定の比を取ることで、溶液の色や粒子サイズの影響を小さくした方式です。
なお、異なる測定原理や、異なる標準液を用いて測定した濁度は、直接比較することはできません。
濁度測定原理はどれがいいの?
上記で解説したように測定原理によって向き不向きがあり、何にでも同じ濁度計が使えると言うわけではありません。
例えば、透過光法は中程度から高濃度な濁度の溶液の測定に適しています。ただ、濁度が低すぎたり、色素・気泡などがあったりすると、測定に影響を受けてしまいます。
一方で、濁度が低い溶液に対しては、散乱光法を用いた測定器が有効です。試料の色の影響を補正することができれば、色素の影響も受けません。逆に濁度が高すぎると、濁度と散乱光の比例関係が崩れ、計測ができなくなるため、測定レンジには注意が必要です。
このように、原理によって得意不得意がありますので、理解しておいた方が良いでしょう。その上で、これらの良い面を採用した透過散乱光法は、低い濁度から高い濁度まで幅広く測定でき、着色の影響を受けにくいとされます。
また、溶液の表面に光を当てて、反射する光を測定する方式である、表面散乱光方式ではセンサーが直接溶液に触れないため、汚れによる影響を受けにくいです。
まとめ
- 透過光方式、散乱光法方式が基本原理である。
- 計測基準が異なる濁度は直接比較できない。
- より正確なのは透過散乱光方式。
ご覧いただいたように濁度は、いくつかの単位が存在し、また測定対象の溶液の性質によって適した測定方法が異なりました。計測器選定の際には、目的に応じて、現場に適した濁度計を導入しましょう。